「北斗さん!堀田さんが、堀田さんが!」
若手選手が悲痛な表情で北斗に結果を伝える。
一瞬、北斗は意外そうに目を見開き、そして再び動揺を隠すように目を閉じた。
「堀田、これで終わりじゃない!これからもずっと戦っていこう」
「関西!10年先・・・20年先も勝負だ!」
微妙なカウントに不満気だった全女ファンも両者に惜しみない拍手を送る。
神取はガウンを身に纏うと、やや興奮した表情で控え室を出た。
「北斗さん!お願いします!」「全女の実力を見せてやってください!」
堀田の敗戦にショックを受けた若手達が不安気に北斗を取り囲む。
「もういい。静かにしろ!」北斗が静かな、そして強い口調で嗜める。
一瞬にして控え室の中に冷たい緊張感と静寂が広がる。
「あんまり騒ぐな。まぁ、アタシに任しときなよ。恥ずかしい思いはさせないから」
北斗は一瞬だけ笑顔を見せ、そして般若の面でその笑顔を覆った。
通路でブルは一人、リングを眺めていた。
既に館内は気の早い北斗ファンが北斗コールを始めている。
堀田-関西戦の興奮も冷め遣らぬまま北斗の登場を待っている。
「ブルちゃん、こんな所にいたの。大した盛り上がりだな」
「アウさん・・・ええ、みんなこの試合を楽しみにしていたはずです」
いきなりダンプ松本に肩を叩かれ、ブルは少し驚いた表情を見せた。
「赤いベルト、残念だったね。ご苦労さん、だね」
「いえ、あれは代々、若い選手に引き継がれる物ですから」
松本は優しい笑顔で一時代を築いた後輩を見つめ、不意に話題を変えた。
「世紀の対決かぁ・・どっちが勝つと思ってるの?」
「はい・・プロレスなら・・・北斗が勝つと思います」
ブルは慎重に、そして冷静な口調で答えた。
「プロレスねぇ。じゃあ、プロレスじゃなかったら神取?」
「・・・・・いえ、やはり北斗が勝つはずです。これはプロレスですから」
松本はブルの答えに頷くと、笑いながら更に問いかけた。
「で、アンタはどっちに勝って欲しいと思ってる?」
松本の質問にブルは少し困った顔をし、少し間を置いて答えた。
「それはもちろん北斗です。仲間ですから」
「嘘をついてもダメだよ。」
ブルは慌てて目を逸らし、俯いた。
「正直に言いなって。アンタは神取の勝利を望んでいるんだろ?」
ブルは答えない。否定も肯定もせず、黙って俯いている。
「そして最強の神取と戦いたい、そう思ってるんだ」
ブルは敬愛するダンプ松本の言葉を初めて無視した。
「やっぱりアンタもプロレスが捨てられないんだね。デビル雅美や・・長与千種のように・・」
松本はそう言うと背中を向け歩き始めた。
「何で・・・何でアンタはすぐにプロレス捨てられたんだよ!なんで諦められたんだよ!」
ブルが感情的に言葉の礫を松本の背中に投げつける。
松本は振り返らず、背中越しに手を振って見せた。
場内は激しく北斗コールが響き、世紀の対決をひたすら待っていた。
若手選手が悲痛な表情で北斗に結果を伝える。
一瞬、北斗は意外そうに目を見開き、そして再び動揺を隠すように目を閉じた。
「堀田、これで終わりじゃない!これからもずっと戦っていこう」
「関西!10年先・・・20年先も勝負だ!」
微妙なカウントに不満気だった全女ファンも両者に惜しみない拍手を送る。
神取はガウンを身に纏うと、やや興奮した表情で控え室を出た。
「北斗さん!お願いします!」「全女の実力を見せてやってください!」
堀田の敗戦にショックを受けた若手達が不安気に北斗を取り囲む。
「もういい。静かにしろ!」北斗が静かな、そして強い口調で嗜める。
一瞬にして控え室の中に冷たい緊張感と静寂が広がる。
「あんまり騒ぐな。まぁ、アタシに任しときなよ。恥ずかしい思いはさせないから」
北斗は一瞬だけ笑顔を見せ、そして般若の面でその笑顔を覆った。
通路でブルは一人、リングを眺めていた。
既に館内は気の早い北斗ファンが北斗コールを始めている。
堀田-関西戦の興奮も冷め遣らぬまま北斗の登場を待っている。
「ブルちゃん、こんな所にいたの。大した盛り上がりだな」
「アウさん・・・ええ、みんなこの試合を楽しみにしていたはずです」
いきなりダンプ松本に肩を叩かれ、ブルは少し驚いた表情を見せた。
「赤いベルト、残念だったね。ご苦労さん、だね」
「いえ、あれは代々、若い選手に引き継がれる物ですから」
松本は優しい笑顔で一時代を築いた後輩を見つめ、不意に話題を変えた。
「世紀の対決かぁ・・どっちが勝つと思ってるの?」
「はい・・プロレスなら・・・北斗が勝つと思います」
ブルは慎重に、そして冷静な口調で答えた。
「プロレスねぇ。じゃあ、プロレスじゃなかったら神取?」
「・・・・・いえ、やはり北斗が勝つはずです。これはプロレスですから」
松本はブルの答えに頷くと、笑いながら更に問いかけた。
「で、アンタはどっちに勝って欲しいと思ってる?」
松本の質問にブルは少し困った顔をし、少し間を置いて答えた。
「それはもちろん北斗です。仲間ですから」
「嘘をついてもダメだよ。」
ブルは慌てて目を逸らし、俯いた。
「正直に言いなって。アンタは神取の勝利を望んでいるんだろ?」
ブルは答えない。否定も肯定もせず、黙って俯いている。
「そして最強の神取と戦いたい、そう思ってるんだ」
ブルは敬愛するダンプ松本の言葉を初めて無視した。
「やっぱりアンタもプロレスが捨てられないんだね。デビル雅美や・・長与千種のように・・」
松本はそう言うと背中を向け歩き始めた。
「何で・・・何でアンタはすぐにプロレス捨てられたんだよ!なんで諦められたんだよ!」
ブルが感情的に言葉の礫を松本の背中に投げつける。
松本は振り返らず、背中越しに手を振って見せた。
場内は激しく北斗コールが響き、世紀の対決をひたすら待っていた。