な、なんということだ・・・。
怒りで震える私は、私は引き下がった。
「あなたがイスタンブールまでのチケットしか発券できないことはわかりました。
とりあえずイスタンブールまでで良いので発券してください。あとは自分で何とかしますから」
「いや、それはできません。あなたはアテネ行きのチケットを持っているのですから。あなたの気持ちは十分に察します。でも私にはあなたのチケットを発券することはできないのです。」
「なんでそれを、2時間前に列に並ぶ前に言ってくれなかったのですか?」
もう、ターキッシュ航空に文句を言っているのか、
トルコ人の配慮のなさに文句を言っているのか、
どうでも良くなっていたが、とにかく怒りが収まらない。
圧力鍋みたいになった私は、泣きそうになりながら(いや、多分泣いてた)、
意を決してチケット売り場に並んだ。
あと2時間か、3時間か・・・。
みんな怒り心頭で、誰かがターキッシュ航空のスタックと口論になって怒鳴る度に、
みんな拍手喝采で応援を送る。
この穏やかな私でさえこんな状態なのだから、
誰かが発狂したり、窓口のガラス戸を叩いたりしても、もはや何も不思議ではない。
少し時間が経ったところで、誰かが大声で怒鳴った。
「今日のイスタンブール行きの便はすべて欠航になりました」
なんてこったよ・・・(涙)
もう怒りと悲しみと疲れでヨレヨレになった私は、
放心状態になりかけたけれど、
ターキッシュ航空ではない他の航空会社の便が飛んでいることを知り、
それを使ってとりあえずイスタンブールへ行こうと決めた。
アテネへの便はそれから考えよう。
100ユーロくらいの便を買い、荷物の超過料金まで払い、
1時間くらい待った。
イスタンブールに着くのは夜の11時くらい。どこに泊まろう。
知り合いに連絡したけれど、連絡が着かない。
夜遅いし、雪だからあまり動きたくないから、空港の近くの格安ホテルに泊まろう・・・。
ふと思い立って、明日のイスタンブールからアテネの便を何とかおさえるため、
再びターキッシュ航空のチケットカウンターに並んでみた。
例の日本人グループを助けていた、優しそうな、しかも仕事ができそうな、髪の毛をソフトモヒカンに立てたお兄さんの列に並んだ。
何となく、この人なら、何とかしてくれそうな気がしたのだ。
お兄さんは、親切で同情的で、しかし説得力のある声で言った。
「サンライズ航空の便で行くと、イスタンブールの郊外の空港に到着し、面倒なことになりますよ。
今日は私たちの指定のホテルに泊まって、明日のイスタンブールの便で行った方が良いですよ。
今からアテネ行きを取っておきますから。ビジネスクラスを用意します」
「いや、でももうサンライズで取っちゃったから・・・」
「私が返金してもらえるように一緒に頼みます」
なんて頼もしくて優しい・・・。
このソフトモヒカンのお兄ちゃんは、酷い酷いターキッシュ航空の、輝く星だ。
間違いなく、今この世で私が最も信頼する男だ。
結局ヤクザみたいなサンライズ航空は返金を固辞し、
私は争う気にもなれず、
ホテル行きのバスを待った。
いつの間にか、もう夜遅い。
アテネの友人に電話したら、涙が出てきた。
あのベルギー人は、日本人たちは、無事にイスタンブールに発ったのだろう。
私だけ置いてけぼりでまだここにいる。
スペイン人の団体客と一緒にバスでホテルへ向かった。
添乗員さんが、「明日は帰りますよ!」と元気にマイクで話している。
日本のツアーからの帰りらしく、私が日本人だと告げると、「日本は素晴らしいね!!!」と興奮して声をかけてくる。
こんな褒め言葉はいつものことだから慣れていて、いつもなら「ありがとうございます」と謙虚に微笑むのだけれど、
今だからしみじみ噛み締める。
本当に日本は最高だ。
45分後にホテルに着くと、歓声が上がった。
Rixosという海沿いの、一流のホテルだった。
「屋内プールまであるらしいわよ!」
あまり関係ないけれど、何となく気持ちが和んだ。
昨日のゴテゴテホテルと違い、インテリアのセンスはいいし、インターネットも通じるし、食事のビュッフェは100種類くらい品が揃っていた。
「バーもすべて無料です」
ワイン一杯で、かなり気持ちが和んだ。
ターキッシュ航空は私の扱い方をわかっていた・・・。
血迷ってサンライズ航空に乗り換えなくてよかった。