《内容》
1992年秋。17歳だった私・友彦は両親の離婚により、隣の橋塚家に居候していた。主人の乙太郎さんと娘のナオ。奥さんと姉娘サヨは7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。どこか冷たくて強いサヨに私は小さい頃から憧れていた。そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだサヨによく似た女性に出会う。彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになるのだが…。呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない―。青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。
(紹介文より)
☆☆☆☆
―――沼の底を掻き回しては、濁った水の中で頭を抱え、やがて泥が落ち着いてきた頃になると、また無意味に底を掻き回す。それを繰り返すような毎日だった。
―――何かについて、人が最悪の想像をするとき、それはたいてい当たらない。最悪の結果が待っているのは、それを想像していなかったときに限られている。
―――思い出は引き潮のように、足の裏の砂を崩しながら遠ざかっていった。崩された砂の一粒一粒は、たぶん希望や、夢や、信頼だった。
―――乙太郎さんが胸に抱えていたものが何だったのか、私にはいまだにはっきりとわからない。ただ、それを抱えたまま生きていくのは大変だったろうし、ましてや死んでいくのはどれだけ辛かったろうと思う。
1992年秋。17歳だった私・友彦は両親の離婚により、隣の橋塚家に居候していた。主人の乙太郎さんと娘のナオ。奥さんと姉娘サヨは7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。どこか冷たくて強いサヨに私は小さい頃から憧れていた。そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだサヨによく似た女性に出会う。彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになるのだが…。呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない―。青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。
(紹介文より)
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―――沼の底を掻き回しては、濁った水の中で頭を抱え、やがて泥が落ち着いてきた頃になると、また無意味に底を掻き回す。それを繰り返すような毎日だった。
―――何かについて、人が最悪の想像をするとき、それはたいてい当たらない。最悪の結果が待っているのは、それを想像していなかったときに限られている。
―――思い出は引き潮のように、足の裏の砂を崩しながら遠ざかっていった。崩された砂の一粒一粒は、たぶん希望や、夢や、信頼だった。
―――乙太郎さんが胸に抱えていたものが何だったのか、私にはいまだにはっきりとわからない。ただ、それを抱えたまま生きていくのは大変だったろうし、ましてや死んでいくのはどれだけ辛かったろうと思う。