心身社会研究所 自然堂のブログ

からだ・こころ・社会をめぐる日々の雑感・随想

アトピー性皮膚炎と神経発達障害の関連

2022-10-28 13:27:20 | 健康・病と医療

2歳以前にアトピー性皮膚炎を発症した子供は、6歳時の乳幼児発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが、

韓国・翰林大学校のJu Hee Kim氏らの研究により、報告されています。

こうした研究はこれまでほとんどなかったとみられますが、Allergology International誌オンライン版2022年9月1日号に掲載されています。

 

韓国国民健康保険制度のデータベースにより、2008~12年に韓国で生まれた239万5,966例の小児のうち、

生後24ヵ月までにアトピー性皮膚炎の5つ以上の診断を受けた小児を対象に、

6歳時の韓国乳幼児発達スクリーニングテストの粗大運動能力、微細運動能力、認知、言語、社会性、セルフケア領域をみると、

アトピー性皮膚炎群は、対照群に比べ、

総スコア(加重調整オッズ比:1.10、95%信頼区間:1.05~1.16)、粗大運動能力(1.14、1.04~1.25)、微細運動能力(1.15、1.06~1.25)の3つ

で、ADHD、精神遅滞、心理的発達障害、行動・情緒障害などの神経発達障害の疑いリスクが高いこと、

なかでもステロイドを使用した群や入院した群では、その疑いリスクが上昇することが確認されたとのことです。

 

 ただし、6歳時という単一時点の結果だけでは、全体的な発達の成果を判断することは困難なことは言うまでもありません。

また、個々の子供の発達速度はまちまちであり、発達遅滞が疑われても最終的には正常な発達を示すことが多いことなども、

研究グループは認めています。

そして何より、こうしたアトピー性皮膚炎と神経発達障害の関連性のメカニズムはまだ不明であることも、頭に入れておかねばなりません。

 

原著論文

Kim jh, et al. 2022  Neurodevelopment at 6 years of age in children with atopic dermatitis, in Allergology international : official journal of the Japanese Society of Allergology. 2022 Sep 01; pii: S1323-8930(22)00088-0.

 


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幼児期虐待と心不全

2022-10-27 15:27:58 | 健康・病と医療

子どもの頃に受けたトラウマが、後年の心不全リスクを高める可能性のあることが明らかにされました。

とくに身体的虐待によるトラウマの場合に、それは顕著のようです。

10月5日、「Journal of the American Heart Association」に掲載された、イギリスのLiang, Y.Y.らによる研究です。

 

子ども時代のトラウマは、これまでの研究では、成人後の心血管疾患やその他の健康リスクとの関連は報告されてきました。

しかし心不全との関連は、ほとんど研究されてきませんでした。

 

今回の研究では、英国の成人15万3,287人を対象に、小児期の被虐体験の有無や心不全の遺伝的素因と、心不全リスクとの関連が検討されました。

約12年間の追跡で、2,352人が心不全を発症。小児期の身体的虐待、情緒的虐待、性的虐待、ネグレクトなどの被虐体験がある人の

心不全リスクは14%高く、3~5種類の虐待を受けた経験のある人は43%リスクが高いとの結果が出ました。

また、心不全の遺伝的リスクが低い人でも、小児期の被虐体験がある場合には、心不全のリスクの上昇が認められました。

この研究で示された心不全リスクの上昇を被虐体験のタイプ別に比較すると、身体的虐待が最も強い独立した関連があり(32%増)、

続いて情緒的虐待(26%増)、身体的ネグレクト(23%増)、性的虐待(15%増)、情緒的ネグレクト(12%増)の順でした。

 

ただし、因果関係は不明であること、小児期の被虐体験が小児期の記録でなく成人後の記憶で評価されていることは、忘れてはなりません。

 

原著論文

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鼻うがいのエビデンス(続)

2022-10-11 22:29:09 | 健康・病と医療

新型コロナウイルスの陽性判定後であっても、1日2回の鼻洗浄によって入院や死亡のリスクが低減することがまた報告されました。

Ear, Nose & Throat誌オンライン版2022年8月25日掲載の、Amy L Baxter氏らによる報告です。

それによると、新型コロナウイルスはACE2受容体に結合して細胞内に侵入することが知られていますが、

ACE2受容体にまだ結合していないウイルスを洗い流すことで、重症化を防ぐことができる可能性があるとのことです。

解析対象となったのは、2020年9月24日~12月21日に実施された新型コロナウイルスのPCR検査で陽性となり、24時間以内に登録された55歳以上のハイリスク患者79例。平均年齢64±8歳、女性が36例(46%)、非ヒスパニック系白人が71%、平均BMIが30.3でした。

参加者を、240mLの生理食塩水に、10%ポビドンヨード液(2.5mL)または重曹(2.5mL)を混和した群に無作為に割り付け、14日間、1日2回鼻洗浄を行った。ポビドンヨード群は37例、重曹群は42例であった。主要評価項目は登録28日以内の新型コロナウイルス感染による入院または死亡で、副次的評価項目は鼻洗浄による症状の軽減であった。対照群は、米疾病対策センター(CDC)のデータにより、同期間に新型コロナウイルス陽性が判明した50歳以上の296万2,541例であった。

主な結果は以下のとおりだったとのことです。

・参加者は、79例中62例が連日鼻洗浄を行った(1日平均1.8回)。
・入院はポビドンヨード群で1例発生し、重曹群ではいなかった(1.27%)。死亡は両群ともいなかった。
・対照群では、28万533例(9.47%)が入院し、入院データのない患者の死亡は4万4,773例(1.5%)であった。
・対照群の入院・死亡リスクは、鼻洗浄を実施した人の8.57倍であった(標準誤差[SE]:2.74、p=0.06)。
・鼻洗浄液の種類にかかわらず、1日2回の鼻洗浄を実施した人のほうが症状の軽減が早かった(x2=8.728、p=0.0031)。

 

<文献>

Baxter, A. L., et al. 2022  Rapid initiation of nasal saline irrigation to reduce severity in high-risk COVID+ outpatients, in Ear, nose, & Throat Journal. 2022 Aug 25;

1455613221123737. doi: 10.1177/01455613221123737.

 


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鼻うがいのエビデンス

2022-09-19 18:25:03 | 健康・病と医療

鼻うがいについては、その効果と、コロナ対策でのおすすめについて以前に書きました。→鼻うがいとポリヴェーガル理論

 

興味深いことに、このところ、鼻うがいがコロナの重症化を防ぐ可能性についてのエビデンスが、以下のように、海外の権威ある雑誌に続々と発表されて

いるようです。

「鼻うがい」を英語では、"Nasal Irrigation with Saline Solution " というのですね。直訳すると、生理食塩水による鼻の洗浄といったところか。

 

The effectiveness of various gargle formulations and salt water against SARS-CoV-2 | Scientific Reports (nature.com)

Inhibition of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Replication by Hypertonic Saline Solution in Lung and Kidney Epithelial Cells - PubMed (nih.gov)

Frontiers | Hypertonic Solution in Severe COVID-19 Patient: A Potential Adjuvant Therapy (frontiersin.org)

Hypertonic saline solution inhibits SARS-CoV-2 in vitro assay | bioRxiv

 

さらに驚いたことに、こういう情報を、タイの医学界のニュースサイトが早くも報じているのです。

鼻うがいはもともと日本発の方法なのに、日本では未だなお単なる民間療法扱い。

アジアでも日本は、どんどん先を越されてますねえ~。

 


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「ひきこもり」(Hikikomori)が国際語に!

2022-09-08 21:44:04 | 健康・病と医療

今春にアメリカ精神医学会が発行したDSM-5のテキスト改定版『DSM-5-TR』の"Cultural Concepts of Distress"の章(p.876)に、

すでに先にDSM-IVから掲載されていた「Taijin kyofusho」に続いて、「Hikikomori」が掲載されました。

原文では以下のとおり。

 

Hikikomori (a Japanese term composed of hiku [to pull back] and moru [to seclude oneself]) is a syndrome of protracted and severe social withdrawal observed in Japan that may result in complete cessation of in-person interactions with others. The typical picture in hikikomori is an adolescent or young adult male who does not leave his room within his parents’ home and has no in-person social interactions. This behavior may initially be ego-syntonic but usually leads to distress over time; it is often associated with high intensity of Internet use and virtual social exchanges. Other features include no interest or willingness to attend school or work. The 2010 guideline of the Japan Ministry of Health, Labor, and Welfare requires 6 months of social withdrawal for a diagnosis of hikikomori. The extreme social withdrawal seen in hikikomori may occur in the context of an established DSM-5 disorder (“secondary”) or manifest independently (“primary”).

 

このことは、日本語の「ひきこもり」が国際的に認知されつつあることを意味すると同時に、

「ひきこもり」が単に日本に特有の文化結合症候群にとどまらぬ、

いわばグローバルな世界文化結合症候群としての「Hikikomori」へと昇格?したことをも意味するでしょう。

現に原文では、同様の状態が、オーストラリアでもバングラデシュでもブラジルでも中国でもフランスでもインドでもイランでもイタリアでも

オマーンでも韓国でもスペインでも台湾でもタイでも米国でも見られると明言されています。

 

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