Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

リサーチカンファレンスを始めよう

2012-04-27 22:54:06 | 集中治療

私の職場では週一回リサーチカンファレンスを開催しています。

内容は

1. 新しく思い付いた研究テーマを自由に提出してもらって、モノになりそうか自由に話し合う。

2. ある程度固まった研究計画について、研究の妥当性を評価し、最終的な仕上がりを予想しながら、実際の労力などについて議論して実行可能性などを練り、始めるかやめるか、始めるならどう始めるか話し合う。

3. 進行中の研究の進行状況の報告。

4. 学会発表、論文化の状況についての報告。

に別れます。

研究と言っても、単施設から多施設研究、デザインもアンケート調査からRCTまで、参加する職種もさまざまです。思ったことはまとまっていなくてもまず口に出すことを是とする会なので、激しい議論の応酬になることもしばしばあります。

内輪の会なので、それがいい効果を生むと信じています。誰かが何か言う、それを批判する、でも批判するだけでは解決にはならないので、解決策を考える。という風に、誰かの何かの発言がきっかけ、ヒントになり最終的に新しいアイデア、打開策が生まれる。

一人、二人で練りに練った研究も、よりたくさんの目に触れると、必ず気づかされる、良い意見が貰える(みなさん普段から雑誌に論文投稿して、そんなプロセスを踏んでいますよね。遥かにプリミティブでインフォーマルなものですが)。

それに、何よりもカンファレンスがペースメーカー(=足かせ)になってくれ、さぼりがちな私たちを激励してくれます。

本日は三人の専門看護師が「お、これは面白い」という研究計画を発表してくれました。これがけっこういいんです。

みなさんリサーチカンファやっていますか?

ちなみに、もしアイデアがあるが、どこから手をつけたらいいかわからないという人は、JSEPTIC-CTG(日本集中治療教育研究会 臨床研究グループ)にご連絡ください。

http://www.jseptic.com/rinsho/

http://www.jseptic.com/rinsho/theme.php

まったく同様な話し合いをJSEPTIC-CTGでも、年4回のセミナーと同じ日、同じ場所で、その午前中にやっています。多施設研究を前提としたサポートばかりでなく、もっと小さい単施設研究の支援もしています(こっそり相談していただいくのも大歓迎です)。

何かを変えたい、そのために誰かを説得したい、そのためにはデータを示しながら説得する方が説得力が増す(オラの治療が一番的な主張も論拠に説得力がないと聞いている方がつらくなりますよね、なんだかどこかの政治家、宗教家の主張みたいで)。データは説得力があるほど良い、聞いている方が身近に感じられるほどよい。データがなければ自分たちで出す。いくら正しい方法論でやってもポジティブなデータが出なければ素直にその主張を取り下げる。道は厳しいです。

その上、いくら素晴らしいデータで説得しても動かない人、聞く耳を持たない人がいることはみなさんもご経験済みですね。データは説得のための一道具でしかない。良いようにも悪いようにも利用されてしまう。

ヒトの思惑はときにとても重く動かし難いものですが、1mmも動かないものでもありません。10人いれば1人、2人と賛同者が現れます。動かそうと頑張っているとあるポイントから急に動き始め、加速度がつくことがあります。

せっかくのGWなので前向きな結語にしておきます、一応。


Intensivist Vol.4 No.2 特集「術後管理」刊行です

2012-04-11 21:54:07 | 集中治療

Intensivist 特集「術後管理」本日刊行です。

今回は、ICUにおける術後管理を行うにあたっての必要な知識を、できるだけ根拠に基づいて解説しました。術後管理の各論、つまり各外科固有の問題を抜きにした総論、すなわちSICUに共通の問題をいろいろな側面から切った特集と言えるでしょうか。

いつもながら著者のみなさまにはご苦労をおかけしました。こんなに厚くなるとは思っていなかったのですが、240ページにせまるボリューム(史上最大厚?)です。

もちろん厚さを自慢しても仕方ありません(むしろ問題かも)。実際、Intensivistは厚い、通読が大変という声も多く聞かれるようになり、私たち編集委員の間では悩みのタネでした。もちろん、論旨に必要なことは分量の多少のオーバーを気にせず書いて下さい、と著者のみなさまにお願いしているのは我々ですし、原稿は著者の方々の血と汗の結晶ですし、実際、読ませていだくと実のある内容が詰まっていて勉強になることばかり(感動することさえあります)でどこも削れないことが多く、厚くなるのは言わば確信犯なわけですが。

まず小さな工夫として、私たちとしては、読みやすくするちょっとした工夫、内容が頭に残りやすくする工夫を始めました。ご評価くださればさいわいです。今後もさらに改善していきたいと思います。

もう一つは、お手に取った読者の方々への読み方の一例のご提案です。15分程度(もちろん1時間がいい、という人もいるでしょう)で決して立ち止まらず、ざーっと全体をパラパラ眺めて(日本語は漢字がちりばめられていて目にどんどん飛び込みやすいですよね)、その上で興味のあるトピックだけ2~3個ピックアップして読むだけでもいいのではないでしょうか。厚いですから、全部を完璧に読もうとするとアタマがスグ拒絶しますし(当直室のベッドの友、本棚の友になりがちです)、結果として疎遠になって、実は自分が知りたいところにたどりつかなかったという事態にもなりかねません。

全部を身につけようとは決しておもわず、雑誌は雑誌、あくまで読み物、テキトー(失礼! テキセツ)に読んでアタマの中に、もやっとしたイメージを残しておけばいいのではないでしょうか(そもそもIntensivistは宿題ではない、と割り切った方が精神衛生上もベター!)。そして、たとえば朝の回診のときに、「ああ、この関連事項はIntensivistのあそこらへんに書いてあった」とふと回路がつながったら、いきなり知ったかぶりして説明を始めつつ、「ああそういえばIntensivistに書いてあったですよね、ちょっと取ってきます」と面倒くさがらずにICUの本棚に走って取りにいき(あるいは◯◯くん取ってきてと言って取りに走らせ)、見ながらだれか他の人(お気に入りのドクター、ナース、ME、薬剤師、理学療法士?)に説明をする、のがおそらく一番ラクチンな“Intensivistの身につけ方”かもしれません。押しつけレクチャーを何回か繰り返すうちにIntensivistを見ずとも“それなりのウンチク”が語れるようになるでしょう。

実際、アタマの中に残るのは、じっくり読んだ50ページの教科書より、わずか2分で斜め読みした数ページの雑誌の一部ということも経験しませんか。

もちろん、本来の到達目標レベルは元文献に当たり、「その根拠はNEJM2011に◯◯らが発表した.....では、◯◯という治療は生存率◯◯%云々」などの一発で相手をノックアウトできるウンチクを述べるのが理想です。ちなみに、口が勝負の欧米ではこういう語り方をする人たちは多いですが、それも自然な繰り返しトレーニングの賜物ではないかなと想像しています。

Intensivist 特集「術後管理」、どうぞお気軽にお楽しみ下さい。興味のある人にとっては目からウロコの知識がたくさんあって、本当に面白いと思うはずです。

以下コンテンツ。

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INTENSIVIST vol.4 no.2
【特集】術後管理


1. はじめに:術後患者がICUに入室することの意義
  内野 滋彦 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

2. 術前の心筋虚血評価
 Part 1:評価と予防法
  平岡 栄治 神戸大学医学部附属病院 総合内科
 Part 2:心臓負荷試験の意義
  平岡 栄治

【コラム】周術期の脳梗塞:術前リスク評価
  平岡 栄治

3. 術後患者に対するgoal-directed therapy:
 GDTに明日はあるのか
  岩井 健一 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

4. 周術期心筋虚血の診断と治療:
 「神頼み」の薬物投与ではなく,病態生理に基づいた管理を
  山口 大介 国立がん研究センター中央病院 麻酔科・集中治療科

5. 術後心房細動
  塩塚 潤二 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部

6. 術後呼吸不全の予防と治療
  下薗 崇宏 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科・集中治療部

7. 術後患者に対する静脈血栓塞栓症の予防:
 ICU入室では全例でまずリスクアセスメントを
  松島 一英 Penn State College of Medicine 外科

【コラム】術後肺塞栓を疑ったら:
 アンテナを張りめぐらし,早期の診断・治療に結びつける
  鈴木 龍児 聖マリアンナ医科大学 救急医学
  藤谷 茂樹 東京ベイ・浦安市川医療センター/聖マリアンナ医科大学 救急医学

8. 術後出血の予防・治療:出血をきたす病態の解析が重要
  松本 雅則 奈良県立医科大学 輸血部

【コラム】虚血性心疾患における抗血小板療法:
 日本人におけるデータも含めた多面的な検討を
  香取 信之 慶應義塾大学医学部 麻酔学教室

【コラム】ガイドラインにみる周術期抗凝固療法:
 未分画ヘパリン,ワルファリンの使い方に慣れる
  松尾 耕一 みさと健和病院 集中治療部

【コラム】周術期未分画ヘパリン使用上のピットフォール
  阿部 建彦・讃井 將満 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

9. 術後鎮痛
 Part 1:ICUにおける鎮痛の意義とその評価
  滝本 浩平 大阪大学医学部附属病院 集中治療部
 Part 2:薬物各論と鎮痛方法
  滝本 浩平

【コラム】術後の発熱は感染と関連するか:
 術後体温測定を考えるにあたって
  細川 康二 京都府立与謝の海病院 麻酔科

【コラム】ステロイドカバーは必要か?
  志賀 卓弥 東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 麻酔科学・周術期医学分野

10. 肥満患者の術後管理:
 生理的変化と合併疾患,アウトカム,術後管理のポイントとその実際
  山口剛・関洋介 四谷メディカルキューブ 減量外科
  白石 としえ 四谷メディカルキューブ 麻酔科

【コラム】心臓手術後の管理は誰がやる?
 (1)ICUケア,それはもちろん心臓外科医がすべきである
  廣瀬 仁 Thomas Jefferson University, Division of Cardiothoracic Surgery, Department of Surgery
 (2)周術期管理は最初から最後まで麻酔科医に任せるべし
  松崎 孝 岡山大学病院 麻酔科蘇生科 集中治療部
  森松 博史 岡山大学病院 麻酔科蘇生科 周術期管理センター
 (3)マンパワーの効率面からも,集中治療医チームにお任せください
  後藤 幸子 大阪大学医学部附属病院 集中治療部

11. 「特集 術後管理」解説:SICUとは何か
  讃井 將満 

【連載】
■Lefor’s Corner
Nutritional Management of the Critically Ill Patient:
 Part II. Enteral Nutrition
  Atsushi Shimizu・Alan T. Lefor Department of Surgery, Jichi Medical University

■集中治療室目安箱:ナース/ME,私の言い分
 第13回:集中治療専門薬剤師を生む実践的教育システム
  前田 幹広 聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部

■ICUと皮膚病変
 第5回:血管拡張
  神人 正寿 熊本大学 皮膚科・形成再建科

■集中治療に関する最新厳選20論文
  柳井 真知 Division of Infectious Diseases, Veterans Affairs Greater Los Angeles Healthcare System
  藤谷 茂樹 東京ベイ・浦安市川医療センター/聖マリアンナ医科大学 救急医学

■日本集中治療教育研究会(JSEPTIC)
 Fundamental Disaster Managementコースの開催
  児玉 貴光,安宅 一晃,藤谷 茂樹,
  室野井 智博 日光市立湯西川診療所・自治医科大学 救命救急センター

■JSEPTIC簡単アンケート
 第4回:気管切開,ICUとは,終末期医療
  内野 滋彦


麻酔のEラーニングを作りました

2012-04-04 18:14:07 | 麻酔

メディカ出版(http://www.medica.co.jp/)から麻酔看護のEラーニング(動画配信形式の講義)が出ました。

http://www.medica.co.jp/eschool/view?id=177

麻酔のほぼすべての領域に関して、なぜそういう判断をするのか、実際にどう動けばよいかわかるように解説しました。麻酔看護に関わる看護師ばかりでなく、実は麻酔初級者のレジデントには最適と思います。

少々高額ですが、全部で20回の講義、11時間30分ですからご容赦いただければと思います。数人でお金を出し合って購入したり、施設でご購入されるといいのではないでしょうか。

最初から全部視聴し、完璧に理解しようとすると挫折するかもしれません。気になるところ、知りたいところ、自分が弱いと思うところからはじめればいいと思います。テストもついていますので理解度の確認もできますし。

最後になりましたが、ビデオ撮影ならびに問題作成に協力いただいた飯塚悠祐先生、竹内広幸先生、有井貴子先生、ならびに辛抱強くおつきあい下さった編集部の方々、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。