近時、標記の件につき、最高裁判決がなされました。
多数意見の骨子は、以下のとおり。
① 株式買取請求権の趣旨
反対株主に対して退出の機会を与えるとともに、退出を選択した株主には、吸収合併等がなされなかった場合と経済的に同等の状況を確保し、さらに、吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生ずる場合には、株主にこれを適切に配分すること。
② 判断手法
価格の決定は、裁判所の合理的な裁量に委ねられる。
③ 公正な価格
吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合には、「ナカリセバ価格」を算定し、これを「公正な価格」とする。
④ 基準日
公正な価格の基準日(いつの時点の価格を算定するか)は、株式買取請求権行使時。
⑤ 参照価格(基礎資料)
株式が上場されている場合には、株式の市場価格をベースに参照価格を算定する。参照価格の算定の際には、吸収合併等が市場株価にもたらす影響を排除すべきであるから、吸収合併等の公表前の市場株価を参照価格とする。吸収合併等の公表前の市場株価について、公表日の前日の終値とするか、一定期間の平均値(出来高平均)とするかは、株主に係る事情を踏まえて合理的裁量により判断。これは、吸収合併合併以外の要因による価格変動を排除するための参照株価に補正を加えることにも同様に当てはまる。
吸収合併等により企業価値が増加も毀損もしない場合には、その市場株価は、吸収合併等の影響を受けないとみることができるから、基準日の前日の株価、または、基準日以前の一定期間の平均値を参照価格とすることも、事案を踏まえた合理的な裁量の範囲内。
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