Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

頑固予備軍

2013-07-16 02:19:00 | 麻酔

一般に、年取ると違う考え方を受け入れるのにより労力が必要になるというか、受け入れられなくなると言われています。いわゆる頑固になると言いかえることができる。これはおそらく気づかないうちに忍び寄り自分の中に定着する思考回路・行動様式なのでしょうか。

自分はそうなりたくない、と思います。ならないためにはどうしたらよいのでしょうか。

最も簡単なのは、新しい考え方を受け入れざるを得ない、新しいことをせざるを得ない状況に追い込むことかもしれませんね。環境因子がでかいでしょう。生きることに本当に困ったらいくらエスタブリッシュされたひとでも変わらざると得ません。環境は人を確実に変えます。

しかし、よくよく考えてみると違う考え方を受け入れられなくなるのは年寄りの特権(あるいは属性)でしょうか。

若いうちは若いうちで年寄りに反発したくなるものです。そのココロは、例えば誰か年寄り(直近では親)とは違う別な考え(一般には自意識というのでしょうか)に染められてしまった自分がいて、年寄りの意見を真っ向からぶつけられると、染められた自分が否定されたような感じがしてむきになって歯向かってしまう。若さゆえの頑固さ、と言ってもよいかもしれません。

それがあまりに強い人は歯向かったまま、もしかしたら年取ってもそのまま変わらないという人もいるでしょうね。このように若さ故の自意識が強い人は、年取ったときの頑固さが表に出る人だったりして。

あるいは、若いころ歯向かった経験のある人ほど挫折するので、そこから学びバランス感覚が優れた人になったり、その歯向かいココロがわかるので、年取ると(気持ちがわかるとか言って)若い人の味方になるかも。

あるいは、若い頃に我慢に我慢を重ねて自我を抑え素直に上の人の言うことを聞き続けたがために、年取って解放されわがままになるという人もいるかもしれません。

こういう若いころの歯向かいと年取ってからの頑固さの、同一人物内の歴史的な関連データなんてあるのでしょうか。本当のところはわかりませんね。

もう少しよく考えると「若い頃の歯向かい」は、面と向かって反論するだけではなく、「自分にはできません」と開き直る、または「できませんとあきらめる」のも含まれているような気がします。とすると、年取って頑固予備軍は実は結構いるということになるか。しかも、それは若いときに形成された、程度の差はあれ、三つ子の魂ということかもしれない。面と向かって歯向かうわけではない、いわば内向きの抵抗な分、より頑固なのかもしれません。

たとえば若い頃カラオケというものにどうしても馴染めずに嫌いになりました。なぜ大音量の中にじっと耐えていなければならないのか、下手な歌を聴かなければなならいのか、大声を出さないと人としゃべれないのか、強要されて下手な歌を歌わなければならないのか。今でもやっぱり嫌いです。

話は変わりますが、自分の歴史上、後になって振り返ると年寄りの教えはやっぱり正しかったと思うことが多いのですね。このような経験を重ねると、ある程度結果の予測が立つけれども、どうしてもそのようにしか思考・選択・行動できない自分がいて、基本スタイルは年取っても変わらないのかもしれません。

目指せ、柔軟な年寄り。老後のためにカラオケ練習するか。


Intensivist Vol. 5 No. 3 特集 神経集中治療 刊行されました

2013-07-09 07:21:06 | 集中治療

7月10日にIntensivist Vol. 5 No. 3 特集 神経集中治療が刊行されました。

香川大学医学部 救急災害医学 黒田泰弘 先生、東京ベイ・浦安市川医療センター 藤谷茂樹 先生、編集作業大変ご苦労さまでした。執筆者の皆様、熱のこもった原稿をありがとうございました。待ちに待った初の神経系の特集です。

 

以下、コンテンツ

日本ではNeurosurgical ICU は,脳神経外科医により運用されている施設が多く,集中
治療専門医の関与は少ないと思われます。一方,海外では集中治療専門医が体系的に神
経集中治療のトレーニングを受けており,Neuro intensivist として脳神経外科医と協
力して集中治療管理を行っています。脳神経外科疾患においては,救急対応,手術,術後
管理のすべてにおいて質の高いシームレスな全身管理を行うことが,二次性脳障害の発
生を防ぎ,良好な予後を得るうえで必須です。今後日本においても,集中治療専門医と
脳神経外科医との連携による,質の高いチーム医療が推進されることが望ましいと考え
ます。本特集では,エビデンスが比較的乏しいとされる神経集中治療について,集中治
療専門医に必要とされる内容,Neuro intensivistの目指すべき姿を示すことを目的と
しております。

1. 神経集中治療の今後の展望:日本における神経集中治療のあるべき姿を考える
  黒田 泰弘 香川大学医学部 救急災害医学
  
2. 神経学的所見と局在診断:Neuro ICUでの診察のポイント
  河合 真 テキサス州ヒューストン市メソジスト病院 神経内科神経生理部門
  
3. 神経学的所見と画像診断:撮像法と脳解剖の知識をベースとした画像診断に向けて
  増本 智彦・椎貝 真成・檜山 貴志 筑波大学医学医療系臨床医学域 放射線診断

  
【コラム】ルーチンの頭部CT撮影は必要か?
  内野 滋彦 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部
  
4. 鎮静・鎮痛の管理
  三枝 邦康 東京ベイ・浦安市川医療センター 脳神経外科
  内藤 貴基 東京ベイ・浦安市川医療センター 集中治療科
  前田 幹広 聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部
  
5. 頭蓋内圧モニタリングと管理:頭蓋内圧亢進への対処法
  横堀 將司 Miami大学 脳神経外科
  
【コラム】頭蓋内圧モニタリングは予後に関連するのか:
  多施設RCTを含む研究から浮かび上がる問題点
  森 浩介 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急科/横浜市立大学医学部 救急医
学教室
  石川 淳哉・森村 尚登 横浜市立大学医学部 救急医学教室
  
【コラム】脳循環代謝のモニタリングの原理と妥当性:
  SjO2,NIRS,PbtO2の測定は転帰に影響するのか
  櫻井 淳・木下 浩作 日本大学医学部 救急医学系救急集中治療医学分野
  
6. 循環管理:血行動態のモニタリングとその評価
  磯谷 栄二 東京女子医科大学東医療センター 救急医療科 救命救急センター
  
【コラム】脳圧管理における浸透圧利尿:ガイドラインでの推奨と使用薬物の特性
  欅 篤 社会医療法人愛仁会 高槻病院
  
【コラム】Triple H療法は過去の治療となってしまったのか?
  舩越 拓 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急科
  
【コラム】くも膜下出血の神経集中治療における落とし穴:
  stress−related cardiomyopathy syndromeを中心とする循環器系合併症
  塩塚 潤二 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
  
【コラム】日本における脳梗塞治療:日本発の薬物のエビデンス
  津久田 純平・内藤 貴基 東京ベイ・浦安市川医療センター 集中治療科
  筒泉 貴彦 練馬光が丘病院 総合診療科
  
7. 呼吸管理:神経集中治療に応用可能なエビデンスからの検討
  阿部 智一 筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター/総合病院水戸協同病院
救急科
  
8. 凝固障害・出血
【コラム】凝固傷害:コントロールできない頭蓋内出血
  伊藤 英道・田中 雄一郎 聖マリアンナ医科大学 脳神経外科
  松本 純一 聖マリアンナ医科大学 救急医学
  
【コラム】コントロールできない頭蓋内出血に対するrFa製剤の使用:
  適応外使用における有効性と安全性
  尾田 琢也 飯塚病院 総合診療科
  
【コラム】頭部外傷,出血性脳卒中などにおいてVTE予防治療をいつ開始するのか?:
  エビデンスから考える抗凝固療法の有用性と安全性
  河北 賢哉 香川大学医学部 救急災害医学
  
9. 体温管理:低体温療法はエビデンスに基づいているのか?
  山下 進 徳山中央病院 救命救急センター
  黒田 泰弘
  
【コラム】低体温療法の最新トピック:
  3rd Annual Therapeutic Hypothermia and Temperature Management:Current
and Futureに参加して
  黒田 泰弘
  
10. 脳脊髄液ドレナージの管理:感染の予防と抜去のタイミング
  川崎 浩遠 Iowa大学 神経外科
  
【コラム】NSICUで働くフェローの1日:日常業務から終末期・脳死への対応まで
  牧野 淳 Mount Sinai大学病院 集中治療室
  
【コラム】Neuro ICUで働くフェローの1日:
  Pittsburgh大学Neuro ICUの1日と終末期・脳死への対応について
  瀧 香保子 Pittsburgh大学 集中治療科
  
  「特集 神経集中治療」解説:神経集中治療のための必須知識
  藤谷 茂樹 東京ベイ・浦安市川医療センター/聖マリアンナ医科大学 救急医学
  
  【連載】
■Lefor’s Corner
  第8回:Ventilator Management:Part IV. Liberation from the Ventilator
  Alan T. Lefor Department of Surgery, Jichi Medical University
  
■ICUフェローからのメッセージ
  第20回:Tennesseeの風に吹かれて:
  Vanderbilt大学臨床研究マスターコースを受講して
  井上 茂亮 東海大学医学部外科学系救命救急医学,創造科学技術研究機構医学部

  
■集中治療室目安箱:ナース/ME,私の言い分
  第15回:看護師のノンテクニカルスキル:
  専門性の高い周術期における患者安全を促進する
  榎本 晶 東京ベイ・浦安市川医療センター 手術室
  
■え?知らないの? 酸素流量計の使い方
  岩谷 理恵子 東京慈恵会医科大学附属病院 臨床工学部
  
■集中治療に関する最新厳選20論文
  柳井 真知 聖マリアンナ医科大学 救急医学
  藤谷 茂樹
  
■JSEPTIC簡単アンケート
  第9回:薬剤師・臨床工学技士・理学療法士,ICUでのルーチンPart 1,呼吸不全に対
するECMO
  内野 滋彦 
  


JSEPTIC-CTG、セミナー終了しました

2013-07-02 18:11:11 | 麻酔

6月22日昭和大学で開催された第13回JSEPTIC-CTG総会にご参加くださりありがとうございました。

マイクが使えずご不便をおかけしたことをお詫び申し上げます。

アイデアの段階から論文執筆中のものまで、進行中の12件の研究について熱くディスカッションすることができました。今回はオブザーバーの方も含めのべ33名ご参加くださいました。

次回は9月14日に慈恵医大で行います。研究アイデアをお持ちの方(過去にもCTGで話し合われボツになったものでも形を変えて単施設で行われたり、ひょうたんからこま、いろいろなパターンがありますので、どうぞお気軽にお持ちください)、ご自分の進行中の研究に対して意見を聞いてみたい方、単に覗いてみたい方、お気軽にいらしてください。

また午後からは、JSEPTICセミナーにご参加くださりありがとうございました。蒸し暑い中のべ146名の方にご参加いただきました。

Intensivist ECMO特集の刊行に合わせて、編集をしてくださった横浜みなと赤十字病院の武居哲洋先生の進行のもとに、4人のエキスパートの方に素晴らしいご講演をいただきました。

板橋中央総合病院麻酔科の赤嶺 斉先生には、「体外循環の生理学」というテーマでVA-ECMO、VV-ECMO施行にともなって生じる生理学的変化について、自治医科大学附属さいたま医療センター臨床工学部の百瀬 直樹先生には「ECMOデバイスの原理と進化」とくにポンプおよびガス交換の原理について、駿河台日本大学病院循環器科の渡邉 和宏先生には「VA-ECMOの症例検討」と題して、心肺蘇生時のVA-ECMOの豊富なご経験について、最後に日本医科大学付属病院集中治療室の竹田 晋浩先生には「日本のECMO治療の課題」について、海外およびご施設での豊富なご経験をもとに日本の第一人者の立場から、デバイスと管理の重要性および進行中のECMOプロジェクトに関してお話ししていただきました。

Intensivistの復習、誌面に現れない臨床的なこぼれ話、秘話、コツなど、大変勉強になりました。

次回は、9月14日「神経集中治療」をテーマに慈恵医大附属病院で行います。始めての試みとして、CTG、セミナー、FCCSを同一場所で開催いたします。三つを自由に見学していただけるようにする予定ですので、是非ご参加ください。プログラムができ次第ML、HPなどでお知らせします。

また、1年分のJSEPTICセミナーの講演が動画で視聴できるJSEPTIC Clubの入会も随時募集しております。セミナー参加が無料になります(ただし技術的な問題、版権、個人情報の問題などで一部視聴できない部分があります)。

引き続きよろしくお願いします。