世界金融危機を発生の3年前から予想した経済学者として名をあげたラグラム・ラジャン(インド出身)による金融危機の原因の的確な分析と処方箋を学べる一冊です。
サブプライム・ローン問題に端を発する世界金融危機はとどまるところを知りませんが、その原因は、結局のところ、証券化商品、デリバティブなどの新型金融商品のリスクを前線のバンカーが無視・軽視し、銀行等の経営陣が過小評価したことによるようですね(211ページなど)。その背景には、過度のリスクを取ることが目先のリターンを増やし、バンカーの報酬を上昇させる一方(178ページ、181ページなど)、経営陣が新型金融商品の仕組みを理解していなかったことにあるようです(184ページ)。そして、金融危機の度に繰り返される政府による救済措置が、この傾向を助長しています(180ページなど)。政府による救済を予定しながら、大幅な規制緩和を求めるのは誤りでしょう。もっとも、規制を強化すればそれで良いものではなく、「自由で控えめな実験」の余地は残すべき(211ページ)です。
なお、JPモルガンのダイモンの対応が賞賛されていますが(187ページ)、最近、デリバティブ取引で巨額の損失を出したことが明らかになったのは皮肉ですね。
僕の近時の関心事の職務発明制度に引きつけて考えると、過度のリスクを取った会社の給与体系が「利益を出したときにはボーナスをはずみ、損失を出したときには大きな罰を与えない」ものであることが指摘されていますが(181ページ)、全ての会社にこれを義務づけるのが日本の職務発明制度です。
フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く | |
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