オリンパスのMAによる損失処理事件について、監査法人の追及を断念させた「専門家の報告書」なるものがあるらしい。
中身が気になるので、調査報告書の完全版を読んでみた。
http://www.olympus.co.jp/jp/info/2011b/if111206corpj_4.pdf
問題の報告書(2009年報告書)については151ページ以下にて検討されている。
2009年報告書は、弁護士、会計士、大学教授の3名からなる委員会(2009年委員会)が作成したものである。同報告書は、問題のMAについて、結論として、「違法、不正又は善管注意義務違反はない」としているが、それには重大な前提条件と留保事項が付されている。
前提条件は以下のとおり。
① 事実関係及び証拠評価等に何ら意見を述べる立場にない
② 調査期間が極めて限定されていた(5月11日から17まで!)ため、開示資料についての網羅的検討が出来ていない
③ ヒアリング対象者が極めて限定されていた
留保事項は、「より広い範囲で開示資料の検討やヒアリングを実施していれば発見できたであろう事項が発見できていない」ことである。
この前提条件と留保事項をみれば、2009年報告書の結論が依拠するに足りるものではないことは、DDや監査の経験者であれば明らかであろう。監査法人は、「より広い範囲で開示資料の検討やヒアリングを実施し」た上での報告書を求めるべきではなかったか。
調査報告書(要約版の19ページ)も、2009年報告書に対しては厳しい評価をしている。企業法務に関与する弁護士のはしくれとして、この評価をよく噛みしめる必要があると思う。
http://www.olympus.co.jp/jp/info/2011b/if111206corpj_1.pdf
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