オリンパス事件に関しては、「飛ばし」と「MAの高額手数料」の二つの問題がある。
このうち、「飛ばし」は巧妙であったため、発見は困難ともいえる。この点、大杉教授は、「「飛ばし」については、監査法人がオリンパスが口座を開設していた外国銀行への照会(預金への担保権設定の有無の確認)をもっと徹底して行っていれば発見できた可能性があるが、それをしなかった監査法人に非があったとは断言できない。粉飾が巧妙だったともいえる」と述べておられる。
これに対して、MAの高額手数料は外形上不自然さが明らかであり、問題とされない方が不思議といえる。この点、大杉教授は、「M&Aを使った損失の処理は、調査報告書によると、手数料の額が高すぎるのではないかと不審に思った監査法人がこの点を監査役に連絡しているが、監査役会は外部の専門家に依頼して金額が妥当である旨の報告書を作成してもらったため、監査法人は問題をこれ以上掘り下げることができなかったという」と述べておられる。この「外部の専門家」が誰かも気になるが、報告書があるからといって、監査法人が問題追及を断念して良いとは思えないのだが、内容が極めて説得的であったのであろうか?中身をみてみたいものだ。
そこで、調査報告書の完全版を読んでみた。
http://www.olympus.co.jp/jp/info/2011b/if111206corpj_4.pdf
この151ページ以下において問題の報告書(2009年報告書)について検討されている。
2009年報告書は2009年委員会により作成されたものであり、同委員会は、弁護士、会計士、大学教授の3名から構成されている。報告書の結論は、MAに関しては、違法、不正又は善管注意義務違反はないとの結論づけているが、そこには重大な前提条件が付されている。
これを列挙すると以下のとおり。
① 事実関係の正確性及び証拠評価等について何らの意見を表明する立場にない
② 調査期間が極めて限定されていた(2009年5月11日から同月17日まで)
③ ヒアリング担当者も極めて限定されていた
さらに留保事項として、「より広い範囲で開示資料の検討やヒアリングを実施し、あるいは十分な時間をかけて開示資料の検討や非アリンヌーを実施していれば発見できたであろう事項が八卦インできていない可能性が十分にある」と記載されている。
この前提条件と留保事項を見る限り、2009年委員会の結論が正しい保証は全くなく、これを見た監査法人が問題追及を断念することは監査法人としての義務違反であり、「より広い範囲で開示資料の検討やヒアリングを実施し」た上での報告書の提出を求めるべきであったのではないか。
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