復興のシンボル「道の駅なみえ」で旨い一杯を
2011年3月11日、東京電力福島第一原発の事故を受け、町内全域に避難指示が出た福島県双葉郡浪江町。当時、町には約21,500人が暮らしていたが避難を余儀なくされ全国へ散り散りに。一時は人口が0人となったが、2017年3月に一部地域で避難指示が解除されて以降、少しではあるが人が戻り現在は約2,200人が居住する。
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なお帰還に向け除染やインフラ整備が集中的に行われていた「特定復興再生拠点区域」で2023年3月31日に避難指示が解除に。また2024年1月には住宅や生活道など対象を絞り面ではなく点や線で除染する「特定帰還居住区域」も認定され除染作業が始まっている。とはいえ未だ町の約75%は当面「帰還困難区域」のままなのだ。
国は原発事故以前に家がなかった山林などは除染をしない方針で、このままだと放射線の自然減衰を待つしかない。町全域の避難解除には多くの課題が残ってはいるが、今回は明るい話題に焦点を当てたい。2021年3月20日に復興のシンボルとしてグランドオープンした「道の駅なみえ」に、旨いラーメンがあるという話だ。
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道の駅なみえはJR常磐線・浪江駅から歩くと15分ほど。国道6号線の知命寺交差点そば、浪江町役場の目の前にある。館内の「フードテラスかなで」では2023年のB-1グランプリで日本一に輝いた「なみえ焼そば」をはじめ、町内の請戸漁港で水揚げされたシラスなど新鮮な魚介類、また福島の果物などを味わうことが出来る。
そして、そのフードテラスの一角にあるのが今回のお目当て「麺処ひろ田製粉所」である。店舗は福島市の人気店『中華蕎麦こばや』を展開する「株式会社たなつもの」がプロデュースし、浪江町でエゴマ生産や様々な特産品を活かした商品開発を行う「株式会社浜のあきんど」が運営。2021年8月1日から営業している。
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フードコート型なので座席は「ふくしまフルーツラボ」「レストランかなで」と共用で、テーブル58席とカウンター20席ほど。券売機も3店舗共用となる。ラーメン類は主に細麺と手揉み麺に大別される。細麺は中華そば、塩中華そば、生アオサの浜塩ラーメン、夏季限定「サムライガーリックと豚しゃぶのスタミナ冷やし中華」を提供。
一方の手揉み麺は、中華そば、味噌ラーメン、ざる中華、浪江産えごま担々麺、そして「松川浦生あおさの常磐煮干し極上塩中華そば」をラインナップ。このほか極太麺を使った「なみえ焼きそばラーメン」も用意。それぞれハーフサイズのカレー、野菜かき揚げ丼、チャーネギめしやおにぎりとのお得なセットもある。
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今回は今年5月27日から販売を開始したという新メニューで、地場の食材を活かした「松川浦生あおさの常磐煮干し極上塩中華そば(990円)」を注文することに。まず食券を購入し、書かれた番号が呼ばれたらカウンターに商品を取りに行くルールである。待つこと8分ほどで完成。さっそく生あおさの良い香りが立ち上り食欲を掻き立てる。
澄んだスープは、いわゆる「常磐もの」と言われる福島沿岸で採れたホウボウの近縁種「カナガシラ」の煮干しを炊いた塩清湯である。親潮と黒潮がぶつかる栄養豊富な海で採れた魚は良い味に育つのだ。そこに木羽屋(こばや)製粉所直送の自家製手揉み麺が泳ぐ。全粒粉がブレンドされた香り良い多加水麺で、肌はツルツル。
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コシがある旨い麺で、そこに相馬市にある潟湖「松川浦」名産の生あおさが絡み付き香りも風味もブースト。チャーシューはタレが染みて噛み応えある豚バラ肉が2枚で、ほか牛蒡と人参などが入ったちぎり揚げ、小松菜、メンマ、ナルト、ネギが乗る。旨いものが多い福島のポテンシャルを感じさせる一杯、美味しく完食した。
なお震災で蔵を失った鈴木酒造店が、道の駅なみえに併設する形で蔵を復活しており、ショップ「Sake Kuraゆい」として代表銘柄の『磐城寿』などを試飲・購入出来たり、甘酒を使ったソフトクリームを楽しむことが出来る。食や酒をきっかけに震災遺構を訪れるのも良いだろう。秋は果物も豊富だ。ぜひ足を運んでみて欲しい。
<店舗データ>
【店名】 麺処ひろ田製粉所
【住所】 福島県双葉郡浪江町大字幾世橋字知命寺60
【最寄】 JR常磐線「浪江駅」徒歩15分