Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

JSEPTIC関連出版物3件

2008-10-18 02:33:03 | 集中治療
JSEPTIC関連出版物のお知らせです。

(1) レジデントノート特集
レジデントノート11月号(羊土社)で

「緊急病態に対する呼吸管理・循環管理:ショックの初期診療と人工呼吸器・循環作動薬の使い方」

という特集を組みました。

レジデント1年生向けの基本的な内容ですが、編集にあたってはJSEPTICの姿勢がはっきり現れるよう妥協をせず、かなり細かい点まで執筆者の先生方と議論を重ねました。その結果、自信をもって送り出せるものとなりました。

特集の最後にJSEPTIC第1回総会の様子も紹介されています。

内容は、
1. 編集にあたって. 讃井將満(自治医科大学附属さいたま医療センター)
2. 胸痛をともなうショック患者の呼吸・循環管理. 大塚祐史先生(自治医科大学附属さいたま医療センター)
3. 出血性ショック患者の呼吸・循環管理:外傷による出血性ショックの症例. 松浦謙二先生(沖縄県立八重山病院)
4. 敗血症性ショック患者の呼吸・循環管理:肺炎球菌性肺炎・敗血症の症例. 林 淑朗先生(University of Queensland, Royal Brisbane and Women's Hospital)
5. アナフィラキシーショックの呼吸・循環管理:造影剤によるアナフィラキシー. 藤谷茂樹先生(聖マリアンナ医大)
6. 人工呼吸器設定の基礎. 長谷川景子先生(横須賀うわまち病院)、田中竜馬先生(University of Utah, LDS hospital)
7. 救急外来における循環作動薬の使い方. 塩塚潤二先生(自治医科大学附属さいたま医療センター)
です。

(2) Surviving Sepsis Campaign 2008
麻酔の雑誌LiSA(メディカルサイエンスインターナショナル)で、東北大学 腎高血圧内分泌科の相馬友和先生による若手医師向け連載セミナーが始まりました。その名も「Surviving ICU Campaign 2008」です。JSEPTICとして全面的に協力しています。ICUにおけるスタンダード診療を初心者にもわかりやすい形で示すことが狙いです。第1回は敗血症性ショックの診療の流れを解説しています。第2回目以降、臓器系統別にICU診療を解説していきます。将来、単行本化を目指しています。

(3) 敗血症診療ガイドライン
本家本元の世界の敗血症診療のグローバルスタンダードであるSurviving Sepsis Campaign Guidelines 2008(Crit Care Med. 2008;36:296-327)の翻訳本「敗血症診療ガイドライン」がでました。東京大学救急部集中治療部の山口大介先生、矢作 直樹先生編著です(ライフサイエンス社)。

特徴として3点あります。
1. 一冊950円と安い(白衣のポケットに入るサイズ)
2. SSC2004との変更点を非常にわかりやすくまとめられている
3. 2年目の研修医の先生(!)が作られたにもかかわらず、コメントで実際臨床に直結する内容を簡潔ながらもしっかりとまとめている

以上、3件です。

ご意見、ご感想お待ちしています。

M&Mをやってみよう。形式とコツ編

2008-10-04 12:44:18 | 集中治療
M&Mの形式やコツに関する雑感です。

M&Mは定型的な形が確立されているわけではありませんが、先日の第一回JSEPTIC総会で、M&Mには大きく分けると二つのタイプがあることが判明しました(完全に分離できるものでもありません。相補的なものです。どちらを主目的におくかという意味です)。

1。事故防止を主目的においたもの(個人、個人間、システム上を含めてroot causeをシステマティックに分析、改善をおこなう)
2。若手医師教育を主目的においたもの(メディカルな部分の原因分析、反省、そこから学べる教訓について、文献を参照しながら医師主体のディスカッションに主眼をおく。いわゆる症例検討会の症例が死亡症例や合併症症例になり、本論が原因分析、反省、教訓というイメージです)

現在、多くの施設で1。を目的とした会が開かれています。対象は医師に限りません。しかし、1. 分析を行う主催者がRCAの手法を知らない、2. プレゼンテーションがよく準備されていない、3. 参加者が趣旨を理解しておらず本論と関連のない質問をおこない議論が噛み合なくなる、等の理由で、ただの「原因指摘会」になり、「改善のための有効な決定打を打ち出せない」場合がある、という危険があります。

僕たち医師がやって面白いのは、2。ですよね。この利点は、
(1)医師としておもしろい。新しい知識が強烈な印象として脳に刻み込まれやすく勉強になる
(2)(医師同士)の共通感覚がベースにあるため言いやすいし聞きやすい

欠点は、
(1)分析がシステマティックでないため、本当の原因が浮き彫りならない可能性があり、再発防止のためには効率が悪くなる
(2)システムよりも個人の判断の間違い、未熟さ、無知さ、無謀さが対象になりやすく、(責めるつもりはなくても)責めら
れやすくなる

などでしょうか。

うまくやるコツは、
1。「誰が何をどうした」、という言葉はなるべく使わず、「なにがどのようにおこなわれた」という言葉を使う
2。スムーズなプレゼンテーションのためにある程度経験のある医師が行う
3。司会進行者と発表者(当事者)がよく下調べし、打ち合わせする
4。意見を述べる先生もできるだけliterature basedに話をしてもらうよう促す(個人的経験的見解と文献に基づく発言との違いが皆にわかるような発言をしてもらう。年長者が言うと、たとえ独語的感想でも、どうしてもその場を支配するようなexpert opinion風な発言になってしまいがちで、司会者や聞く方は要注意)
5。本論に集中できるよう、本論とあまりにかけ離れた質問には司会進行者が制限をくわえたり、個人攻撃と取れる発言には、警告を与える
6。記憶がフレッシュなうちにできるだけ早期に開催する
7。参加者に、2~3のtake home message(今後への教訓)を持って帰ってもらうよう司会者がメッセージを発信する

などでしょうか。

現在、第2回目JSEPTIC総会でM&Mをどのような形にするか、検討中ですので、乞うご期待です。

MS