《内容》
代々、嵯浪藩の勘定奉行を務める西野家の一人娘・紀江は、祝言の後も、かつての想い人を忘れることができなかった。うしろめたさに苦しみながらも、慎ましい暮らしを送っていた彼女だが、ある朝、夫から思いも寄らない事実を告げられて…。妻となり、子をなしても、かつての婚約者の面影を追い求める紀江。すれ違う二人に訪れるのは…。夫婦の悲哀を描ききった、感涙の時代小説。 (紹介文より)
―――夫婦とはな、長きを共に生きる者だ。綺麗事だけでは済まぬことも、誤解を重ねることも、心が行き違うこともままある。そこを乗り越えねば、夫婦としては生きて生かれぬぞ
―――人はなぜ、こうも容易く失うのだろう。 笑いを、輝きを、穏やかに過ぎていくときを、あまりにも易々と奪われてしまう。奪われ、奪われ、、取り残され、独りになる。 生きるとはそのようなものなのだろうか