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CO2を吸い込むコンクリートに熱視線 鹿島、カーボンニュートラル追い風に普及加速へ  202109

2021-09-28 03:13:00 | 気になる モノ・コト

CO2を吸い込むコンクリートに熱視線 鹿島、カーボンニュートラル追い風に普及加速へ
  産経ニュース より 210928 

スイコムでつくった消波ブロックと一般のコンクリート。
 セメントの代わりに、デンカのγ-C2Sを使ったスイコムは、植物のようにCO2を吸収・固定する

 地球温暖化を引き起こす元凶といわれる二酸化炭素(CO2)を資源と捉え直し、有効利用する。気候変動対策の強化が求められるなか、新たな発想によるCO2の活用「カーボンリサイクル」への期待が高まっている。

 政府は昨年12月に策定した「グリーン成長戦略」で政策支援する重点分野に指定し、代表的な技術の一つとしてCO2を吸収して固まる鹿島のコンクリート「CO2-SUICOM(スイコム)」を明記した。カーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)実現への機運を追い風に、鹿島が進める普及加速への取り組みを探った。

⚫︎1立方メートルに100キログラム以上を固定
 温度50度、CO2濃度80%━鹿島技術研究所の西調布実験場(東京)の一角で、業務用冷蔵庫と似た形状の装置がかすかな稼働音を響かせる。装置内の環境条件を表示する数字パネルからガラス扉の中に視線を移すと、直径10センチ、高さ20センチの円柱型コンクリートが並んでいた。
「高濃度のCO2をコンクリートに吸わせて、内部に固定しているんです。取違(とりちがい)剛上席研究員はスイコムの製造に使用するCO2吸収装置を前にこう説明した。

 住宅や高層ビルなど幅広く利用されている一般のコンクリートは砂や砂利に、水と反応して固まるセメントを混ぜてつくる。砂や水は製造過程でCO2をほぼ出さないが、石灰石を約1400度で焼成してつくるセメントの排出量は多い。鹿島によると、コンクリート1立方メートルの製造でセメント由来のCO2排出量は288キログラムに上り、コンクリートの排出量の大半を占める。

 これに対し、スイコムは、CO2と反応し「炭酸化」することで固まる特殊な材料(γC2S)をセメントの代替材料の一部に活用。従来は水で固まる高炉スラグなど産業副生成物に置き換え、CO2を削減してきたが、γC2Sも混ぜることで吸収・固定まで可能にした。結果、セメント量は3分の1に低減したうえで、残った分の排出量約90キログラムを上回る100キログラム以上を炭酸化で吸い込み排出量をゼロ以下にする「カーボンネガティブ」を実現している。

 取違氏は「従来の技術では排出量を削減することはできても、ゼロ以下にはできない。カーボンニュートラルの実現には、CO2の吸収・固定が不可欠だ」と話した。

⚫︎常識覆す発想の転換
 スイコムは世界初の技術を目指して2008年に開発に着手した。(※)2010年度には共同開発する中国電力の三隅発電所(島根)の排ガスや石炭灰を利用して製造し,実用段階に入っている。(※)中国電力、鹿島建設、デンカ調べ

 世界の先を行く画期的な開発を可能にしたのが、長年の材料研究の蓄積と大胆な発想の転換だ。

 建築物やインフラに利用されるコンクリートは強度や施工性に加え、耐久性が求められる。鹿島技術研究所は約30年前からテーマの一つとして耐久性の研究を続けるなかで、古代から残る遺跡に着目。中国で発掘された約5000年前の住居跡のコンクリートを調べたところ、当時,中国の限られた地域で使用されていたコンクリートはかまどなど生活から出るCO2と反応し、表面が緻密になって水の浸食を防ぎ強度を維持していたという。

 渡邉賢三土木材料グループ長は「炭酸化が耐久性の向上に有効だと気付き、長寿命化に活かせると考えた」と振り返る。この研究の成果は、炭酸化を促進するγC2Sの知見を持つ化学メーカー・デンカの協力を得て、推定寿命1万年というコンクリート「EIEN(エイエン)」として2006年に実を結ぶ。次の展開を探るなかで、鹿島が注目したのがCO2を吸収・固定する働きだった。

 一般的なコンクリートはアルカリ性で、内部に使う鉄筋などの錆(さ)びを防ぐとされる。炭酸化はこの機能を弱める恐れがあるとされ、業界の常識的にNGとされてきた。しかし、取違氏らは発想を転換し、「あえてCO2の吸収を促進し、固定するとどうなるかに挑戦した」。中国電力やデンカに加え、コンクリートプレキャスト製品メーカーのランデス(岡山)とも共同開発に取り組み、γC2Sやほかの材料の配合バランスなどを約2年間かけて試行錯誤し、スイコムを生み出した。

 鹿島によると、炭酸化で強度はやや高まるという。さらに、鉄筋の補強材としてガラス繊維を使うなどの方法も検討し、普及に向け万全を期している。

⚫︎30年に市場規模15兆~40兆円
 政府は今年7月、グリーン成長戦略で重点分野に位置付けたカーボンリサイクル技術開発の道筋を示すロードマップを改訂。CO2を吸収・固定するコンクリートは2030年ごろから道路ブロックなど特定用途で普及が始まり、需要が多い汎用(はんよう)品にも「2040年ごろ」に広がるとしている。改訂前、汎用品は「2050年ごろ」としていたが、前倒しして取り組みを加速する。

 しかし、普及に向け越えるべきハードルは多い。鹿島によると,スイコムの導入実績は実用化から10年で,環境への配慮を特徴とするマンションの天井や太陽光発電所の基礎ブロックなど15件程度。プロジェクトをまとめる坂井吾郎主席研究員は「これまでコンクリートは強度などが重視され,CO2の吸収という機能には需要がほぼなかった」と分析する。

 世界的なカーボンニュートラルへの機運の高まりで、スイコムの提供する付加価値への評価は見直されているが、生産体制や価格などの課題はある。
 重量のあるコンクリートは価格に対して輸送費が割高になるため地産地消が主流だが、スイコムは生産設備を持つメーカーがランデス(岡山県真庭市)などに限られ、需要に応えられないケースもあったという。特殊な代替材料を使うため価格は1キログラム100円と、一般的なコンクリート製品の30円の3倍超に上る(※1)。

 このため鹿島は都市圏のメーカーに協力を呼びかけ,生産ネットワークの整備を進める。合わせて,価格低下につながる製造工程の効率化や適用領域拡大など技術の進化に挑んでいる。

 スイコムは現在、工場で事前に成形する「プレキャスト」方式でつくる。炭酸化には時間がかかるケースもあるが、表面に穴をあける、CO2の触れる部分を増やすなど工夫を施し、厚さ4センチのパネルは一般製品と同等の1日に製造期間を実現している。

 また、プレキャストよりも市場規模の大きい、生コンクリートを建設現場で打設する方式への適応方法も研究する。国内の年間使用量は、主に道路ブロックやパネルになるプレキャストが1500万立方メートルに対し、大規模な建築物の構造材にもなる現場打設は5・5倍の8200万立方メートル。CO2排出量もプレキャストの年450万トンに対し、現場打設は2500万トンと削減余地が大きい(※2)。

 鹿島は昨年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の受託研究で、現場打設への適用領域拡大に取り組み始めた。建設現場でいかにCO2の吸収・固定を実現するかなどの方法を追究し、導入の自由度を高めて需要拡大につなげたい考えだ。

 政府によると、CO2を吸収するコンクリートの市場規模は2030年に15兆~40兆円に膨らむ見込み。鹿島は先駆者として新たな市場を切り開き、気候変動対策を成長への原動力にすることができるか。坂井氏は「住宅やビル、橋などあらゆる建設物のコンクリートが、CO2を吸収・固定する可能性を秘めている。スイコムの活用を広げ、カーボンニュートラルに貢献したい」と語った。



(※1)経済産業省などの「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」より引用
(※2)ZENNAMAとセメント協会の2019年度の統計を基に引用。プリキャストコンクリートとCO2排出量は鹿島技術研究所による推計値。
 提供:鹿島建設株式会社
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🧠最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか?  202109

2021-09-28 02:03:00 | 📗 この本

最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか?
  ダイアモンドonlain より 210928 加藤俊徳

 10人に1人といわれる左利き。「頭がよさそう」「器用」「絵が上手」……。左利きには、なぜかいろんなイメージがつきまといます。なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、これまで明確な答えはありませんでした。
 『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社刊)では、数多くの脳を診断した世界で最初の脳内科医で、自身も左利きの加藤俊徳氏が、脳科学の視点からその才能のすべてを解き明かします。左利きにとっては、これまで知らなかった自分を知る1冊に、右利きにとっては身近な左利きのトリセツに。本記事では本書より一部を特別に公開します。

⚫︎左利きは天才? 変人?
 左利きのイメージでよく取り上げられることの一つに、「天才」があります。右利きの人から、「左利きなの? 頭がいいんだね」など、言われた経験がある左利きも多いと思います。では、実際に左利きは「天才」なのでしょうか?

 哲学者のアリストテレス、そして、アインシュタイン、エジソン、ダーウィンなどの「天才」と呼ばれる偉人たちは、左利きであったと言われています。また、モーツァルト、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ピカソなどの世界的に有名な芸術家にも左利きは多かったようです。近代では、実業家のビル・ゲイツやオバマ元米国大統領なども左利きです。
 私は、こうした左利きの偉人たちは、右利き社会の中で革新的な役割を果たした人が多いと考えています。だからこそ、まわりから抜きん出て「天才」と呼ばれているのではないでしょうか。

 左利きに「天才」が多いと言われる理由を、脳科学の見地から考えてみましょう。

 まず、前提として、利き手が異なると脳の使い方が変わります。詳しくはのちほど述べますが、左利きは右脳を、右利きは左脳を主に発達させています。そして、右脳と左脳では役割が違います。それは、日々の中で同じことを同じように経験しても、右利きと左利きでは「感じ方が違う」ということです。

 インプットの仕方が違えば、おのずとアウトプットの内容も変わります。したがって、大多数の人と発想が違うのはあたりまえなのです。

⚫︎左利きの脳はバランス抜群!
 また、左利きの脳は右利きに比べて「左右差が少ない」ことが、さまざまな研究で明らかにされています。これはつまり、左利きの脳は非常にバランスがとれているということです。

 生まれたときからマイノリティの左利きには、「右利きと同じように行動する」という課題が与えられています。右手がうまく使えないのに、右利き用の道具を使わなければならなかったり、「どうしたらうまくいくだろう」と考える場面が多いなど、快適に生きていくために「天才」になるような脳の使い方をせざるを得ないのです。
 そのような脳の使い方をしているのは、割合でいうと10人に1人。10人に9人の大勢の枠にはまらず、独自の脳の使い方をしていることが「左利きには天才が多い」と言われる、最も大きな理由だと私は考えます。

⚫︎左利きは「違和感」を抱えやすい
 左利きは独自の脳の使い方をする「すごい」存在です。しかし、大勢とは異なる個性を持つために、周りと比べて「違和感」を抱えている人も少なくありません。

 今の社会は、右利き仕様にできています。ハサミ、スープ用のおたまなどの道具が使いづらいなど、物理的な不便はほとんどの左利きが経験します。そして、考え方や行動なども「何か違う」と違和感を抱くことがあります。
 これは、「天才が多い」と言われる理由と同じで、脳の使い方の違いから、周囲から見ると少し個性的に思えたり、得意不得意が異なったりするからです。それでは、利き手によってどんな脳の違いがあるのか、具体的に見ていきましょう。

⚫︎脳には8つの基地がある―「脳番地」でわかる基本的な仕組み
 まず、基本的な脳の仕組みについて、説明しましょう。人間の脳の働きは、「脳番地」という考え方で理解できると私は考えています。
 脳には1000億個以上の神経細胞がありますが、同じような機能を持つ細胞同士が集まって「基地」を作っています。私は、この「基地」の機能ごとに、住居表示のように番地を振りました。脳番地は、脳全体でおよそ120あり、右脳と左脳にそれぞれ60ずつ分かれています。つまり、脳には少なくとも120もの働きの違いがあるということです。

 一般の方が理解しやすいよう整理し、機能別に脳番地を大きく8つの系統に分けたのが次の分類です。

  (イラスト/毛利みき)

・思考系脳番地=何かを考えたり判断することに関わる

・感情系脳番地=感性や社会性、喜怒哀楽を感じ、感情を生み出すことに関わる。脳の複数の部位に位置し、運動系の背後に接している感覚系脳番地は皮膚感覚を通じて感情が活性化する

・伝達系脳番地=話したり伝えるコミュニケーションをとることに関わる

・運動系脳番地=手足や口など、体を動かすこと全般に関わる。手、足、口、目の動きを司る脳番地は運動系の中で別々に分かれている。手足は、脳の対側が支配しているのに対して、口や顔の動きは、片側の脳から両側の動きを司る両側支配になっている。

・聴覚系脳番地=耳で聴いた言葉や、音の聴覚情報を脳に取り入れることに関わる

・視覚系脳番地=目で見た映像、読んだ文章など視覚情報を脳に取り入れることに関わる

・理解系脳番地=目や耳から入ってきたさまざまな情報や言葉、物事を理解、解釈することに関わる

・記憶系脳番地=覚えたり思い出すことに関わる

⚫︎同じ細胞だけど、役割が違う「右脳と左脳」
 人間の脳も、目や耳、そして手足のように見た目は左右対称です。また右脳にも左脳にも、同じ機能を持つ脳細胞が、同じように存在しています。実際に「思考系」「感情系」「伝達系」「運動系」「聴覚系」「視覚系」「理解系」「記憶系」の8つの脳番地は、左右の脳にほぼ均等にまたがっています。でも、実は私たちの脳は「右脳」と「左脳」で役割分担をしています。

 たとえば、同じ「感情系脳番地」でも、左脳では自分の感情や意思を作り出し、右脳は自分以外の人の感情を読み取る働きをしています。また、左脳の「視覚系脳番地」では文字や文章などを読み取り、右脳では絵や写真、映像などを処理します。

 さまざまな研究の結果、左脳は主に言語情報の処理に関わっていること、そして右脳は非言語である画像や空間の認識を担当しているということも明らかになっています。こうして、右脳と左脳は異なる働きを担っていますが、左右対称に同じ働きをする脳番地もあります。それが「運動系脳番地」です。

 右利きの人は左脳の運動系脳番地が、左利きの人は右脳の運動系脳番地が発達しています。なぜなら、右脳から出た命令は左半身の筋肉を動かし、左脳は右半身の動きをコントロールしているからです。その一方で、人は左手を使うことで右脳を、そして右手を動かすことで左脳を刺激しています。つまり、左手をよく使うと右脳が活性化し、右手を主に動かせば左脳が発達するのです。

⚫︎言語系と非言語系―右脳と左脳の得意分野
 右脳と左脳は役割が異なりますが、左利きにとって重要なのは、高い割合で「右脳が非言語系」「左脳が言語系」を担当していることです。

 ある研究によると、右利きの人のおよそ96%が左脳で言語系の処理をしていたのに対し、左利きはおよそ73%が左脳で、両利きでは、85%が左脳で言語系の処理をしていると結果がでています。*

 左利き、右利きを問わず、7割以上の人が左脳で言語処理を行っているのです。すなわち、右利きは、右手で文字を書くときに、左脳の運動系脳番地を使いながら、左脳の伝達系脳番地で言葉を生み出すので、左脳の中でネットワークを使います。
 一方、多くの左利きが右利きに比べて、左手を右脳で動かしながら、左脳で言語処理をしています。左脳と右脳の両方のネットワークを同時に使わないと、文章を綴れないことになります。

 つまり、左利きは両方の脳を使うため、「言葉を使って考えをまとめるのに時間がかかる」傾向があるということです。言語処理が得意な左脳を常に右手で刺激している右利きと違い、左利きは非言語情報を扱う右脳を主に働かせています。言葉に置き換えて言いたいことを発するまでに使用する脳のルートが、ほんの少し遠回りなのです。また、自分の言いたいことのイメージと言葉をつなぐ前に話をしてしまうことがあるため、周囲からずれて聞こえたりもします。

 現代人は言葉を使ったコミュニケーションが主であるため、左利きが日常で抱く違和感にもつながっていると言えるでしょう。もしかすると、うまく話せないとコンプレックスを持つ左利きもいるかもしれません。ですが、右脳には右脳の得意分野があります。

 言い換えれば、本書で紹介していく内容は、右脳を発達させた10人に1人の左利きしか持っていないアイデンティティなのです。

(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)

参考文献 *:Knecht S, Dräger B, Deppe M, Bobe L, Lohmann H, Flöel A, Ringelstein EB,Henningsen H. Handedness and hemispheric language dominance in healthyhumans. Brain. 2000;123 Pt 12:2512-8. doi: 10.1093/brain/123.12.2512. PMID:11099452.

『[著者]加藤俊徳(かとう・としのり)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト  https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト  https://www.nonogakko.com  』

⚫︎左利き、右利きの違いとはずばり「脳の違い」
 左利きは右脳、右利きは左脳が発達しており、それぞれの脳は働きが異なります。それはつまり、利き手によって得意不得意も、思考や性格でさえ変わるということ。

 言い換えれば、左利きは「10人に1人の脳」を持つ「選ばれた才能」の持ち主と言えるのです。

『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』では「右脳が得意なこと」=「左利きの才能」として、さまざまな「すごい」について、最新脳科学をもとに解説していきます。利き手と脳のおもしろさが満載の1冊です!

【目次】               2021年9月28日発売
はじめに―私は左利きだったから世界で最初の「脳内科医」になった
序章 すごい左利き
そもそも、なぜ「利き◯◯」があるの?
左利きは天才? 変人?
左利きの「あたりまえ」が「すごい脳」をつくる…
第1章 「直感」がすごい―ひらめきで人生が好転する
左利きの直感がすごい理由
左利きの得意技「ひらめき」
「直感」をもっと伸ばす脳トレ…
第2章 「独創性」がすごい―豊かなアイデアが生まれる
「イメージ記憶」が選択肢を増やす
左利きは「天性のコピーライター」
「独創性」をもっと伸ばす脳トレ…
第3章 「ワンクッション思考」がすごい―ひと手間が脳を強くする
「ワンクッション思考」を重ねると発想力が豊かになる
ワンテンポ遅れるのは「ワンクッション思考」をしているから
「右脳」をもっと鍛える脳トレ…
第4章 「最強の左利き」になる
右手と左手でできることを「比べる」
左利きと右利きの「役割分担」でいいものを生み出す
左利きはマイノリティではなく「選ばれた人」…
おわりに―左利きも右利きも、脳の違いを知ればうまくいく
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⚠️ 二酸化炭素排出量を削減して気候変動を止めるにはどうすればいいのか?  202109

2021-09-28 02:02:00 | なるほど  ふぅ〜ん

二酸化炭素排出量を削減して気候変動を止めるにはどうすればいいのか?
  GiGAZine より 210927 

 悪化し続ける気候変動が、具体的にどのような状況にあって何が問題であるのか、そして私たちが個人として行える対抗手段は何かということを、教育系YouTubeチャンネルの Kurzgesagtが解説しています。
 Can YOU Fix Climate Change? - YouTube 

 私たちが直面している急速な気候変動は、表面的には単純に見えます。温室効果ガスは太陽からのエネルギーを閉じ込めて、それを私たちの大気に移します。

 これにより太陽の熱が大気にこもるため、より暖かい冬、より厳しい夏につながります。また乾燥した場所はさらに乾燥し、湿った場所はこれまで以上に湿度が高くなります。海面が上昇して海岸と都市を飲み込む間、無数の生態系が死んでいくことでしょう。

 150年間かけて構築した現代の産業社会は、本質的に破壊的です。基本的に、私たちの生活をより簡単に、より安全に、より快適にするために私たちが行うことは、すべて生物圏にとって事態を悪化させるものだと言えます。

 エネルギーや食料、交通手段や産業について私たちはよく知っていますが、多くの主要な汚染者についてはほとんど語られません。例えば、埋め立て地からの二酸化炭素排出量は、飛行機が飛行中に出す排出量と同じくらい重要です。

 また、私たちの家を動かすために、すべての車を合わせたよりも多くの二酸化炭素が放出されます。
 そして、新しい車を作るときに発生する排出量は、わずか2メートルの道路にアスファルトを敷くことに相当します。そのため、環境を意識して電気自動車に乗り換えるのは大事なことですが、その電気自動車が走る道路を作り続けていたら何も解決しません。

 産業システムの一部を修正するだけでは不十分で、多くの異なる部分のそれぞれが独自の解決策を必要とします。

 しかし、解決策が存在するからといって、私たちがそれを積極的に行えるとは限りません。急速な気候変動との戦いには多くの灰色の領域があり、最も顕著なものは、金持ちと貧乏人の間の隔たりです。

 国の繁栄とその炭素排出量の間には明確な関係があり、より裕福な人々はより多くの排出を引き起こす傾向があります。したがって、気候変動を修正するための鍵は、世界で最も裕福な人々が贅沢なライフスタイルを改善して気候変動を削減することにあります。

 しかし一方で、裕福な人々が節約するだけで全ての問題が解決するわけではありません。これは、世界の排出量の63%が低所得国や中所得国からのものであるためです。貧困から脱出しようとしている国は、快適なライフスタイルを達成して中産階級になっていくために、やむを得ず二酸化炭素を排出します。

 したがって、開発途上国に排出量を削減するよう求めることは、排出量を抑える試みのように見えます。それでも、過去に環境被害を引き起こして金持ちになった国が、発展中の地域に対して「原生林を保護することに金を使うべきだ」と主張するのは、非常に難しいことです。

 何十億もの人々にとって、より多くの排出量は個人的には良い結果や快適な暮らしを生んでいます。これを忘れると、実行不可能な解決策を提案する傾向があります。例えば、二酸化炭素排出量の8%はコンクリート製造業から排出されているため、コンクリートの使用をやめることで1割近くが削減できます。しかし現代においてコンクリートは、発展途上国の人口を増やすために手ごろな価格の住宅を建設するのに用いられる、安価で簡単な方法でもあります。そのような、必要と解決策との衝突の例はたくさんあります。

 その他で、現在私たちが解決していないことで、克服する方法があります。その最大の問題は食べ物です。
 動物性・植物性の肥料を必要とする現代の食糧生産は、米だけでも毎年大量のメタンを放出するため、実質的には世界のすべての航空交通に匹敵するほどの環境への影響力があります。
 さらに影響力が高いのが肉類です。食品からの二酸化炭素排出量の57%は動物性食品からのものですが、それらは全人口の摂取カロリー量のうち18%しか占めていません。また、ここにも貧富の差が出ており、世界中の人々がより豊かになるにつれて、より多くの肉を欲しがるようになっています。

 今日、世界の居住可能な土地の約40%が何らかの形で肉の生産に使用されています。これは北アメリカと南アメリカを合わせたサイズと同等の広さで、その広大な土地で動物を養うために、在来の生態系を再成長させたり大気から炭素を吸い出したりしてくれる森林やアマゾンを乗っ取っています。
 肉を食べる量を減らすだけでは気候変動は止まりませんが、食肉の消費量を少なくしなければ気候変動を止めることはできません。

 同じことが、空の旅、海外輸送、鉱業、YouTubeを再生するデバイスの制作など、私たちの生存にとってそれほど重要ではない他のものにも当てはまります。
 裕福な人々は現在の生き方を諦める必要があり、貧しい人々は決して豊かな暮らしを享受できないのかというと、そういうことではありません。技術によって二酸化炭素を取りだして削減し、地下に保管したり製品に変換したりする計画は進んでいます。

 ではなぜそれをあらゆる業界、あらゆる場所に実装しないのかというと、単純にコストがかかりすぎるためです。私たちが今持っている技術では、これには米国の年間GDPの半分に及ぶ約10兆ドルもの費用がかかるからです。

 製鉄所や石炭火力発電所のような大規模な汚染者にこれらのコストを投じるだけで大幅に改善が期待されますが、企業側が行うと製品のコストが2倍になるため、業界の破産は免れません。また、政府にコストを負担させることは合理的に思えますが、実際には多くの政府が石油・ガス産業への助成といった環境保護と反対のことを求められています。

 技術的な導入も、政治的な活動も、実験による開発の時間も残されていない現在、今すぐに「新しい電気自動車を購入する」「ガスストーブを電気ストーブに交換する」「窓を二重ガラスにする」「肉を食べるのをやめる」「電気を消してみる」といった改善策を実行する必要があります。

 二酸化炭素排出量を削減する最も簡単な方法は、地球上のすべての豊かな人々が大幅に二酸化炭素排出量を削減することです。そのような人々のライフスタイルが大きく変わるタイミングがありました。コロナウイルスのパンデミックにより、外出は減り、飛行機の使用は避けられ、店が閉まることも多くなりました。

 しかしながら、2020年は前年に比べて二酸化炭素排出量を7%削減するだけでした。

 こうした現状を見ると、個人の行動では影響力が小さすぎて、世界を救うことはできないと感じられてしまいます。電気を消すといったような個人的な貢献は素晴らしいものの、世界的な二酸化炭素排出の現実があまりにも大規模で、「まずは自分から」という意識は生まれにくくなっています。環境保護の意欲がある人が残りの人生で二酸化炭素を一切排出しなかったとしても、気候変動はほとんど食い止められません。

 それでは、私たちは実際に何ができるのでしょうか。依然として多くの異なる議論があり、明確な結論は出ていないため、Kurzgesagtの主張もあくまで自分たちの視点と意見に基づくものです。

 まずは、この規模の体系的な変化には、政治に働きかけていくことが大事になります。政府や地方の政治家が環境に関わる法律の変更に消極的である場合は有権者として彼らを批判し、科学を尊重する人々に投票する必要があります。

 最も効果的な気候変動戦略を実現するためには、政治家に責任を負わせ、法律を変更し、積極的な環境保護を奨励するほか、既存の技術を活用し、私たちが行っていない分野のイノベーションに大規模に投資していかなければなりません。

 また、産業分野において可能な限り炭素排出量を削減するための規制を設け、協力しない企業に対して厳しい罰則を科す必要があります。
 電気自動車や代替セメントなど、その他の炭素を削減した技術はまだ多くの時間と研究を必要とするため、これらに投資することは裕福な国家でなければ困難です。

 しかしこれらは、技術が進むほど価格が下がるメカニズムであるため、自身が参加可能になったラインで、貢献していけることです。

政治参加のための投票用紙と、環境に投資するための財布で、個人の環境への責任を果たしていくことができます。
 環境へ配慮することで、誰もが少し不幸になります。それでもこれはあなたができる最善のことであり、現実の状況に対処し、急速な気候変動を止めることができるとKurzgesagtは結論づけました。
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🧠脳科学とAIの融合 製造業での熟練者の技術継承に期待、その理由は?  202109

2021-09-28 01:22:00 | なるほど  ふぅ〜ん

脳科学とAIの融合 製造業での熟練者の技術継承に期待、その理由は?
  Ledge.ai 編集部  より 210928 

 人間の脳とAI(人工知能)を融合させる取り組みが世界中で注目を集めている。
人間の脳は、我々にとって非常に身近にあるブラックボックス。これまでは「推測」の域を脱しきれなかったが、現在では推測から「計測」に進みつつある。 

 脳とAIが融合するとどうなるのか。2021年8月末に実施したレッジ主催のウェブセミナー「Ledge.ai Webinar」に、脳科学や神経科学の知見とテクノロジーを掛け合わせる有識者が登壇し、今後より注目すべきAI分野のひとつとしてディスカッションイベントを開催した。
  本ウェブセミナーに登壇したのは、株式会社マクニカ AI Research & Innovation Hub/ BRAIN AI Innovation Lab. プリンシパル 楠 貴弘氏、東京農工大学 グローバルイノベーション研究院 教授 田中 聡久氏、InnerEye Ltd. sales director 篠原 文枝氏の3名。
マーケティング、医療、人材活用の分野での活用に期待が集まる

 本イベントの冒頭では、マクニカの楠氏から脳科学とAI技術を掛け合わせた最先端の研究について説明があった。
  楠氏が属するマクニカは2021年7月に、脳科学とAIを組み合わせ、オープンイノベーションを通じた新たな付加価値の創造を行い、その社会実装を推進していくための組織「BRAIN AI Innovation Lab. 」(以下、BRAIL<ブレイル>)の設立を発表している。 同社では脳科学とAIを融合させたこの取り組みを「Brain-AI」と名付け、さまざまな社会課題を解決し、豊かな未来を実現するためにサービス開発や運用を進めている。

 本稿でもこれに倣い、脳科学とAIの取り組みをBrain-AIで表記していく。 まず、Brain-AIを実現すると何ができるのか。楠氏は次のように話した。

―― 楠氏 「人材評価や組織マネジメント、医療、マーケティングなどさまざまな分野にBrain-AIは有効だと考えています。 たとえば人材評価では、職種を決める際に面談やペーパーテストなどで人員配置などを進めることが一般的です。
 しかし、面談やペーパーテストだけで適正をはかりきることは難しいはずです。このようなケースでBrain-AIを組み合わせると、ペーパーテストを受けている最中の脳波を計測し、本人でさえも自覚していない最適な職種を見出せる可能性があります。

  医療分野においては、広島大学やMeiji Seikaファルマ、そしてマクニカの産学連携によって、『うつ病予防DX』の社会実装を目指し、研究を進めて また、製造現場における目視検査でもBrain-AIの活用は有効的です。製造業では、出荷前に担当者が目視で製造した物を確認する作業があります。
 この目視は“匠の技”と言えるほどのものですが、属人化しやすい作業のひとつです。そこで属人化を解消するため、熟練者の脳波を測定し、AIと組み合わせて目視検査をアシストするようなことも可能となります」
 ただ、脳に関する分野だけあって、通常のAIの実装と比べてハードルが高そうに感じる。しかし、楠氏は「全体的な導入フローは通常のAIと大きな違いはない」と話す。

―― 楠氏 「Brain-AIを進めるには、まず課題や目的を整理し、脳波を測定。そして取得したデータを分析および可視化します。その後、運用するプラットフォームやハードウェアにAIを実装するという流れです。大きな流れは、通常のAIの実装と大きな違いはありません。 

 しかし、脳波を扱うため、脳波データの取得方法や、脳波ならではの前処理の方法、そしてAIのモデル化など、通常のAI実装だけにとどまらない脳科学への知識が必須です。 

 Brain-AIを進めるうえで最もやってはいけないことは、『課題や目的を具体化せずに開始する』ことです。それこそ、簡易な測定デバイスを購入し、脳波を計測して進めようとしている場合は、良い結果を得づらいです。

 脳波のデータを取得したにもかかわらず、『これが何を意味するのかわからない』という状況に陥りやすいためです。 これは一般的なAI実装でも言われることですが、全体像を見るグランドデザインが本当に重要なのです」
 (Brain-AIを活用する際の3つのポイント 最適な脳波測定手法の選定が重要)

⚫︎テレパシーによる会話を実現する可能性も秘める
 ここからは、東京農工大学 グローバルイノベーション研究院 教授 田中 聡久氏、InnerEye Ltd. sales director 篠原 文枝氏の両名にも参加いただき、Brain-AIに関して気になるトピック紹介や視聴者からの質問への回答をした。 

 最初に「脳波を扱うBrain-AIは、ざっくりと言えば音声認識AIのイメージに近い」と田中氏が説明した。後述するが、田中氏は2004年より東京農工大学で、ブレイン・コンピュータ・インタフェースや医療脳波診断のAI化に取り組んでいる。

―― 田中氏 「Brain-AIは、脳から取得したデータを活用する、データサイエンスのひとつだと思っています。普通のAIと異なるのは、楠さんからの紹介にあったとおり、データの計測部分です。 脳波データを計測し、AI的な処理を施しますが、イメージとしては音声認識のAIと近しいもの、と捉えていただくとわかりやすいかもしません。

 音声認識AIでは、音声をマイクに入力すると音波なので波形をデータ上で表示できます。この波形をニューラルネットワークのモデルやトランスフォーマーなどにいれることで言語に変換する、というのが最近の音声認識AIの簡単な流れです。 

 Brain-AIの実装においても、脳波の波形データを取得し、この波形データをAIとしてモデル構築していきます。ただし、音声認識AIと異なるのは、音声の場合は大量に取得が可能でデータベース化が可能ですが、脳波はビッグデータになり得ない点です。脳波は計測に手間がかかることはもちろん、計測するデバイスによっても取得できるデータ内容が変わってしまうのです」
 また、セミナー中には田中氏に対して視聴者から「脳波とAIを組み合わせた技術が発達したら、テレパシーによる会話は可能になるのか」と質問が寄せられた。これについて、田中氏は次のように話す。

―― 田中氏 「可能性の話だけをすれば、原理的にはテレパシーによる会話は実現できるかもしれません。 しかしながら、現状では脳波を取得するには、頭部にデバイスを取り付けて脳波データを取得しています。ただ、頭蓋骨は非常に厚みがあるため、『脳内で思い浮かべた心の声』をキャッチできるほど精度が高くありません。 

 また、脳内で思い浮かべたことをアウトプットするだけでなく、テレパシーでの会話であれば聞き取る側のインプットも考慮する必要があります。無線で相手に心の声を伝え、認知させたり聴覚に流し込んだりする必要があります。アウトプットやインプットも加味すると、現状ではテレパシーによる会話は難しいです」
 そして、イスラエルのブレインテック企業InnerEyeの篠原氏には、「製造業における異常検知などでBrain-AIを採用する際、従来のAIと比べてどのような優位性があるのか」と質問が投げられた。

―― 篠原氏 「製造工程などでの目視検査をAIが担う場合、AIの実装時には『OKデータ』と『NGデータ』を学習させて作る流れがありますよね。AIを構築する際に、現場で実際に作業される方がAI作成のための学習に直接携われば良いのですが、多くの場合はAIの担当部署の方がAIに各データを学習させています。

 ただ、実際に現場で担当されている方と比べると、正確さに欠けるなど、現場での実情と徐々に乖離するケースもあります。 弊社(InnerEye)では、AI開発における“学習”の段階で、脳波データを取得するウェアラブル計測デバイスをAIを実装したい企業の現場担当者に着用してもらい、デバイスを装着しながら通常の作業に着手してもらっています。

 脳波データを現場の担当者からリアルタイムで取得することで、学習のために別途作業時間を確保する必要もなく、現場の担当者ならではの実際のデータを取得できるようにしています。端的に言えば、アノテーション業務を脳波がカバーするイメージですね」
 続けて、篠原氏からは、過去に空港でのセキュリティチェック(手荷物検査)で実験したところ「目で見ている物と、脳が意識していることは異なっていた」という話を紹介してくれた。

―― 篠原氏 「以前、空港での手荷物検査において、検査官の方が画面に映っている映像に意識が向き続けているか、脳波で測定する実験を実施しました。この実験に参加した検査官は非常に優秀な方でした。
  実験中、その検査官の後ろで『別の検査官と旅行者が言い争う場面』を作りました。すると、実験中の検査官は目は映像に向いているものの、脳の意識は言い争いに向いていることがわかったのです。

 さらに、この言い争いをさせている最中にテストとしてスーツケースに拳銃を入れて映像による手荷物検査をさせたところ、なんと見逃してしまったのです。 どれだけ優秀な人だとしても、目が向いていたところで意識も同じ方向に向くとは限らないのです。集中を阻害される外部要因は少なくありません。

 そこで、Brain-AIを用いれば、集中して作業しなければいけない場面にもかかわらず、意識するべき方向に意識が向いていないとき、アラートを出すなどの事故防止も可能なのです」
最後に、本セミナーに登壇した3人から、それぞれの視点でBrain-AIについて話してもらった。

―― 楠氏 「実際に企業がBrain-AIを始めようとするとき、先にもお話しましたが、通常のAIの実装と大きな違いはありません。ただ、とりあえず脳波を測定する、というのは推奨できません。 脳波の測定は難しく、ノイズを含んでいるため前処理も必要です。そのためナレッジも重要になります。

 また、人間の脳から直接データを取り出すので、倫理面やデータの取り扱いは常に気にしなければいけません。 Brain-AIは今後市場規模が拡大していく領域です。ますますさまざまな分野で脳科学とAIが融合するとされているため、今後のAI実装推進においても注目のトピックでしょう」

―― 田中氏 「脳科学に関する研究では、言語活動をよみとった話があります。LSTMのリカレントネットワークをつかっていて、ざっくりいえば日本語を入れると英語で打ち返させるようなもの。翻訳と似たようなモデルをつかっていて、日本語のかわりに脳波をいれると、出てくるものは言葉になって出てくる、そんな研究がいま進んでいます。 

 脳波というと、言葉自体にロマンがあって、SF感があるけど、実際は脳波はプリミティブなデータです。頭の中には電流が流れており、頭の外から測った電圧が脳波なのです。頭部のいたるところに電極を貼り付けることで、うまい具合に情報を取り出し、この脳波の意味を発見し、抽出していくことがBrain-AIでもあるのです」

―― 篠原氏 「脳波測定には被験者の方は特別な作業がいらないことが特長です。たとえば何かを仕分けるときも、Aボタンを押すのかBボタンを押すのかなどが発生しません。ソーティングできるのが特長で、作業に疲れてくると運動野に伝わる信号にエラーがでたときでも、脳波から直接信号をとるため、ヒューマンエラーを防ぐことも可能。今使われているAIソリューションでは越えられなかった壁を越えるきっかけになると考えています」



⚫︎登壇者紹介
**株式会社マクニカ AI Research & Innovation Hub/ BRAIN AI Innovation Lab. プリンシパル楠 貴弘氏
ASICハードウェア開発を経験し、マクニカへ入社。アプリケーションエンジニアを担当後、GPU関連製品のサポートをきっかけにAIの世界へ入る。その後マクニカ初のデータサイエンティストチームを立ち上げ、2019年12月にAI Research & Innovation Hub(ARIH)のプリンシパルに就任。2021年7月にはBRAIN AI Innovation Lab . (BRAIL)を新設しAIと脳科学の融合にも取り組む。世界中の⼈々にとって幸せな未来社会をつくることをミッションにAIの社会実装加速に向けた活動を行っている。

**東京農工大学 グローバルイノベーション研究院 教授田中 聡久氏
東京工業大学で博士号を取得後、理化学研究所の脳科学総合研究センターで信号処理・機械学習の研究に従事。2004年より東京農工大学で、ブレイン・コンピュータ・インタフェースや医療脳波診断のAI化に取り組む。脳波処理では国内の第一人者であり、公的プロジェクトや国内外の大学、企業との共同研究を多数主導している。
**InnerEye Ltd. sales director篠原 文枝氏
海外営業として計測機器メーカーに勤務。液晶テレビ海外工場特注品対応を10年経験。2018年より、イスラエル投資ファンドに勤務。イスラエル ベンチャー企業の日本市場への展開を支援。2019年より、イスラエル ブレインテックスタートアップ企業インナーアイ セールスディレクターとして現在に至る。

動画で学ぶ!Brain-AI
BRAIN AI Innovation Lab. 公式サイト
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電気抵抗のない超伝導技術で「2年間永久電流を流すこと」に日本が初成功  202109

2021-09-28 00:57:00 | ¿ はて?さて?びっくり!

電気抵抗のない超伝導技術で「2年間永久電流を流すこと」に日本が初成功
 ナゾロジー より 210928 KAIN


 非常に低い温度まで冷やしたとき,物質は電気抵抗がゼロになる超電導現象を起こします。
このとき回路を閉じることができれば、そこには外部からの電流供給なしで永遠に電気が流れ続ける「永久電流」を作り出すこともできるのです。

 もちろん理屈としては可能そうでも、実際はスイッチなどの接合部分まで超電導状態を維持しなければならないため、実現は非常に困難な技術です。

 しかし、理化学研究所などの研究チームは2018年にこれを実現し、さらにそれから約2年間永久電流を安定的に維持し続けることに世界で初めて成功したと報告しています。

 これまで数日間の永久電流保持の報告はありましたが、年単位でこれを実現させたのは今回の研究が初めてです。

 この成果は、超伝導理論や技術に関する科学雑誌『Superconductor Science and Technology』に2021年9月17日付で掲載されています。

■目次
永久に電流が流れ続ける意味
理論上300万年間電流が流れ続ける回路

⚫︎永久に電流が流れ続ける意味
 非常に低温の状態で電気抵抗がゼロになる超電導については、聞いたことのある人が多いでしょう。
 ただ、電気工学を学んでいない人にとっては、それがなんなんだ? と思う人もいるかもしれません。
 送電線でも家電の中の回路でも,通常あらゆる物質は電気抵抗というものを持っています。

 そのため電気は流れ続ける限り少しずつエネルギーを失っていき、最終的には何の仕事をしていなくても電流はなくなってしまいます。

 しかし、逆に言えばもし電気抵抗がゼロの物質で閉じた回路を作ることができれば、そこには永久に電流を流し続けることができるのです。

 流れ続けるだけで何の仕事もしない電気に何の意味があるんだ、と思う人もいるかもしれません。
 けれど、電気はただ流れているだけでも重要な役割を果たします。

 それが磁場の発生です。

 超電導状態のコイルを流れ続ける永久電流は、強力な磁場を発生させ続けることができ、核磁気共鳴(NMR)装置はこれを利用しています。
 NMR装置とは、磁場中に置かれた原子核との共鳴現象で物質の構造を解析する装置のことです。

 物質はすべて原子でできていますが、その中身は電子と原子核です。
原子核は非常に小さな磁石として見ることができ、それは決まった周波数の磁場と共鳴をおこします。これを電気的に測定することで物質の構造を調べることができるのです。

 最近アルツハイマー病の発症に肝臓で作られたアミロイドβペプチドが関連しているという研究が発表されましたが、アミロイドβペプチドなどの構造を微量試料から解析するには、超高磁場のNMR装置が必要になります。

 こうした医療の現場でも役立つ次世代超高磁場NMR装置の開発に、永久電流という現象は活躍が期待されているのです。
 ただ、理屈としては理解できる話でも、実際高い磁場を発生させる超伝導にはいろいろと困難な課題があったのです。

 特に永久電流を生み出すためには、コイル部分だけでなく、回路を閉じるためのスイッチ部分も超伝導状態にしなくてはなりません。
 この超電導接合技術は、高磁場の超電導では特に技術的困難が多くあったのです。

⚫︎理論上300万年間電流が流れ続ける回路
 超電導という現象はそれを引き起こせる温度によって、いくつかの区切りがつけられています。
液体ヘリウムの温度(マイナス269℃)で超電導状態になるものを「低温超電導」。
液体窒素の温度(マイナス196℃)で超電導状態になるものは「高温超伝導」と呼びます。

 こうした研究の中で、高温超伝導線材を使って、液体ヘリウムの温度まで冷やす(低温超電導を起こす)と、低温超電導線材を使った場合より、はるかに高い磁場を発生させるとわかりました。

 そこで次世代兆候磁場NMR装置の実現のために、これを利用しようという動きが出ていますが、高温超伝導線材はもろくて取り扱いが難しいため、これで永久電流の閉回路を作るための超伝導接合を実現することが技術的に困難だったのです。

 今回の研究グループは、そんな困難な問題を解決させ、2018年に高温超伝導接合を実装したMNR装置の開発に世界で初めて成功しました。
 このとき装置を2日間安定させて観測を行い、理論上コイルを冷やし続ければ、外部電源無しで10万年間も電流を流し続けられる、ということを示したのです。

 これだけでもすごい成果ですが、実際に長期運用できるかどうかは、この時点ではまだ明らかではありませんでした。
 そこで、研究グループは、その後、実際に約2年間、この装置の永久電流運転を実施し、高温超伝導接合が長期間に渡って安定的な永久電流を維持できることを実証したのです。

科学技術振興機構,電気抵抗のない高温超電導接合で
 2018年当時の測定では、1時間あたりの磁場の変化率は10億分の1というレベルでした。
 しかし、これは時間とともに減少し、なんと2年目の測定では、1時間あたりの磁場の変化率は300億分の1になっていたのです。

 これは電流を供給しなくても300万年も磁場を発生し続けることができることを意味しています。
これまで高温超伝導接合を実装したNMR装置では、数時間の永久電流運転の例しか報告されていません。

 今回の成果は、年単位で永久電流の保持に成功した世界で最初の報告なのです。
永久電流が300万年というのは、なんともSF的なロマンを感じる研究です。


⚫︎参考文献
電気抵抗のない高温超電導接合で2年間の永久電流運転に世界で初めて成功 https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210924/index.html
⚫︎元論文
Development of a persistent-mode NMR magnet with superconducting joints between high-temperature superconductors https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6668/ac2120
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