前回からの続きです。
ある会合で、質疑応答の時間になって、次の質問を受けました。
指方さんは『何でも詩吟に出来る、とおっしゃったが、
日本で一番美しいといわれる文章は何か知っていますか?
またそれを詩吟に出来ますか?』ということでした。
私は日本で一番美しい文章という定義があるのか?初めて聞くことでびっくりしました。
私は「日本で一番美しい文章は知りませんが、ぜひ吟じてみたいと思います。」と答えました。
彼は暗誦していた文章を手元のメモにすらすらと書き、私に手渡されました。
それは太平記の一節でした。
その太平記の一節は、私にはどこかで何となく触れた程度のものでした。
落花の雪に踏み迷ふ、交野の春の桜狩り、
紅葉の錦を着て帰る、嵐の山の秋の暮れ、
一夜を明かすほどだにも、旅宿となれば物憂きに、
恩愛の契り浅からぬ、我が故郷の妻子をば、行末も知らず思ひ置き、
年久しくも住み馴れし、九重の帝都をば、今を限りと顧りみて、
思はぬ旅に出で給ふ、心の中ぞ哀れなる。
私は1ヵ月後の次回会合まで指方の宿題にさせて下さい、と言ってメモを頂戴しました。
この太平記の一節が、その方によれば、表題の「日本で一番美しい文章」でした。
私は、彼の思いに吟じて感動を与えることが出来ると、
私の福祉吟詠の目標でもあると、思った次第です。
以下次号に続きます。
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