これはたしか、一度発表したことがありますが、かのじょが同人誌の会員さんの作品のために描いた絵ですね。
同人誌では、かのじょは会員さんのために、ノヴェルレッスンなどと言って、物語の書き方も指導していました。
何を生意気な、などと当時は考えていた人もいるでしょうが、今ならかのじょがそういうことをしても、別に反感は抱かないでしょう。かのじょにはそれだけの力量があった。
会員さんが作品を寄せてくれるのはいいのだが、どうしても未熟な点が目立つ。それで、かのじょはその人を上の方に導きたくて、その作品に手を入れてしまったのです。ノヴェルレッスンとか言って、難点の多いその作品を、佳品と言えるまで直してあげた。
まあ、会員さんにすれば、愉快ではなかったでしょうが、かのじょにすれば、もう善意以外のなにものでもなかったわけです。
作品を集めて本を作るだけでは満足できなかった。みなで上を目指したい。力を高めていきたい。だから自分にわかることは何でも教えてあげようと思っていたのです。
小説の書き方なども、コツがわかればけっこうなんとかなるものだ。そのコツを教えたかったのですが、心はあまり通じなかったようだ。みんなのためにやっていたのですがね。
この絵をさしあげた会員さんは、じつはかのじょに対してきつい感情をもっていました。かのじょはそれを感じていたが見ないふりをしていた。何とかしてあげたいと言う気持ちが勝っていた。
馬鹿が三つはつくお人好しだが、それが、かのじょなのだ。あの人がいなければ、できないことがある。
この絵の女性、最近のファッション雑誌に出て来そうなスタイルをしていますね。こんなこともしてくれるのだ。本当の自分は、こんなのはあまり好きではないのですよ。でも愛があるから、みなにも合わせてくれる。
どうにかして、助けてあげたい。そういう引き絞るような声が、この絵の奥から聞こえるのだが。それが当人に伝わるには、もっと時間が必要なことでしょう。