マウスがすぐ汗ばんで握るのが気持ち悪くなる暑さがやってきた。父の日や、早や夏休みを狙って、旅行勧誘メールが矢継ぎ早に来る。お父さんありがとう!ツアーで、ビール工場と酒造会社にアジサイ寺見学の旅、というのもそそられるけれど、我が子には全く期待できない。温泉のプロがお勧めの「極上温泉地」は削除せずに取ってあるけれど、結局はバーチャル風呂に終わりそうや。去年、全米80日ドライブ旅行をし、ロサンゼルスからニューヨークにたどり着いた時には、散髪の必要が生じた。自分にお似合いのチェルシーとかグリニッチビレッジ辺りを逍遥すると、バーバーの店外表示では40ドルから65ドルくらいが相場だった。でも、何と言っていいのか分からず、入り切れなかった。確か、cut my hair でなく、have my hair cut くらいは思い浮かんだけれど、どんな形にするかなど聞かれたら、何も答えられないと怖気づいた。引き返してセントラル・パーク見物に行こうとしたら、途中の繁華街で何と日本と同じ筒形サインポールに、赤いリボンが斜めに回転する床屋に出くわし、16ドルと書いてあった。不安も消し飛んですぐ飛び込んだ。何か言っていたけれど、just short で済ました。おとり広告でないか心配したけれど、支払い時に本当に16ドルだったので、チップ込みで20ドル渡して気分爽快になった。ナイアガラの滝などを経由して、帰りの便を逃すと面倒なので、ロスには余裕を持たせ、出発1週間に戻った。もう一度散髪しなければならないほど伸びたので、豪邸の建ち並ぶ街並みをぶらついて探したら、商店街に床屋が見つかった。2席とも客が居て、店員は仕事に掛かり切りで振り向きもしなかったので、ソファーに腰を掛けて待った。客は軽装ながら身なりが良く、髪形も一人の方はテールを付けたり、もう一方はカールにした上、左右非対称だったり、ドキッとするくらいおしゃれで、高級感が漂っていた。また、職人と客が非常にフレンドリーで、べらべら親し気にしゃべり続けていた。横目で窺っていると、ヘアドレッサーが回転椅子をくるっと半回転させ、その角度で髪を整え始めたのには、度肝を抜かれた。何て粋なんだ。映画のシーンかよ、と心底うっとりした。常連客なのかカード払いだった。自分の番になってビビッて、まず Hou much と聞いた。sixty dollars の声に、完璧に怯んだ。Oh と言ったきり言葉が出ずに後ずさりしたら、恰幅の良い店員は、You may go out. だか何だか、帰ってもいいよというジェスチャーをした。日本人丸出しの顔をしてこの侮辱を受けたのだから、このままでは同胞に済まないと思い Please と言って席に向かった。代金を払う時、財布を見たら20ドル札3枚しかなかった。助かったと思い、全部渡すと、怪訝な顔をして、何も言わず、40ドルを返してくれた。おかしいなあと思いながら帰り道に考えると、あいつは sixteen を sixty に言い間違えたのだと気が付いた。散髪用語は難しいけれど、昨日は格安スマホ代をねん出するため、自分で電気バリカンを使って髪を切ったのだから、I cut my hair と言えるはずと喜んだ。のも束の間、my electric clipper は by なのか with なのか分からなくなった。辞書には道具は with で、I ate the fish with chopsticks. であって、手段の by でないと説明している。しかし、write by hand with a pen. なんて用法があるからややこしい。前置詞を使うのがネイティブでもややこしいので、床屋では省略して単に Scissors only, please. と注文するそうである。なるほど、scissors なら箸と同様、道具っぽいので with でいいだろう。でも、文明の利器の電気バリカンを使うなら、何か重々しく、by electric hair clipper と言ってみたくなる。正解は屋根裏部屋で辞書片手に格闘する老爺には死ぬまで分からない。
うぃずなりや ばいなりやわけ 分からずに
おんとおふにて ぷろぐらむ書く

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