細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

坂道の向こうにある海  椰月美智子

2010-05-31 22:39:56 | 読書メモ や・ら・わ行
《内容》
朝子と正人、卓也と梓は恋人同士。けれど少し前までは、朝子は卓也と、正人が梓と付き合っていて…。城下町・小田原を舞台に描かれる、傷つき、もつれた四角関係の“その後”。初の青春群像ストーリー。
(紹介文より)


☆☆☆☆★
―――仲間はずれにされたみたいに、ひどく薄っぺらな自分がいた。現実から切り離されて、ぺらっぺらっの紙みたいな自分

――― 一体、私に合う人なんてこの世にいるんだろうか。

わたしが一番きれいだったとき 茨木のり子

2010-05-31 22:01:30 | 読書メモ あ行
《内容》
強く、潔く、胸を張って生きていくためには、ときに励まし、ときに寄り添い、ときに戒めてくれる「言葉」が必要なのではないでしょうか。茨木のり子さんは戦後を代表する女性詩人。その詩ひとつひとつに、時代に屈せず、まっすぐに生きる真摯な姿勢が感じられ、今も多くの女性から支持されています。本書は、茨木さんの数ある代表作の中でも特に人気の高い5作品を選び、写真と組み合わせた写真詩集です。モデルとして、若手人気女優の多部未華子さんを起用し、茨木さんの詩の世界を新たな視点から味わうことができます。これからの時代を生きていく若い女性に繰り返し読んでもらいたい、珠玉の一冊です。
               (紹介文より)

☆☆☆☆★
―――
お母さんだけとはかぎらない
人間は誰も心の底に
しいんと静かな湖を持つべきなのだ

おじさんとおばさん 平安寿子

2010-05-31 18:56:23 | 読書メモ た行
《内容》
ひさかたぶりの同窓会に集まった男女たち。みんなもうおじさんとおばさんで、体力気力は落ち気味、介護や子供たちの就職にと心配の種もつきない。しかし、初恋の人に会えば胸がきゅんとし、同時代のテレビ番組、漫画、流行歌を思い出すと懐かしさに気持ちが温かくなる。幾つか新たな同級生カップルもできたが、その恋の行方は?熟年こその「希望」を求める50歳を過ぎた人々に、愛をこめて贈る同窓会小説。


☆☆☆☆☆
―――もう、あの頃には戻れない。あの頃のように過ごすことも、不可能だ。みんな、大人になったのだから。そしてそれを悲しんでも始まらない。


―――毎日が後悔の嵐



逃げる  永井するみ

2010-05-31 18:51:48 | 読書メモ な行
《内容》
優しい夫と愛しい子供との日々に、突然襲いかかる父との再会。忌まわしい過去を、おぞましい父の存在を、決して知られてはならない。家族を捨て、憎しみを胸に、死と隣り合わせの父親と彷徨う生活が始まる。どこへ行けばいいのか、いつまで逃げればいいのか…。追いつめられた女の苦渋の選択も切ない、哀しみの長編サスペンス。

☆☆☆☆☆
―――過去には確かに幸せな時間もあったのだ。なぜあの時間がずっと続かなかったのか。

―――その場その場の状況に流され、楽な方へと舵を取り、本当に大事なものを見失う。

―――自分自身に呆れる。しっかりしろと、自分をどやしつけたくもなる。

モラトリアムな季節  熊谷達也

2010-05-31 16:04:44 | 読書メモ か行
《内容》
大学受験に失敗した和也は、仙台の予備校に通うため独り暮らしを始める。思うように成績が伸びず鬱屈した気分のなか、頭をよぎるのは小学校5年生のときに住んでいたO町の仲間たちのことだった。和也に大きな影響を与えた特別な存在。目の前の現実と向き合いながらも、過去に思いをはせる和也だが、ある日、O町の仲間の一人であり、かつて恋心を抱いていたナオミと劇的な再会を果たす。すでに高校時代の彼女とよりを戻しつつあった和也だったのだが…。昭和50年代を舞台に、主人公の姿をみずみずしく描写した青春物語。話題作『七夕しぐれ』の続編、満を持しての登場。


☆☆☆☆☆
―――いつまでも無知であることは誉められない。しかし、かつて無知であったことを恥じる必要は全然ない。

WILL  本多孝好

2010-05-31 13:13:05 | 読書メモ は行
《内容》
名作「MOMENT」から7年。待望の姉妹編。29歳の森野は、11年前に亡くなった両親の跡を継ぎ、寂れた商店街の片隅で葬儀屋を営んでいる。そんな彼女のもとに、仕事で関わった「死者」を媒介にした、数々の不思議な話が持ち込まれてくる…。
             (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――伝えきれない言葉がもどかしかった。大事な人を失ったとき、人の中に生まれるのは感情と呼べるようなものではない。

―――人の死というのは軽い出来事ではない。その人がもういないこと。それでも自分がどうしようもなく生きていること。

―――人の思いは、ときに捩れ、ときに歪み、ときに行き場をなくして戸惑う。けれどその人が死んでなお、その思いは何よりも鮮やかに空を彩る。そして私は、今日もその空の下にいた。

死ぬときに後悔すること25  大津秀一

2010-05-31 12:03:24 | 読書メモ あ行
《内容》
ほとんどの人は死を前にすると後悔するという――では、人生の最期を前に、どのようなことに後悔するのか。本書は、終末期医療の専門家である著者が、千人を越す患者たちの吐露した「やり残したこと」を25に集約して紹介。「健康を大切にしなかったこと」「他人にやさしくしなかったこと」「故郷に帰らなかったこと」「会いたい人に会っておかなかったこと」など、儚くも、切ない思いが行間から滲み出てくるようで胸が締め付けられる。例外なく、死はすべての人に訪れる。だからこそ、1人でも多くの人に後悔の少ない人生を送ってほしい。心の苦痛を訴える末期患者と、正面から向き合ってきた著者が綴った切実なメッセージが心に響く1冊である。

☆☆☆☆☆
―――人の言葉を素直に受け入れるのは難しいものである。

 後悔しないように逝きたいものです。

自分の感受性くらい自分で守ればかものよ  茨木のり子  

2010-05-31 09:58:23 | 読書メモ あ行
《内容》
弱ったこころを勇気づけ、希望に導いてくれた詩人、茨木のり子。そこにはいつも生きるための言葉があった。ヒューマニズム溢れる名詩から、亡夫を想う挽歌まで、鑑賞解説付きで収録。
          (紹介文より)


☆☆☆☆
―――
ただ透明な気と気が
触れあっただけのような
それはそれでよかったような
いきものはすべてそうして消え失せてゆくような