山登りは続く。
だいたいこんな山道で、どうやって建設資材を運ぶって言うんだ?
ロバも馬も通れない道もある。
人は元気にひょいひょいと上っていく。
時折裸足で、頭に物を乗せて。
ゴツゴツの岩も、雨で濡れた泥だらけの道も、動物の糞もへっちゃら。
でもこちらとしては糞から感染し得るコレラが怖いんですが。
新鮮な空気が清々しい。
こんなに長いハイキングはいつぶりだろう。
私の体力、まだまだいけますな。
フラットシューズもジーンズも泥まみれ。
運動靴で来れば良かった。
いくら歩いてもまだ着かない。
歩けば歩くほど、人々の側を通り過ぎる度、気持ちが押される。
アクセス困難なこの土地に、良い教育の機会の手助けをして、
よりよい生活を営めるように。
教育指導官は泣きそうになっている。
道中ずっと「しんどいしんどい」と弱音を吐いている。
でも川では必ず手を引いてくれて、
泥だらけの困難な山道では手を差し伸べてくれる。
私の貴重な水を勝手に鞄からとって飲みやがったけど。
最初は、こんな太ったおじさん捕まえて、こんな大変な視察を強いて、
水もないし、この人心臓発作か糖尿病かなんかでいきなり倒れたらどうしよう、私の責任だ、と思ったけど、
足が痛いだけみたいだから、そのまま歩いてもらいました。
こういう山の中の学校を訪れるのも彼の仕事なのに、こうでもしないと行かないから・・・
歩くこと計4時間、やっと見えたーーー。
今までひとつも学校がなかった村に昨年10月に作られた学校。
全部コミュニティの手作り。
ここに350人。
外にも溢れ出る。
雨が降ったら中止。
この子も、
この子も、
この子たちも、
4人の子どもがいるこのお母さんも、
村に初めての学校ができたことが嬉しくてたまらない。
初めて学ぶことが嬉しくてたまらない。
この子たちには学ぶ権利があるし、
明日を担う人間になってもらわなくてはならない。
校長先生。
他の4人の先生たちは、みんな資格もないし、初めての教師体験。
1週間研修しただけ。
6歳から16歳まで、みんな1年生。
黒板もノートもない。
ここの先生たちもまだ給与未納。
それでも未来があるという。
すべての人々に教育の機会を。
教育は基本的人権。
問題だらけで目を覆いたくなる現状だけれど、
ハイチは少しずつ変わっていっている。
さて、我が事務所は建設を決行できるのだろうか。
以前読んだ Three cups of tea という本を思い出す。
アメリカ人が、パキスタンの山奥に学校を作る話。
村人が長い山道、資材を運んで、
何年もかかってやっと作り上げた。
私たちにそんなリスクを負えるか。
お金も今年末までで期限切れになる。
これができたら、たぶん人生でも重要な出来事になる。
駄目だったらけなしてください。