まずは、事案の特殊性に注目。
賃貸借契約の内容が「更新料」の性質の曖昧さを意識したものですね。①法定更新の場合も更新料を支払う、②「入居期間」にかかわりなく更新料の返還を認めない等。
その上で、更新料の性質について、具体的事実関係に即して判断すべきとしつつ、一般に、賃料の補充ないし前払い、賃貸借契約を締結することの対価等の趣旨の複合的な性質を有するものと判断しました。
消費者契約法10条の適用について、更新料の支払いが義務を加重するものであることは認めた上で、それが信義則に反して消費者の利益を一方的に害するか否かについては、当該条項の性質、契約成立の経緯及び交渉力の格差等を総合考量して判断すべきとしました。
そして、最高裁は、更新料の経済的合理性を認めた上、更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払いに関する明確な合意が成立している場合に、看過し得ないほどの情報・交渉力の格差があるとはいえず、したがって、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が、賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし、不当に高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するとはいえないと判断しました。
この最高裁判例の射程範囲をどう考えるかですが、まず、更新料に関する判断ですので、礼金には及ばないといえます。また、①法定更新の場合も更新料を支払う、②「入居期間」にかかわりなく更新料の返還を認めない、という条項が挿入されていない賃貸借契約の場合には、「更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払いに関する明確な合意が成立している」とはいえず、本判決の射程範囲外であると考えます。
なお、更新料の性質について、賃料の前払いと考えるのは理解できますが、そうであれば、そのように契約書に記載し、かつ、説明するべきであり、この点で、仲介業者の責任が問われる可能性もありますので、仲介業者の方はご注意を。
また、更新料には、賃料の増額請求をしないという趣旨も含まれているように思われますし、仮にそうでないとしても、更新料が支払われている事案においては、賃料増額を許容するには慎重であるべきでしょう。
最後に、日本の不動産に海外投資家の資金を呼び込もうとするならば、日本独自の慣行である礼金・更新料を取るのではなく、正面から適正賃料を設定する方向に移行すべきであると思います。
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