改正特許法においては、通常実施者は、登録なしに、その発生後の特許権の譲受人等に対して効力を生じる。この場合におけて、譲渡人、譲受人、実施権者の法律関係の帰趨については改正特許法には規定がなく、解釈に委ねられている。
この点、大別すると、譲渡人の契約上の地位が譲受人に移転するという見解と移転しないという見解があり得る。筆者は、後者を支持する。以下、後者の見解に立った場合の法律関係について検討する。
1 ライセンス料債権の帰趨
ライセンス料債権は、ライセンス契約に基づき生じるものであるから、譲渡人に帰属し続ける。つまり、特許権の帰属とライセンス料債権の帰属が分離することになるから、特許権譲渡契約に伴い、別途、ライセンス料債権も譲渡しておくべきである。
2 譲受人が実施権者の存在を認識せずに特許権を譲り受けた場合
譲受人は譲渡人に対して民法に基づく瑕疵担保請求(566条1項類推)が可能であるが、特許権譲渡契約において手当てしておくべきである。ライセンス料支払債務が不履行の場合には、譲渡人が請求することになり、譲渡人が請求しない場合には、債権者代位権(民法423条)の行使等により調整がなされる。譲渡人は受領したライセンス料を譲受人に引渡す義務(明文規定がない場合には信義則上の義務)があり、譲受人はこの義務の履行を譲渡人に求めることになる。
3 競売により特許権を買い受けた場合
買受人は、民法568条に従い、債務者(旧特許権者)に対して、代金の減額請求等が可能である(民法568条)。なお、上記2において、民法570条の適用があると解する場合、競売においては瑕疵担保責任の追求はできない(民法570条但書き)
4 実施権者が破産した場合であって、管財人が実施権の存在を認識せず破産手続きが終了した場合
この場合、破産手続き終了後に残余財産が発見された場合の一般的処理と同様に、特別清算手続にて対応することになる。
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