固定式消化設備特許侵害
平成22年(ワ)第5012号
請求認容
裁判所の判断は18ページ以下。
本判決は、明細書の記載を詳細に引用した上で、「本件特許発明が解決しようとする課題は、給油取扱所における固定式消火設備の設置場所について選択の自由度を高めることにあり、これを解決するための手段が相違点2に係る構成要件Fの構成であり、これにより選択弁以降の配管取り出しを格納箱の三側方のいずれの方向からも行うことができるという作用効果を奏するという技術的意義があると認めることができる」と述べる一方、「乙1発明に係る乙1文献には、相違点2に係る上記アの課題について記載や示唆はない。被告らが引用する文献(乙2、6ないし8、12及び13)についても同様である(なお、乙6、7について、本件特許出願前の刊行物であるかどうかは不明であり、乙8は、本件特許出願後である平成21年6月に頒布されたものである。)。また、乙12、13には、「限られた空間に対して部材を斜めに配置」することが開示されている。しかし、乙12は「室内に洗濯物を干すときに使用する物干し竿」の配置に係るものであって、固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではなく、乙13は「巨大コイルを構成する10本の電線の結線部分(コネクター)」の配置に関するものであって、固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではない」と述べて、本件発明の容易想到性を肯定しました。
そして、被告らの主張に対し、「幅方向寸法が短くなった場合に、設置することのできる選択弁の数が減少する問題を解決するという課題は、本件特許発明の課題ではないし、被告らが引用する各文献にも記載や示唆はない。この点に関する被告らの主張は、本件特許発明が前提とせず、乙1発明等においても記載や示唆のない課題を独自に設定した上、本件特許発明は乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとするものであり、論理付けの前提を誤っているというほかない」と述べ、また、「仮に被告らの主張する課題を前提としたとしても、水平送出管部を奥行き方向に斜交させることによって設置できる選択弁の数が必ずしも増えないとする原告の主張を排斥することのできる証拠もない。このことからしても、本件特許発明は乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいうことはでき」ず、「本件特許発明の課題を前提として、当業者が乙1文献に接したとしても、これを解決するための構成としての相違点2に係る構成要件Fについて記載や示唆は見当たら」ず、また、「限られた部材を斜めに配置することにより長い部材を収納することは様々な分野で一般に考えられてきたことであるとする主張も、前同様に、前提となる課題の設定を誤るものであり、採用することができない」
本判決は、さらに、寄与度に関し、「被告製品が販売されるに当たり、本件特許発明に係る技術的構成が広告宣伝されるなどしてはいなかったことが認められる。また、上記のとおり被告製品の販売台数が少ないことや販売期間も短期間にとどまることが認められ、これら一切の事情を考慮すれば、本件特許発明が被告製品の販売に寄与した程度は、4割の限度で認めるのが相当」と判断しました。
特許権者勝訴の事例として参考になるものと思われます。
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