Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

第19回JSEPTICセミナー「神経集中治療」のお知らせ

2013-08-28 16:42:13 | 集中治療

来週末に迫りました第19回JSEPTICセミナー「神経集中治療」の再度のお知らせです。

JSEPTIC初の神経集中治療がテーマです。Intensivist特集「神経集中治療」を読んだ方は疑問をぶつけに、読んでいない方はこの機会に一気にポイントを学びに是非いらしてください。

http://peatix.com/event/17686

今回は午前中に限り、同会場で開催されているFCCSセミナーを見学することができます。JSEPTICセミナーの休み時間にはFCCSの様子をビデオで見ることも可能です。

また、いつもの通り、CTG委員会も開催いたします。

http://www.jseptic.com

http://www.jseptic.com/pdf/29.pdf

都心で交通の便がきわめて良好な慈恵医大 南講堂での開催です。

 

テーマ 神経集中治療
【日時】
 2013年9月14日(土)13:00~18:15 (受付開始12:30~)(予定)

【会場】
 東京慈恵会医科大学 南講堂(高木2号館 地下1階)
 〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8

  • 都営三田線 御成門 A5出口 約3分
  • 日比谷線 神谷町 3出口 約7分
  • JR 新橋 烏森口、銀座線・都営浅草線 新橋 8出口 約12分
  • JR 浜松町 北口、都営浅草線・都営大江戸線 大門 A2出口 約13分


【参加費】
 参加費:3,000円
 事前申込:2,500円(8/6~9/2)
 JSEPTIC CLUB会員:無料
  ※チケットは一人1枚までご購入いただけます。
  ※ご入金後の返金はいたしませんので、ご注意ください。
  ※JSEPTIC CLUB会員について
  ※9月3日以降空席がある場合は追加募集をしますが、3,000円となります。

 

プログラム

13:00 ~ 13:05 開会の辞 藤谷 茂樹(東京ベイ市川浦安医療センター)

13:05 ~ 13:50 神経集中治療の疫学と今後の展望 黒田 泰弘(香川大学医学部 救急災害医学)

13:50 ~ 14:35 神経学的所見と画像診断 増本 智彦(筑波大学附属病院 放射線科)

14:35 ~ 15:20 頭蓋内圧モニタリングと管理 木下 浩作(日本大学医学部救急集中治療医学)

15:20 ~ 15:30 休憩

15:30 ~ 15:50 JSEPTIC CTG 委員会から

15:50 ~ 16:20 脳梗塞治療における日本独自の薬剤について 内藤 貴基(東京ベイ・浦安市川医療センター 集中治療科)

16:20 ~ 17:05 体温管理 山下 進(徳山中央病院) 

17:05 ~ 17:15 休憩

17:15 ~ 18:10 パネルディスカッション 司会:藤谷 茂樹 パネリスト:黒田 泰弘、木下 浩作、山下 進

18:10 ~ 18:15 閉会の辞 藤谷 茂樹


数値を治すということ

2013-08-20 12:28:26 | 集中治療

わたしたちが患者を治療するために介入する目的は何でしょうか?

患者をICUからできるだけ早く退室させ、肉体的、精神的、社会生活機能的に元の状態に(できるだけ近い形で)戻すことが第一の目標と言ってもよいでしょう。

ちなみに、ICU滞在中、患者の生理学的、肉体的、精神的な負担をできるだけ軽減する、ことは二次的な目標になります。もし、リハビリ、鎮静などで患者が苦しそうに見えても、早く元の生活に戻れる可能性が高まるなら、それを優先すべきでしょう。つまり、第一の目標は第二の目標に優先する(注1)。

わたしたちが患者を治療する際の目標は何ですか? 自分の毎日のプラクティスを振り返ってみましょう。自分自身のココロの平静が保たれる範囲に数値を修正すること、が目標になっていませんか?

たとえば高二酸化炭素血症を例にとって考えてみましょう。

なぜ高二酸化炭素血症をきたしているのですか? 代謝性アルカローシスは? 死腔換気は? 二酸化炭素産生増加は?

高二酸化炭素血症の弊害は? 意識障害、脳血管拡張、肺動脈圧上昇、頻脈、肺胞酸素分圧低下などですよね。これらの高二酸化炭素血症による弊害とその二次的な影響がある(意識障害→気道確保の必要性、脳血管拡張→頭蓋内圧上昇、肺動脈圧上昇→右心不全、頻脈→冠虚血、肺胞酸素分圧低下→低酸素血症)、または起こる可能性が高いから治療するのですよね。

高二酸化炭素血症を治療する目的は何ですか? 繰り返しますが、PaCO2を自分自身のココロの平静が保たれる範囲(60 mmHg以下? 70 mmHg以下? 80 mmHg以下?)に収めることが目標になっていませんか?

どのように治療しますか? 自発呼吸→調節呼吸にする? 換気量を増やす? 鎮静を減らす?

PaCO2が実際に低下しましたか? 分時換気量(注2)が低下しましたか?

高二酸化炭素血症を治療することによって患者が被る利益は何ですか? 治療後に上記の弊害(やその可能性)が軽減したことを確認しましたか? 

高二酸化炭素血症を治療することによって患者が被る不利益は何ですか? 自発呼吸→調節呼吸にする、換気量を増やす、鎮静を減らすことによって何か弊害は生じませんでしたか? Posthypercapnic alkalosis(注3)→血圧低下は? 鎮静減量による生理学的変化、精神的苦痛は?

高二酸化炭素血症の代わりにありとあらゆるワードが入るはずです。パッと思いつくだけでも、低酸素血症、血圧、脈拍、アシドーシス、電解質異常、肝機能異常、凝固異常、低アルブミン血症、貧血、血小板減少、数限りなく出てきます。

みなさんどうされていますか?

 

 


注1:第二の目標が優先する場合もあります。第一の目標の希望が薄い場合、つまり緩和的な治療方針を取る場合です。

注2:分時換気量はPaCO2のトレンドを予測する最も簡単かつ確実なパラメーターです。ICUにおいて、ETCO2によるPaCO2の予測性能はよくありません(野本 功一, 讃井 將満. ETCO2不要説:ETCO2モニターはICUに標準装備すべきか? Intensivist 2011 第2号)。

注3:高二酸化炭素後アルカローシス。代償が効いている慢性の呼吸性アシドーシスを人工呼吸によって急激に補正したときに顕在化する代謝性アルカローシスで中枢神経系の合併症や死亡などの重篤な合併症をきたすことがある。

 

キミの将来を思って

2013-08-10 17:16:40 | 麻酔

「キミの将来を思って」

という言葉には思惑が入りやすい、と常々思ってきました。

少なくともこの言葉を吐く個人の思惑が入りますよね。どんなに真剣に、自分の都合を考えずにその人のことだけを考えた結果言う場合ですら、その思惑からは逃れられません。聞く方は注意が必要です。

思惑には個人レベルだけでなく、地域の、病院の、医局の、など各レベルのものが入り込みやすい。

だんだん年取ってきて、若者に対してこの言葉を吐く機会が増えるようになりました。言わないと動かないせっかくの素晴らしい能力が開花しないままの人、ここを直せばもっと得するのにと思う人が結構いるからです。自身の歴史を振り返っても、ガツンと言われて始めて動き出すこと、修正することが幾度となくありました。「ボクの将来を思って」言ってくださって本当に感謝しています。

自分が言うときには、できるだけ“思惑”が入らないように、純粋に「キミの将来を思った」結果を話すようにしていますが、自信がありません。医局というのはいろいろな指向を持った人の集合体なので、メンバー全員の願いを100%叶えることも難しいからです。どうしても我慢してもらうこと、すなわち医局レベルの思惑が生じます。

我慢を最小限に、かつ我慢してもらうからには何か必ず個人が成長する収穫があるように心がける、ことで対応しようと考えています。