銀座の路地裏に「酒粕スープ」の名店あり
路地裏に名店があるのが銀座の面白いところ。ラーメンでは鶏白湯の名店「篝」や、あさり出汁の「松富」が代表格だろうか。他にも鮨、とんかつ、焼き鳥、大衆酒場からビストロ、バルまで、路地裏には佳店がひしめき合っている。
2016年夏、銀座ベルビューホテルの裏手にある細い路地に「酒粕」を使ったラーメンを提供する店がオープンした。「風見」である。割烹のような雰囲気で、清潔感のある店内はカウンター8席のみ。調度品から調理具まで磨きあげられ、洗練された空間だ。
看板メニューの「酒粕濃厚そば」のスープは、鶏や豚、浅利、牡蠣からとった出汁に酒粕を加えたもの。ひと口目は酒粕の良い香りが鼻に抜ける。慣れてくると、次は動物系出汁の香りが表に。更にスープの温度が下がると貝の旨味が広がるという計算。お見事。
一方、小麦の香りが立つ麺は、北海道産「きたほなみ」と三重県産「あやひかり」のブレンドという。トッピングで目を引くのが炙られた「栃尾の油揚げ」。油揚げといい酒粕といい、ご主人は新潟に縁があるのだろうか。
そして小皿で提供される調味料もなかなか。青唐辛子味噌は、ただ辛いだけではない。刻み生姜は甘酢漬けを細かく刻んだもので、丼の印象をガラリと変えてくれる。最後は卓上の京都・村山造酢の「千鳥」を少量いれ、さっぱりと完食。
スープの粘度が高く、麺とよく絡むため、気が付けば丼には麺もスープも残っていなかった。店を出てもしばらくは酒粕がリフレイン。980円の数倍もの満足感が残った。気付けば華やかな師走の表通りを歩いていた。なんだか魔法にかけられた気分だ。いや油揚げだから狐か。
<店舗データ>
【店名】 銀座 風見
【住所】 東京都中央区銀座6-4-13 浅黄ビル1F
【最寄】 東京メトロ銀座線「銀座駅」徒歩3分
★2022年1月31日をもって閉店。残念。