がん終末期患者さんにおいて、倦怠感や食欲不振に対してステロイドを使用することが結構あります。カンファでもよく、そのタイミングについて話題に出ます。感覚的には、それらの症状が出ているが、患者さんがなんとか活動できているうちに使った方が患者さんのQOLに寄与すると思いますし、そのような患者さんには効果があるかなと感じています。しかし、実際にどのようなタイミングではじめるのがよいのか。またドーズに関しても明確なものはなさそうだなと感じていましたが、2mgでも十分効く人は効くかなと経験的には感じていました。以前、調べたことがあったのでそれに今回少し追加して載せたいと思います。
<がん終末期における倦怠感・食欲不振に対する コルチコステロイドの使用(開始のタイミングとドーズについて)>
★Brueraら(1985):40人の終末期患者を対象としたRCTで、14日後の倦怠感・食欲不振を有意に減少(MP32㎎)
★Yennurajalingamら(2013):84人の進行癌患者を対象としたRCTで、15日後の倦怠感スケールが有意に減少(DXM4㎎)
★Paulsenら(2014):47人の癌患者を対象としたRCTで。7日後の倦怠感と食欲不振を有意に改善(MP16㎎)
⇒DXA換算で2~4mgくらいの研究が主?
★松尾ら(20回日本緩和医療学会・論文化未)
倦怠感・食欲不振に対する有効性の予測因子を、多施設前向きコホートで179例の入院患者(PCU・一般)を対象として調査(観察期間3日) それぞれの症状NRS≧4
①倦怠感の改善:NRS>5(OR:7.2)、PPS>40 (OR:4.7)、眠気STAS0 (OR:3.3)、胸水なし(OR:2.4)、腹水なし(OR:2.4)
②食欲不振の改善:NRS>4(OR:8.1)、PPS>40 (OR:2.4)、眠気STAS0 (OR:2.8)
⇒PPS>40は効果でやすいみたいです。つまり、臥床がほとんどの段階ではあまり効果ないとのことで、ある程度動けている方に使用するのがいいのでしょうね。眠気ないのも効果でやすかったといのも臨床的な感覚とも一致はします。 ただし、観察期間が3日というのはちょっと短い気がしますが。
(Matuoら,2012)
全国のPCUを対象としたアンケート調査(124名回答:回答率70%)
倦怠感に対して、2㎎未満:47%、2~4㎎:51%
副作用対策;過活動性せん妄がある患者には48%が処方しない、44%が注意深く処方
患者に死が差し迫った時:46%が中止、33%が減量、21%がそのまま
⇒量も2㎎未満で使う緩和ケア医も結構いるのですね。患者さんの状態が落ちて経口摂取もだいぶ困難となったときに、スパッとやめるのはちょっと勇気がいりますが、在宅などではのめなくなってきたらやめてしまうことがほとんどです。入院でもそんな感じではあります。実際緩和ケア医も半数はそうしているみたいです。(その状況で皮下注や静注までしなくてもと思いますし。)
個人的には、ある程度活動できているときにDXAで2㎎/日くらいではじめることが多いので、現状の報告のなかではそんな感じでいいのかなと思いました。あとは、患者さんの予後がどれくらいか、それらの症状をとって患者さんがどんなことをしたいかによって多少タイミングや適応などは異なるのかなとも感じています。
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