知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

会社法制の見直しに関する中間試案(案)に対する検討(その1)

2011-12-13 10:02:55 | 会社法

会社法制の見直しに関する中間試案(案)に対する検討(その1) 

1 構成

会社法制の見直しに関する中間試案(案)(以下「本試案(案)」)は、①企業統治の在り方(コーポレートガバナンス)と②親子会社に関する規律の2部構成である。 

2 企業統治の在り方

2-1 テーマ

以下のテーマが取り上げられている。

① 取締役会の監督機能

② 監査役の監査機能

③ 資金調達の場面における企業統治の在り方

企業統治の核心は、株主の拠出した資金を元手に業務を執行する取締役の不適切な行動を防止することにあり、そのための有力な手段が、取締役会による監督と鑑査役による監査であるから、①及び②がテーマとして取り上げられている点は理解できる。そして、③は、資金調達の手段である募集株式の発行(199条)が会社の支配権の変動を伴う一方、新株発行が取締役会決議により可能であることから、取締役による会社支配をもらたす危険があるところ、現行法の規律は十分ではないとの問題意識に基づくものと理解できる。

2-2 取締役会の監督機能

社外取締役の選任の義務付けについて以下の3つの提案がなされている。

【A案】 監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるも

のに限る。)において,1人以上の社外取締役の選任を義務付け

るものとする。

【B案】 金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書

を提出しなければならない株式会社において,1人以上の社外

取締役の選任を義務付けるものとする。

【C案】 現行法の規律を見直さないものとする。

しかし、社外取締役の選任の義務づけが、問題の解決策とは思えない。なぜなら、社外取締役の要件にも関係するが、取締役会の監督機能の充実のためには、高度の規範意識を持って一般株主の利益を代表する者(以下「独立取締役」)が取締役会の一員となることが重要であるところ、現行法の社外取締役の要件を前提とする限り、社外取締役が「高度の規範意識を持って一般株主の利益を代表する者」であることは担保されていないからである。

ここで、社外取締役の要件をみると、以下の提案がなされている。

 【A案】① 社外取締役の要件(会社法第2条第15号)を次のとおり見直すものとする。

社外取締役の要件に,株式会社の親会社の取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でないものであることを追加するものとする。

社外取締役の要件に,株式会社の取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人の配偶者又は2親等内の血族若しくは姻族でないものであることを追加するものとする。

しかし、この要件では、依然として、社外取締役が「高度の規範意識を持って一般株主の利益を代表する者」であることは担保されていないから、社外取締役の選任の義務づけという提案は実効性に乏しいといわざるを得ない。

これに対して、社外取締役に代えて、一定の要件を満たす会社に対して、独立取締役の選任を義務づける代案が考えられる。

しかし、取締役会の監督機能を充実させる必要性は、各社の実情に応じて様々であり、かかる充実化には相応のコストも要することを勘案すれば、「義務づけ」という規律は適切とはいえない。

規律としては、全ての会社において、独立取締役を選任することの選択を可能とし、一定の要件を充足する会社がこれを選択しない場合には、株主総会における説明を義務づけることが適切ではないだろうか。「一定の要件」としては、法が後見的に保護する必要性のある一般株主が類型的に存在する会社という意味で、「金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社」で良いと考える。

 

以上


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