あごう ひろゆきの「集志貫徹」 ブログ

生まれ育った「大田市」をこよなく愛し、責任世代の一人として、先頭に立ちがんばっています。皆様との意見交換の場です。

「集志貫徹」

やっぱりおおだ!

TPPを考える(TPP参加に賛成か、反対か)①

2011年11月28日 00時45分52秒 | 想・有・独・言

TPP問題に言及せよというコメントを頂きました。
大事なことなので私の見解を述べたいと思います。

TPP問題は日本の未来にとって非常に重要な局面です。
これを語るには十分な理論の構築とそれを裏付けるデータが必要となります。
文章量にすると膨大になる可能性がありますので、3~5回ぐらい(だと良いのですが)に分けての説明になろうかと思います。

まず、結論から申すと私の考えは「TPP参加には賛成です。
(交渉は慎重に進める必要性と不利になるものに対しての政策を十分に考える必要性はあることが前提ではありますが)」
誤解のないようにする為、シリーズを必ずすべてお読み頂きたいと思います。
そして、文章量の膨大さと裏付けデータの検索の為、相当の時間を費やすことをご理解下さい。

まず、反論ということではありませんが、コメントを頂いたことを整理したいと思います。
「現政権が、選挙公約を全て反古にして、即ち国民との約束を無視して、進めている」
この進めていること、又はその過程において問題となっていることは、主に
①TPP問題
②増税政策
③生活基盤の破壊(特に給与向上)
④日本のデフレ問題
⑤ヨーロッパ発の世界恐慌
⑥韓国のFTAの実態
⑦生活保護者の増大
⑧格差拡大の拍車
⑨失業率を含む雇用体制
であり、国民基盤なくして⑩大田市の経済理論を語ることは厳しいということだと思います。

これに対する、私の総合的な答えとして
①これからシリーズにて見解を述べます。参加には賛成の立場です。
②ある程度、理論的にTPP問題で考えが触れられると思います。
③これもTPP問題に触れることで説明が出来ます。
④デフレはTPPとは全く別問題です。これは新たにデフレ対策で説明します。
⑤難しい問題ではありますが、答えを模索したいと思います。
⑥ある程度TPP問題に関して私の考える方向性が示されると思います。
⑦これも、TPP問題で触れていきます。
⑧同じく、TPP問題で触れていきます。
⑨同じく、TPP問題で触れていきます。
⑩TPP問題の総括として触れていきます。しかし、言及できても
国レベルの問題解決と大田市のレベルを比較するには無理が生じます。
つまり、国レベルの解決がなされないと大田レベルの解決がないという主張が成り立つと
市長も市議会議員も何もできない=いらないという理論が成り立つ可能性があるからです。

まず、TPP問題の一番重要な自由貿易から話をスタートさせていきたいと思いますが、
それを語るには、歴史的背景から考察する必要があります。

TPPの主な目的のは多国間による自由貿易協定締結です。
今主流になっている、二国間(又はそれ以上)によるそれ(FTA:自由貿易協定又は、EPA:経済連携協定)があり、
それに変わるあるいは、拡大した多国間の交渉のテーブルが降って湧いたように議論されている感がありますが、
実際はそうではありません。
多国間の自由貿易協定の交渉としては、以前にGATT(関税および貿易に関する一般協定)という協定があました。
GATTが出来た背景は、1929年に株の大暴落により世界大恐慌が起こりました。
株価の大暴落は,世界中に影響を及ぼし、失業率が増大した為、自国の人々の雇用(仕事)を確保するため,
輸入を制限する関税を切り上げ、各国は,保護貿易政策を採用します。
当時のアメリカは莫大な自国市場を持ち、英仏は世界各地に植民地市場を持っていました。
それらが、ブロック(文字通り,塀又は囲い込み)を作り、保護貿易化しました。
植民地を持たない、遅れて追いついてきた工業国(当時)の日本・ドイツ等は、
植民地・領土拡大政策を採用し、ついに、欧米の権益と激突しました。
これが、第二次世界大戦の原因となったのです。

この反省に立ち、戦後の新たな国際経済の秩序を作ろうと国際通貨基金IMFと、
国際復興開発銀行IBRDの設立が合意されました。
また、1947年には,関税及び貿易に関する一般協定(GATT)が誕生することとなったのです。
GATTは自由貿易拡大のため、貿易の流れを阻止する障壁を多国間の交渉によって取り除くことを目的にしました。
貿易決済に必要な資金の過不足を補う役割もIMFが持っています。
こうしたGATTの多角的交渉により、貿易の拡大がもたらされ、各国経済が成長したことは、間違いありません。
差別的貿易政策から、ブロック経済へ至った1930年代の反省に基づくGATTの理念は、各国の保護主義を克服してきたのです。
GATTの出来た背景は、もちろんブロック政策が第二次世界大戦の原因となったことの反省と
もうひとつはブロック政策を続けるよりは各国間の貿易を推進し、自国のGDPを上げることだと私は考えます。
この裏付けは、経済学の「リカード・比較生産費説」に基づきます。
この理論とは、「特化し交換すれば、利益を生む」というもので、簡単に言うと、「自給自足より交換(貿易)したほうが儲かる」
ということです。
交換=貿易がなければ、われわれは、衣食住すべてを自給自足しなければなりません。
国民一人一人が、服を作り、米を作り、家を建てるのと、国民それぞれが、「服」作り、「農家」「大工」に特化し、
得意分野を生産するのとでは、どちらが、利益があるかということです。
貿易とは競争ではなく、相互に利益をもたらす交換であることです。

GATTは1948年に貿易交渉(いわゆるラウンド)をジュネーブで23カ国にてスタートさせましてた。
以後合計8回の交渉を重ね、最後のラウンド、ウルグアイ・ラウンドにての協議では、サービス貿易や知的所有権の扱い方、
農産物の自由化などについて交渉が行われました。
中でも農業分野交渉が難航し、将来的に全ての農産物を関税化に移行させること、最低輸入機会(ミニマム・アクセス)を決定するにとどまり、
完全な自由化には至りませんでした。
この結果、日本は米に従価税率換算で778%の関税をかける事とより大きなミニマムアクセス米を輸入することになりました。

その後、自由貿易協定の場は、GATTを発展的解消して、1995年にWTO(世界貿易機関)に移行することになります。
WTOは強力な紛争処理能力を持つ国際組織としては稀なより踏み込んだ交渉機関となり、
初めての交渉を2001年からドーハにて開始(ドーハ・ラウンド)したが、またもや農業分野で交渉が決裂しています。

いや~、やっぱり長くなりますね。FTTがどんな意味を持っているか、歴史的背景を説明するだけで一回の記事で十分のボリュームになってきます。
これでもずいぶん簡潔に要約しているつもりなのですが。
これからが大切なところなので、もう少しお付き合い下さい。

さて、WTOの場での貿易自由化が期待できない以上、各国は主要な貿易相手国とのFTA締結による貿易自由化を求め、
結果的に多数のFTAが成立することになりました。
日本は現在、モノとサービスの貿易自由化だけでは不十分という考えから、EPAを推進し、これまで9カ国・地域とEPAの発行や締結を合意しています。
また、6カ国・地域と署名や交渉を開始しています。
しかし、このEPA/FTAの交渉の際に、ネックになっているのが、正直言って日本の農業です。
そもそも、WTOの席で、農業がネックになって交渉が進まないので、EPA/FTAを推進することにしたのにもかかわらず。
(私はこれを決して否定しているわけではありません。歴史的な事実を記載しているだけですので、誤解のない様に。)

では、実際に、自由化によって、どのような効果がもたらされるのでしょうか。実証分析は、次のようになっています。
FTAの経済効果分析には、主に、FTA設立前に行われる事前的分析と設立後に行われる事後的分析をする必要がと言うことが言われています。
事前的分析では、FTAの効果を経済モデルを用いてシミュレーションにより分析する方法をとるのに対し、
事後的分析では、実際に観測された数値を用いて、FTAの効果を計測するようです。経済学の理論によるもと思われます。
私は経済学者ではありませんので、具体的にどういう数値に基づいて、どういう計算をするのかは解りません。
よって、結論を引用させてもらいますが、これは理論的な考えではなく、数値に基づいた結果であることであることは間違いありません。
すなわち、仮定ではなく事実です。

独立行政法人 経済産業研究所「高まるFTA効果分析の必要性」浦田 秀次郎氏より
「事前的分析で最もよく使われている手法が一般均衡モデル(Computable General Equilibriumモデル, CGEモデル)を用いたシミュレーション分析である。
CGEモデルは各国により構成される世界経済を想定し、各国の消費者と生産者は与えられた予算の下で、各々の満足度や利潤を最大にするように行動し、
各財・サービスに対する需要と供給が価格メカニズムを通じて均衡するような仕組みを組み入れている。
CGEモデルは実際の経済活動を簡単化してとらえ、明示的に表現した分析ツールである。CGEモデルを用いたFTAのシミュレーションでは、
FTA相手国との貿易に課されている輸入関税を撤廃することで、FTAの効果を推計する。

これまでのシミュレーション結果から、いくつかの一般的傾向が認められる。1つは、FTA加盟国は経済成長や経済厚生の増加といった形で利益を得る一方、
非加盟国は経済成長の鈍化や経済厚生の低下といった形で被害を受ける可能性が高い。
第2に、加盟国数の増加は加盟国の利益を拡大させる。これらの2つの傾向から判断すると、世界各国にとって最も好ましいFTAは世界全体でのFTA、
つまりWTOでの自由化であることがわかる。」

「FTA効果の事後的分析としては、FTAの貿易に与える影響に関する研究が多い。
FTAの貿易効果としては、加盟国間の貿易が拡大する貿易創出効果と非加盟国間との貿易が縮小する貿易転換効果があるが、
これらの効果の分析にあたっては、クロス・カントリー・データを用いたグラビティ・モデルによる研究が主流である。
グラビティ・モデルでは二国間の貿易量を両国の距離と経済規模で説明しようとする。
二国間の貿易量は距離には反比例する一方で経済規模には正比例という関係が想定されるが、実際の推計でも、このような関係が認められている。」

このことによると、 GATT及びWTOへの加盟が、貿易の拡大に貢献していることが確認されました。
また、そのプラス効果は、自由化の度合いが大きければ大きいほど、高いことも実証されています。

したがって二国間のFTA又はEPAを推進するよりは、多国間の自由貿易交渉をすることがお互いにとって
利益があるということになり、TPPがより有意義ということを実証しています。

歴史的背景から見たTPP参加の必要性はとりあえず以上です。
続きは次回に。