30ページ以下で、エージェンシー問題について言及がなされ、企業の法ルールの立法・解釈については、この問題について十分に意識されなければならないとされています。
52ページ以下では、ステークホルダー間の利益衝突の際の優先順位を決定する法ルール(調整原理)として、経営者の経営決定の指針となるのは株主利益最大化原則であるとされています。もとより、これは絶対的な原則ではなく、他の法令の要請がある場合には、経営者は当該法令を遵守する義務があることが指摘されており(355条)、この法令遵守義務は、株主利益最大化原則の例外と位置づけられています。
91ページ以下では、経営判断の原則について詳述されています。
まず、株主は有限責任の原則からハイリスク・ハイリターンの経営を望むが、経営者は、リスク回避傾向があるとの認識を示された上、この傾向を改善するものとして、経営判断の原則を位置づけています。コンパクトな基本書において経営判断の原則の積極的価値を明示している点は素晴らしいことです。また、この観点から、アパマン代表訴訟判決を高く評価されておられます。落合先生の教えに従い、じっくり検討したいと思います(106ページ)。
125ページにおいて、監査役会・監査役による違法性監査の限界が指摘され、制度自体に問題があるとの指摘がなされています。立法論としては、業務執行者のモニタリングは、独立取締役により構成される独立取締役会(仮称)に委ね、監査役については、その権限を会計監査に限定し、現在監査役となっている方の一部は、内部統制体制の主要メンバー又は内部監査人に移行してもらうべきと思います。
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