東埼玉病院 総合診療科ブログ

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半固形栄養はその他の栄養方法と比べて嘔吐や誤嚥性肺炎予防に有効か?

2016-01-13 19:49:34 | 勉強会

 今日は、先日後期研修医の林先生が朝の勉強会で扱った内容について紹介します。

胃瘻造設している在宅患者が嘔吐したり、誤嚥性肺炎を発症することをしばしば経験するなかで、半固形栄養など形状を調整することの効果について調べてくれました。

<半固形栄養はその他の栄養方法と比べて嘔吐や誤嚥性肺炎予防に有効か?>

P:脳卒中後の寝たきり胃瘻患者

E:標準経管栄養

C:半固形栄養

O:嘔吐の発生率、誤嚥性肺炎の発生率

★二次文献

・ハリソン内科学

嚥下能や咳嗽反射が低下した患者は誤嚥のリスクが高い。予防対策として30°ギャッジアップ、経静脈栄養との併用、Treitz靭帯よりも遠位への栄養投与。

・Uptodate

45度のギャッジアップ推奨

半固形栄養や成分栄養の感染症予防は実証できていない。

meta-analysisにおいて幽門以降に栄養を送る処置やメトクロプラミドやerythromycinの効果は否定的である。

・在宅医療バイブル

液体栄養剤を固形に近づけることで予防できるかもしれない。

★一次文献

①Nishiwaki Sらの報告(Journal of Parenteral and Enteral Nutrition 2009)

論文のPECO

P:誤嚥性肺炎や嘔吐の既往のある胃瘻造設後の患者

E:半固形栄養

C:液状栄養

O:胃食道逆流の改善

方法:胃瘻造設後1ヶ月以上経過している患者に対して、放射ラベル 化した半固形栄養または液状栄養を仰臥位の状態で投与し、150秒ごとに90分間放射線のカウントを行う。gastroesophageal reflux index (GERI)は食道へ逆流した最大カウント数として定義。gastric emptying time (GET)は胃内のカウント数が50%に減衰した時間として定義。
結果:半固形にすると胃食道逆流が有意に減少するが、胃排出速度には変化がなかった。
 
 outcomeは、胃食道逆流の改善であり、嘔吐や肺炎などの臨床に直結するものではないので臨床にあてはめるのは難しいか・・・
 
他に成分栄養についてはどうなのかを調べ、下記の文献にあたる。

②Horiuchi Aらの報告(Am J Gastroenterol 2013)

論文のPECO

P:発熱で入院した寝たきり胃瘻患者

E:成分栄養(N=60)

C:液状栄養(N=67)

O:新規誤嚥性肺炎の発生率

T:非ランダム化割付

結果:成分栄養群は、有意に新規誤嚥性肺炎の発生が少なかった。
 
 
 
 林先生のまとめ:標準液状栄養を行う患者が嘔吐や誤嚥性肺炎を繰り返す場合、その他の形状の栄養に変更することで、それらを予防できるかもしれない。
 
 
 現状では、半固形などにすることの明確な根拠はないようです。経験的には嘔吐や肺炎の頻度が減ることもありますが・・・。
 
 

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