臨床に直結する集中治療のエビデンス(文光堂)をすでにお買い上げのみなさま、以下の誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
http://www.bunkodo.co.jp/pdf/book/1114.pdf
それにしても最も恥ずかしい間違いは
trough feeding(誤)→trophic feeding(正)
です。これは私自身が完全にそう思い込んでいたからです。
ICUで十分な経管栄養を与えたいにも関わらず、患者が重症過ぎて投与できない場合、最低限の持続投与を行う場合があります(20cc/時間など)。これを「腸粘膜を栄養(= trophic)する」という意味でtrophic feedingと呼びます。
私は、てっきり薬剤の血中濃度が一日のうちで最低になる時点の濃度をtrough濃度と呼ぶことから(troughは(波と波の間の)くぼみ、谷、という意味)、 「最低限の投与量を投与する」という意味でtrough feedingであろうと10年間勘違いしていました。
ちなみに、trough feedingでgoogle imageすると、家畜にエサをやる写真が出てくる、出てくる。この場合のtroughは、(家畜の飼料・水などを入れる細長い)かいばおけ、槽 の意味です。
なぜこのような堂々とした勘違いが続いたか言い分けさせていただくと、trophic feedingは米国で耳から覚えた単語だったからと思います。つまり、日本人としての悪い耳でtrough feedingと覚え、それをそのまま日本人としての悪い発音でしゃべってもやさしい米国人の間で通じてきたからです。今あらためて、ネイティブの発音を聞けばおそらく聞き分けられると思いますが、当時は修正できるチャンスはあったのでしょうが、そう固く信じてしまったためでしょう(リスニングは耳の良し悪しも大切ですが、基礎知識、状況把握が(ときに遥かに)重要な所以です)。
で、ついでに思い出した話。Masa。
ファーストネームがMasamitsuなので、当時、短くしてMasaと呼んでくれと自己紹介していました。すると、ときに「masterに聞こえてあんまり気持ちのいいものではないから他に呼び名はない?」と聞かれました。すぐさま、「オマエはオレのmaster(=ご主人様)ではないからな、はっはっは」と明るく補足してくれた人もいましたし、米国の過去の歴史を思い起こさせるから、と理由を説明してくれた人(白人)もいました。
以上、耳には同じに聞こえるが間違えるとただ事ではない例でした。
この手の誤解、通じない英語、通じやすい英語の話は腐るほどあって、またの機会に(ずるい、話をうまくすり替えて逃げたな)。