横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

ノーベル生理学医学賞

2011-10-04 06:44:45 | 院長ブログ

昨日ノーベル生理学医学賞の受賞者が発表されました。iPS細胞の山中先生も候補にあがっているという前評判でしたが、受賞を逃しました。山中先生が受賞するのは、iPS細胞が何らかのかたちで、臨床に役立つ成果を実際にあげてからでも遅くはないかも知れません。

受賞したのは、自然免疫にかかわる大きな発見をした3氏でした。自然免疫は先々週の国際鼻科学会でも大きく取り上げられて、私も最近にわか勉強をしていたので、この3氏の受賞はなるほどというところです。

ボイトラー教授は、”TLR4(トールライクレセプター:自然免疫で活躍する受容体)の遺伝子を欠損させたマウスは、LPS(グラム陰性桿菌の内毒素)を注射されても生きのびる”ということを発見し、この分野に大きく貢献しました。当時兵庫医大にいた阪大の審良先生も、同様の研究をしており、タッチの差で発表が遅れたという裏話も最近知りました。わずかの差で、今年のノーベル賞は、日本人が受賞していたかも知れないのです。審良先生は他にも、今回の受賞者の中に入っていてもよいような、いや入っていなければいけないような、多くの業績をあげているので、非常に残念です。

ホフマン教授は1996年、ショウジョウバエから見つかったTollという遺伝子が、カビの感染と戦うときに活躍するという、画期的な発見をしています。これが、この10年あまり急速に進歩した自然免疫の研究の先駆けとなりました。

スタインマン教授は、抗原提示に重要な働きをする樹状細胞の名付け親です。1973年に名付けられましたが、マクロファージの一種だと片付けられていたのが、最近になってその重要性が注目されるようになりました。実はスタイマン教授は、癌で、樹状細胞を利用した治療も受けていたとのことですが、受賞の発表のあとになって、3日前に亡くなっていたことが、家族から公表されました。ノーベル賞は、亡くなった方は受賞できない決まりですが、発表の時点では死亡が知られていなかったことから、スタインマン教授の受賞の取り消しはしないとのことです。

山中先生と審良先生には、共通点があります。おふたりとも、研究者になる前に、臨床医のご経験があるのです。山中先生は整形外科、審良先生は内科医でした。もしかしたら、おふたりの画期的なお仕事のアイディアに、臨床医としての発想が役立ったのではないかと想像しています。 山中先生は現在、iPS細胞を臨床に役立てることに懸命に取り組まれており、まず医薬品の開発への応用が実用化されると思われます。審良先生は、今回受賞できなかったことで、ノーベル賞を受賞する可能性はなくなったかも知れませんが、先生の業績のすばらしさには、変わりありません。

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