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バレエの世界①

2017-09-06 18:10:58 | お話
バレエの世界①


(吉田さんはイギリスの伝統あるバレエ団で22年間プリンスパル(主役)を務め、現在は日本を拠点に活躍されていますね)

吉田、9歳でバレーを始めて42年、こんなに長く踊れると思っていなかったですし、

踊りたいという気持ちがあっても体力的に難しくなっててきますので、

50代をむかえた今も、こうして踊れていることは、本当にありがたいなと思います。

バレエって皆さんが想像している以上にハードで、

だいたい30代半ばで辞める方が多いんですね。

長く続けられても普通は40歳くらい。

(そういう過酷な世界で、42年間現役を貫くことができている理由は何だと感じていますか)

吉田、やっぱり好きだからここまで続けてこられたんでしょうね。

バレエが好きだという情熱が原動力になっている、そこに尽きるかもしれません。

1番最初にバレエに触れたときの気持ちって、いまだに変わらず持っていて、

ワクワク感というか、いつもフレッシュな気持ちでバレエに向き合うことができています。

だから、一つひとつ振り返ると、確かに長い道のりを歩んできたなと思う部分もあるんですけれども、

気づいたら42年経っていたという感覚のほうが強いですね。


(バレエの道一筋に打ち込まれて来たからこそ、そういう心境に撮れるのでしょうね)

吉田、もちろん年齢を重ねてできなくなるものも増えてきて、

例えば2時間くらいの全幕物を踊ることはもう難しい。

けれども、先週末の公演で踊った作品は、

周りの人たちから体力的に絶対無理だと言われていたのにも関わらず、

踊り切ることができたので、

すごく自信になりましたし、達成感を味わうことができました。

その道のりは大変なんですけど、

鍛えた分だけ報われるのだなと実感しています。


(普段どのような稽古を積まれているのですか)

吉田、やはり力を入れているのは体の維持ですね。

42年続けてきた今でも、ちょっと油断すると、すぐ体が忘れてしまったり、なまってしまうので、

内容は多少違いますけれども、

子供の頃に叩き込まれたお稽古を日々繰り返すことが、とても大切なんです。

ですから、午前中は必ず基礎レッスンをしています。

ストレッチに始まって、鏡の前にあるバーにつかまりながらポジション(型)をとって、腕や脚の位置を確認したり、

回転やジャンプなどのステップを練習する。

バレエの華やかなイメージとは裏腹に、そういう地道な基礎訓練を1時間半位くらいします。

それが終わると、公演に向けてのリハーサルをしたり、

自分の弱いところの筋力強化トレーニングや治療をします。

もちろん怪我をしないためにはお休みも必要で、

私はイギリス時代から日曜日を休養に充ててきました。

1日でも休んだら、どんどん戻ってしまいますから、そのぶん月曜日が大変なことは覚悟の上で、

週に1度のお休み以外は、みっちり欠かさずにやっています。

(基礎訓練を決しておろそかにせず、42年間コツコツと続けられていることに感動を禁じ得ません)


吉田、よく「飽きないの?」って聞かれるんですけれども、

飽きるところじゃないんですね。

日々のお稽古というのはもちろん訓練やウォームアップの意味合いもあります。

でも、私にとっては自分の体と向き合って集中力を高めたり、

気持ちを落ちつけたりする場でもあるんです。

中にはお稽古を端折って公演のリハーサルに比重を置く人もいますし、

若い時はそれで通用するんですけれども、

いずれ体がもたなくなります。

だから、地道なことを飽きずにコツコツできる人が、残っていきますね。

私みたいに、しつこい性格の人しか続けられないのかもしれません(笑)。


(つづく)

(「致知」10月号 バレリーナ吉田都さんより)