以前、少し勉強会でやったことがありましたが、最近よく取りざたされているトピックでもあり、専攻医の方への教育も含めてもう一度調べて勉強会で扱いました。
<Multimorbidityについて>
- Multimorbidityとは
2つ以上の慢性疾患が併存している状態
定義に含める疾患に関してはコンセンサスが得られているわけではない
Prados-Torres AらのSystemaic Review(J Clin Epidemiol 2014)
Multimorbidityパターンを分析した14文献の検討から上位20位のリスト提示がされ参考にされている(次ページ)
- 死亡、身体機能の低下、QOL悪化、ポリファーマシー、受診回数増加、医療費増との関連が報告されている。
- 今後、高齢化により、さらに増加することが予測されている
- Multimorbidityの頻度は?パターンは?
★C Violanらの報告(PLOS ONE 2014):Systemaic Review
プライマリケアセッティングでのMultimorbidityの頻度・パターン・関連因子を調査。12国の39研究が対象。
①頻度:12.9%(18歳以上対象の研究)~95.1%(65歳以上対象の研究) ほとんどが20%を超えていた。
②関連因子:年齢(OR:1.26~227.46)、低い社会・経済状態(OR:1.20~1.91)。女性・精神疾患との関連も報告あり。
③パターン:最も多いパターンは変形性関節症+心血管疾患(and/or)代謝疾患。
★日本:一般住民対象で29.9%(16~84歳)~64.7%(75歳以上) 在宅患者では53%(Family Practice 2020)
- どのような介入が有効なのか?
★CM Boydらの報告(JAMA 2005)
15のコモンディジーズのガイドラインを調査 Multimorbidityへの対処はほとんどのガイドラインになし
76歳のCOPD・DM・HT・骨そしょう症・変形性関節症の患者の場合、ガイドライン通りだと、12の薬剤必要。月に400ドル以上。
★M Lugtenbergらの報告(PLOS ONE 2011)
有病率高く、QOLに影響が大きい4つの疾患(COPD,2型DM,うつ,変形性関節症)のガイドラインに対してcomorbidityの記述を調査
20のガイドラインで計59の推奨。そのうち78%が関連するcomorbidity(ほとんどDMガイドライン)で、関連しないcomorbidityの記述は8%のみ(うつガイドラインで多い)⇒Multimorbidityに対してガイドラインベースの診療は限界がある。
★SM Smithらの報告(コクラン 2021):Systematic Review
17のRCT(全てcomplex intervention)⇒11研究でケアデリバリー・多職種でのチーム介入。臨床アウトカムの改善はわずかもしくは改善なし。うつ病がある患者に限定した研究においては、うつスコアの中等度の改善を認めた。
★英国NICEガイドラインの推奨(2016)
ステップとして、、
患者とケアの目的について議論する
病気と治療の負担を定める
患者のゴールや価値、優先事項を定める
その人にとって重要なアウトカムや利益・害を考慮して薬剤や他の治療についてレビューする
プランに対する同意を得る
まとめ- 高齢化がさらに進むなかで、Multimorbidityへの対処は重要性が増すかもしれない。
- 有効な介入方法は確立していないが、患者と何を目的にするか話しあい、治療内容をレビューしていく。
- 治療負担にも留意が必要。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます