《内容》
女の人生は一つではない。哀しい子を身ごもった女たちが闇医者をすがってやってくる。おゑんが診るのは、患者の身と心。しなやかな女の強さと美しさの物語。 (紹介文より)
―――人の身体に貴賎はない。病はどれほど高貴な方にも、地べたを這いずって生きる下賎の者にも等しく、襲いかかるものだ
―――形の良い、上等な耳だ。耳のことなど誰も気にかけない。しかし、ちゃんと聞くことのできる耳は貴重だ。他者の言葉を拾う。本気で聞き取ろうとする。 能弁な舌を持つ者は多いけれど、誠実な耳を備えている者はごく稀だ
―――生まれてきたからには、生きねばならん。生かされねばならん。死んでもよい者など、どこにもおらん。