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体に語りかける④

2018-02-21 16:39:46 | 自分でできる健康維持
体に語りかける④


私たちは抑圧された感情に気づいたら、

"新しい自分に変わるために行動を起こさなければならない"

と思いがちです。

たとえば、いつも否定的な意見をいう母親に対してイヤだと思いながらもいいなりになっていた自分に気づいたら、

「お母さんのいい方は、否定されているように感じてイヤな気分になるの」

と言ってみるとか。

もちろん、その母親にいったところで母親からどんな反応が返ってこようと、

気にならない自分であればいいのですが、

たいていの場合は、母親からの反撃を恐れてなかなか行動にまで移せません。

すると、

「行動に移せない自分はやっぱりダメだ」

と、また自己否定することになってしまいます。

これでは本末転倒です。

私は、まずは抑圧された感情に気づくだけでいいと思っています。

気づいた時点で抑圧されていた感情に光が当たり、そういう思いも自分の一部だと、引き受けるようになるからです。

すると、今まで滞っていた部分にも、しっかりと生命エネルギーが通るようになり、

その結果、今まで気になっていたことが気にならなくなったり、

こだわりが薄れてきて、体の痛みもなくなっていくのです。

先日クリニックにいらした50代の女性は、そのことを教えてくれました。

この女性は、約2年前に、長きにわかって介護してきた母親を肝臓がんで亡くしました。

母親の死後、腰痛と左脚の痛みが出現し、
最近になって症状が悪化してきたため来院したのです。

初診のとき、左脚の痛みがひどく、歩行も困難なほどでした。

そこで腰椎のX線写真とMRIを撮ると、

確かに脊柱間が狭くなってしまう脊柱間狭窄症の所見が見られます。

私は、この女性に、脚の痛みは、第一のチャクラが不安定になっていて自分の存在が根づく「グラウンディング」ができていないこと、

何かに対する恐れのあらわれであることなどを伝えました。

女性は自分の中にある恐れを理解しようと、真剣に耳をかたむけて聞いていました。

その時点では、恐れが何か、まだ答えは出なかったのですが、

脚の痛みが自分の中にある恐れから起こっているということに気づいただけで、

診察が終わったあとは歩いて帰ることができたのです。

その後、リハビリテーションで何度か通院されました。

そのたびに、グラウンディングや呼吸法を指導し、

本当の自分を理解していくことに意識を深くもちはじめました。

だいぶ痛みがひいたこの女性は、ある診察のときに、自分の恐れを語ってくれました。

それは、母親の死を目の当りにして、

自分も病気になったらどうしよう、
母親が亡きあと、ちゃんと生きていけるのかなど、

生きることへの不安があったといいます。

実際、その恐れにとらわれていた自分に気づいたら、だんだん前向きな気持ちになってきたそうです。


ただ、私にはまだ何か心に抱えていることがあるように思えてしかたありませんでした。

そこで、

「本当はまだ何かあるのではないですか?」

と聞くと、

すごくストレスになっていることがあるといいます。

それはなにかと聞くと、遺産分配で実のお姉さんともめているというのです。

「姉はお金にすごく意地汚いです。

母は私がずっと介護してきていたこともあり、遺言に、姉よりも私に多く遺産を配分するように書いてくるていました。

でも、姉は納得がいかないといって、弁護士を立てて異議を申し立ててきたんです」

そんな胸の内を少しずつ話しはじめました。

私は、この女性に感じるものがあって、少し意地悪ないい方をしました。

「もし、自分がお金に意地汚くないと思っているのなら、

お母さんの遺言は無視して、お姉さんと平等にしたらどうですか?

もしくは、遺産を寄付してもいいのではないですか?」

すると急に表情を険しくさせて、

「私がずっと介護してきたのですから、多くをもらって当たり前です。

母の遺産は渡したくありません!」

といったのです。

これは、この女性の本心だったのです。

人は隠していた本心を突かれると怒り出すことがあります。

実は、この怒りの感情を出すということが、

健康になるためには欠かせません。

長年、心の中に押し込めてきた怒りという感情に視線を向けてあげる、

感情を感じ取ってあげることで、

自分を客観視することができるようになるからです。

もっといえば、

本当の気持ちである怒りを無視しつづけてきたために、

エネルギーの流れが滞り、病気や体の痛みを生んでしまうのです。

この女性の場合、お姉さんに見ていた意地汚さは、

自分自身が見ようとしなかった本当の自分の姿ということです。

本当の自分を知りたくない、

知られたくない、見抜かれたくない、

そういう恐れがエネルギーの流れを滞らせ、体に痛みとしてあらわれていたのです。

この女性は、私の説明に納得いかない顔して帰ってきました。

ところが、2週間後に再診に来られたときのことです。

「先生、見て! まったく痛みがなくなっちゃった!」

といって、ラインダンスをするように足を高く上げながら診察室に入ってきたのです。

「前回、先生にいわれたと、正直腹が立っていたんですが、

しばらくして、姉の言動の中に自分にも同じ部分がある、って気づいたんです。

今までの私は、お金に意地汚いことは醜いもの、悪いものと自分で判断して、真実から目を背けていました。

そこを突かれると、怒りの感情で逃げようとしていましたが、

本当の自分の思いに気づかされて、ようやく先生のいうことが理解できたんです。

そしたら、腰痛も右足の痛みもまったくなくなっていました!

本当に体ってすごいんですね!」

不思議なことに思われるかもしれませんが、

心の中にためた感情を吐き出して、エネルギーの滞りを流すことは、

根本から病気を解決する策です。

診察のなかの会話では、涙される方もたくさんいらっしゃいます。

やはり泣くからには、その人なりの心のしこりがあるのだと思います。

泣いていかれる方は例外なく、心の重荷や気になっていたことを降ろすことで、

かたまっていた生命エネルギーがゆるみ、何かが動き出しています。

入室前には緊張していた表情も、泣いたあとはリラックスして、くつろいだ温かい笑顔になられたりします。

このように、人間は感情を使って、心に変化を起こすことができます。

感情はエネルギーそのものだからです。

感情を押し込めるということは、
変化を拒んでいることと同じなのです。

感情を知ることを恐れる必要はありません。

それどころか、抑圧された感情に意識の光を当てるだけで、体は自然治癒力を発揮していくのです。

私は、この女性が、とことん本当の自分と向き合った勇気に拍手を送りたいと思います。


(「体に語りかけると病気は治る」 長田夏哉さんより)