先日の勉強会の内容をアップします。健診などをやっていると、ご本人は特に症状もないのですが、一連の診察のなかで、心雑音(収縮期雑音)を聴取することがあります。さて、どうしようという感じになります。高齢者などでは機能性の雑音の方も多いですし、全例に心エコーなどを行うのもコストエフェクティブではないでしょう。という疑問から橋川先生が勉強会をやってくれました。
<症状のない収縮期雑音について>
★AS(大動脈弁狭窄)は徴候が出現したらMortalityが急激に上昇する。(徴候出現後の数か月で3%、3年で50%up) しかし、珍しい病気ではなく、無徴候性では身体所見だけで診断付きにくいところが難点。⇒ASをいかにひっかけるかが重要と言われている。
重度ASの特徴
Ⅱ音の消失・減弱:感度44~90%、特異度63~98%、陽性尤度比3.1、陰性尤度比0.4
収縮後期のピーク:感度83~90%、特異度72~88%、陽性尤度比4.4、陰性尤度比0.2
頚部への放散雑音:感度90~98%、特異度11~36%、陽性尤度比NS、陰性尤度比0.1
QJMed 2000;93:685-688 The pacient with a systoric murmur:Severe sortic stenosis may be missed during cardiovascular examination
★収縮期雑音は小児80%、成人52%、高齢者29-60%で認める。そのうち、 44-100%で機能性心雑音である。(JAMA.1997;227(7):564-71)
★50歳未満でLevineⅡ以下の収縮期雑音であれば、98%は機能性雑音である。LevineⅢ以上で弁膜症有病率OR8.3(CI 3.5-19.7)
(Am J Emerg Med.2004 Mar,22(2);71-5)
★収縮期雑音(+)中年者(40-59歳)を35年間フォロー。(n=2014) 76.5%心雑音なし
~ AVR術、心臓死のリスクが健常者と比較し上がるか~
Levine Ⅰ/Ⅱ(21.9% )→AVR4.7倍、心臓死増加-
Levine Ⅲ/Ⅳ(1.6%)→AVR89.3倍、心臓死1.5倍
Levine Ⅴ/Ⅵ (0%) J Intern Med 2012 Jun;271(6):581-8.
★心エコーの実施タイミング
<不必要>
・無症状の駆出性収縮期雑音のみ
・LevineⅡ度以下の雑音
・柔らかく、短い駆出性雑音、Ⅱ音聴取可能
<必要>
・拡張期雑音
・LevineⅢ度以上
・他身体所見の伴う収縮期心雑音
→兆候出現前に弁膜症の診断できるかもしれない。
Up To Date :Auscultation of cardiac murmurs QJMed 2000;93:685-688 The pacient with a systoric murmur
★まとめ
症状のない収縮期雑音を聴取した場合、
・LevineⅢ度以上、他身体所見あれば心エコー
・Ⅱ音が聴取できるか、短い駆出性雑音か、頚部の放散雑音、拡張期雑音もあるかなども参考に
勉強会でも話題になりましたが、LevineⅡ度とⅢ度の差を見分けるのが実際には自信ないところではあります。しかし、心雑音に関して知識が整理されました。普段から上記の内容を意識して収縮期心雑音を聴取していってみようと感じました。
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