goo blog サービス終了のお知らせ 

知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

礼金返還認容判決

2011-07-26 12:00:06 | 流動化・証券化

おそらく全国初の礼金支払条項を消費者契約法10条により無効とする判決の抜粋です。当職が被告です。

「(2)ところで、賃貸借契約における更新料の性質は、主に、賃貸人による更新拒絶権の放棄の対価や契約期間の定めに基づく期間満了までの賃借人の地位の安定という利益の対価にあると認められるのが相当であるところ、借地借家法26条、30条が法定更新に何らの負担も伴わないことを前提としていることに照らしても、当事者間に法定更新の場合にも更新料の支払を要する旨の合意が存しない限り、賃借人は、法定更新に伴う更新料の支払義務を負わないと解するのが相当である。

(3)以上によれば、本件賃貸借契約の法定更新に際して、被告は原告に対し、更新料の支払い義務を負わないものと認められる。

 もっとも、後記争点(2)における認定説示のとおり、本件賃貸借契約における更新料支払条項自体が向こうとなるものではないから、被告が過去に更新契約の締結に伴って支払った更新料は原告の不当利得とならないというべきところ、前記争いのない事実等及び前記認定説示によれば、本件賃貸借契約における実質賃料額は、原告が賃貸の対価として得る経済的利益の総体であり、支払賃料額に更新料の運用益及び償却額等を加えたものをいうから、法定更新により被告の更新料支払義務がなくなり原告が更新料を得られなくなった場合、これによって支払賃料が不相当に低額となったと認められれば、実質賃料の不足を補うためにその減額分に相当する支払賃料の増額が認められる余地があると解するのが相当というべきである。

2 争点(2)について

(1)  弁論の全趣旨によれば、原告は消費者契約法2条2項の事業者に、被告は同条1項の消費者にそれぞれ該当するから、本件賃貸借契約は、同条3項の消費者契約に該当することが認められている。

(2)  礼金支払条項について

前記の争いのない事実等及び弁論の全趣旨によれば、本件賃貸借契約において、被告が原告に対し、礼金として33万8000円を支払う旨が合意され、これに基づいて同額の金銭が支払われたことを認められるが、弁論の全趣旨によれば、本件賃貸借契約における礼金支払条項は、契約締結に対する謝礼金を原告に贈与することを義務づけるもので、被告は礼金の支払いによって何らの対価も取得しないことが認められるから、かかる金銭の贈与を契約締結の条件とする旨の礼金支払条項は、本件賃貸借契約の成立において、民法による場合に比べて被告の義務を一方的に荷重するものと認めるのが相当である。

 また、前記礼金支払条項は、本件賃貸借契約の締結にあたって賃貸人たる原告から金額を定めて提示された条件であると認められるところ、被告は、同条項に合意することを拒否すれば本件建物を賃借することを断念せざるを得ず、あるいは、契約締結後の関係悪化を慮ってその免除ないし減額の交渉を強硬に主張し難い立場にあるといえるから、原告と被告との間には交渉力の格差が存したものというべきであり、前記礼金支払条項は、信義則に照らして被告に利益を一方的に害するものというべきである。

よって、本件賃貸借契約における礼金支払条項は、消費者契約法10条により無効と解するのが相当である。」

 



コメントを投稿