夜中に瞼が開き、テレビをつけると「尾瀬、中禅寺湖、戦場ヶ原」が映し出されていた。小学6年時の修学旅行で訪れた土地、普通なら、その思い出がフラッシュバックするはずだが、何故か、イザベラ・バードに思いが馳せた。 イギリス上流階級で育ったイザベラ・バード、未知なるものに好奇心を抱き、日本、韓国、中国、マレー半島と当時の秘境に足を踏み入れた。時代は明治初期、文明開化らしき装いがスタートして間もなくの日本。 バード以前、欧米の作家たちは、いわば招待として来日。彼らは、東京、京都、長崎といった外国人のための政府がインフラ整備したところだけしか見ておらず、人力車に乗り、古寺社、名所を見物して料亭に入り、芸者からサービスを受けて楽しんだだけ。 日本政府としては、鹿鳴館外交の延長のようなものだったのだろう。 自国の良いところだけを見せたい、後進国としては当たり前だが、今の北朝鮮が思い浮かんだ。 しかし、バードは素顔の日本が見たかった。 旅のはじめ、彼女の日本の印象はさんざんだったという。 偏見、差別、蔑視、それが旅をするにつれて徐々に変わっていく。 お供についた日本人を蔑んでいたが、徐々に彼らへの眼差しが尊敬と信頼に変わっていった。 貧しくも心清く、礼節を重んじる日本人、四季折々の自然、極東の美しい島国は彼女の心を奪うのに十分過ぎた。 イザベラ・バードは生涯孤独な人だった。その孤独感に打ち克つために、世界の秘境へと向かったのかもしれない。 「イザベラ・バードの日本紀行」、岩波から出ていたので、ポチってみた。 韓国紀行や中国紀行、マレー紀行もあるようなので、日本紀行との対比で読むのも面白いと思う。