今回は、誤嚥性肺炎に対する抗菌薬治療について調べてみました。2019年のATS/IDSAガイドラインで嫌気性菌のカバーがルーチンでは必要ないとの記載があり、それ以後セフトリアキソンを選択することが個人的には増えました。セフトリアキソンは腎機能が悪くても使いやすく、在宅で加療するにも1日1回でよいために使いやすいです。しかし、セフトリアキソンで治療した後改善が今一つでスルバシリンに変更する場合もあったりします。当然、誤嚥性肺炎の治療は抗菌薬だけではなく、それ以外の非薬物的アプローチが重要なのは前提ですが、実際のところ抗菌薬選択という意味でどうなのかなと思い、今回調べてみました。
<誤嚥性肺炎の治療は、スルバシリンでなくてセフトリアキソンで本当にいいの?>
- ATS/IDSA市中肺炎ガイドライン(2019)
入院患者では誤嚥性肺炎を疑った場合嫌気性菌のカバーを加えるべきか?→肺膿瘍や膿胸でない限りルーチンに嫌気性菌カバーを加えることを推奨しない (条件つき推奨、低いエビデンス)
- Antibacterial treatment of aspiration pneumonia in older people: a systematic review(Clin Interv Aging 2018)
★微生物学→8つの研究
最もコモンなグラム陰性菌は、E.coli , K.pneumonia , P.aeruginosa
最もコモンなグラム陽性菌は、S.aureus , S.pneumonia
多くの研究で菌は混合 嫌気性菌の頻度は少ない
★抗菌薬治療→8つの研究
効果が優れているエビデンスのある特異的な抗菌薬はなかった。
1つの研究で、ABPC/SBTとAZM(IV)を比較した観察研究あり
⇒治療の成功、入院期間で有意差なし
- Ceftriaxone versus ampicillin/sulbactam for the treatment of aspiration-associated pneumonia in adults(J.Comp.Eff.Res 2019)
★方法
多施設後ろ向きコホート研究
肺炎患者のうち、誤嚥の関連因子(誤嚥のエピソード、嚥下障害、意識障害、神経筋疾患、脳血管疾患、経管栄養もしくは寝たきり)が少なくとも1つある患者を対象
CTRX群237例、 ABPC/SBT群400例のうち、傾向スコア・マッチングをして、最終的にCTRX群(218例)、 ABPC/SBT群(218例)を分析
★結果
平均フォロー期間27日で38例(8.7%)が死亡
病院死 CTRX群6.6%vsABPC/SBT群10.7%(P=0.143)
hospital-free days CTRX群11days vs ABPC/SBT群9days(P=0.005)
★結論
誤嚥関連性肺炎の患者において、CTXRとABPC/SBTを比較するためにさらなる研究が必要である
これらをふまえての私見:膿胸や肺化膿症などがない通常の誤嚥性肺炎であれば、嫌気性菌を最初からカバーする必要はないか
ただし、どういう人だとセフトリアキソンで失敗しやすいかは知りたいところ・・・
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