Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

政治家のスピーチに舌を巻きました

2010-06-28 11:49:46 | 集中治療
先日とあるシンポジウムで衆議院議員のプレゼンテーションを聞くチャンスがありました。

内容は個人的にそれほど目新しいものではなく、あまり真剣に聞くつもりはなかったのですが、つい聞き入ってしまいました。おそらくお忙しいので準備の時間などないのでしょう。スライドも使わずに手元の資料のみでしたが、飽きさせず、メリハリの効いたスピーチ、時間も2分程度残してぴったり終わる。舌を巻きました。

また、質問にも的を外さず、かといって細かい突っ込みにも耐えうるように(まるで模範的な国会答弁のように)答えていらっしゃいましたが、話し方に説得力があるので、ついつい「うんうん」とうなずいてしまいます。

ああいうパブリックスピーキングができるようにいつかなりたいものです。トレーニングと場慣れで、少しは上達すると信じています。プレゼンテーションの下手な自分は、まずは、できるだけ直感的でインパクトのあるスライドでそれを補うようにしています。それにやはり場数。練習のためには、チャンスを拾ってプレゼンテーションをひたすら繰り返すのが第一と思いますが、もう一つ練習の一番よい機会は学会での質問ではないか、と思っています(以前にも書きました)。前置きを短く、本質的な質問をする(的外れな質問をしない)、個人攻撃はしない、追いつめるような質問でスピーカーをただ追いつめるのではなく、その後にフォローを入れたり、質問の仕方を変えたり、スピーカーに逃げ場を作っておくことも重要だと思います。また、単発の質問で終わらずに議論がつづくようにスピーカーの出方を予測しておいたり。でも、その場になるとまったく自分の予想した通りにならない。そういうものです。

もちろん最初からできませんが、失敗を恐れては殻を破ることはできません。とあるテレビ放送で見ましたが、大学の講義で何か一つのテーマについてディスカッションする授業があって、みんな口に出して面と向かって意見を言うことができないので、コンピューターに向かってtwitterで議論するらしい。これって、おかしいですよね。口に出して意見を言い合い、自分が否定されるのが恐ろしいのでしょうね。もちろん誰だって嫌ですが、そもそも個人や人格の戦いではなく、相手の発言に対して反論するのは、自分の主張を理解して欲しい、なんらかのコンセンサスを得たい、自分がもっと知りたいから発言するだけですし、そもそも、そんなに回りの人は自分のことを気にしていません。だんだん慣れてくる(オジサン化する、とも言います)と、少しぐらい否定される、無視される、空気を読めない発言をしても何とも思わなくなります。このトレーニングには、ほんの少しの勇気の積み重ねが必要です。これには時間がかかりますが、一番効率よく身につけるには、外国で暮らすなどの、嫌が応でも自分が全否定されてしまう環境に身をおくのがよいと思います。

書くこと、黙読すること、コンピューターに打ち込むこと、これらと声に出して話すことは決定的に違います。声に出して話す技術は声を出さないとうまくなりません。政治家は、頭で考えるのではなく、きっと舌が勝手に考えて動き出すレベルに達しているのでしょう。