昨日(2012年12月2日、朝8時過ぎに発生した、
【高速道路トンネル内天井崩落】 事故
毎日新聞の写真記事によれば、断面構造は、こんな感じ。
(基本的な構造:毎日新聞より;以下同様)
事故から一日を経過して、事故の原因が少しづつ判明してきたようですが、
私は、昨日TVで放映された概略断面図を見てすぐにピンと来ました。
(崩落の状況)
センターは金物で吊られていて、云わば【V型】に崩落していました。
「トンネル上部で吊り金具を定着している部分が腐食して抜け落ちたのだろう」
と、私は考えましたが、ほぼこれに間違いないようです。
(パネルの吊り方の概要)
この部分は、35年間交換されなかったし、点検も目視だけであったとのこと。
先月、全般的な改修工事の検討委員会が始った矢先のことだったと報道されています。
恐ろしいのは、今回崩落した100mを超える範囲の前後はもとよりトンネル全長に
亘って、崩落の危険があり、二次災害が予想されることです。
(吊り金具部分の詳細;こんな重量物がM16アンカーで定着されていた?!)
さらには全国で築後30年を超える高速道路を始め交通構造物が多数あることです。
阪神大震災の折は高速道路の手抜き工事が見つかるなど大問題を露呈しました。
東日本大震災では、それに加えて集客施設の天井崩落という問題が発覚しました。
今回の事故の予兆とも捉えることができます。
今回は、吊りボルトが抜け落ちて重量構造物が崩落したと云う悲惨な結果でしたが、
これと同じ構造のものを至急点検するのは当然として、この事象以外の危険が潜んで
いないか洞察力を働かせて追究する必要があります。【予防処置】
トンネル崩落:コンクリ劣化の可能性
毎日新聞 - 最終更新 12月03日 14時21分
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これは、高速道路だけのことではなく、交通構築物や建築構造物
特に構造体の外側が『屋外』で、雨ざらし陽ざらしのような場合は、
経年劣化で防水層も破れ、微細なクラックから雨水が浸入し、構造体の強度を著しく
低下させる可能性があります。
これでは、アンカーボルトが健全であった場合でも抜け落ちないとは限りません。
コンクリートが劣化すれば、当然アンカーボルトにも錆が発生するでしょう。
吊り金具破断の可能性は益々深まります。
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突然の崩落はなぜ
~緊急報告・中央道トンネル事故~
NHK クローズアップ現代 - 2012年12月3日(月)放送
長いので引用しません。(上のリンクから御覧ください)
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トンネル崩落:コンクリ劣化の可能性
毎日新聞 - 最終更新 12月03日 14時21分
山梨県大月市の中央自動車道上り線の笹子(ささご)トンネル崩落事故で、中日本高速道路は3日、崩落した天井板を支えているつり金具をトンネル最上部の内壁に固定しているアンカーボルトが一部で脱落していたことを明らかにし「ボルトか内壁の老朽化も原因として考えられる」と説明した。
また県警はワゴン車から5人、乗用車から3人の焼死体を収容。死者は計9人、重軽傷者2人となった。同社の設備管理に問題があった可能性が高まり、県警は大月署に捜査本部を設置、業務上過失致死傷容疑で調べを進める。
県警や消防は、巻き込まれたのはトラックを含む3台と断定し、救出作業を終えた。
中日本高速によると、トンネル最上部のコンクリートの内壁には、T字形鋼材(長さ6メートル、幅40センチ)が1枚につき16本のボルト(長さ230ミリ、直径16ミリ)で固定され、この鋼材1枚につき5本のつり金具の上端がつないであった。つり金具の下端も鋼材につながれ、この鋼材の上に左右から2枚の天井板を乗せてある構造だった。(上の詳細図・画像参照)
3日未明から実施した緊急点検で、この内壁に打ち込まれたボルトが抜け落ちていたことを確認したという。ボルトが腐食していたり、さびたりしていたという情報はなく、ボルトとの接合部分のコンクリート自体が経年劣化していた可能性もある。
一方、救出作業は夜を徹して行われ、3日午前3時25分ごろ、ワゴン車の運転席、助手席、最後部席から各1人、中間座席から2人の計5人の遺体を収容。いずれも東京都内の20代で、この車から軽傷を負って脱出した銀行員の女性(28)=神奈川県三浦市=の知人の男女とみられる。
乗用車の3人は運転席、助手席、後部席でそれぞれ確認され午前6時20分に収容した。山梨県内の60~70代の男性1人、女性2人とみて調べている。県警は近く同容疑で中日本高速を家宅捜索する方針。
【沢田勇、春増翔太、古関俊樹】
中央道トンネル崩落 後手に回った対応
毎日新聞 - 2012年12月03日(月) 東京朝刊
◇老朽化対策、先月から 「経年劣化」の指摘も--高速3社
天井板の崩落事故が発生した山梨県の中央自動車道・笹子トンネルは、供用開始から35年が経過しており、中日本高速道路など高速3社は先月、道路全般の老朽化対策について検討を始めたばかりだった。専門家からは経年劣化の可能性が指摘されるとともに、点検方法の見直しや早期の原因究明を求める声が上がった。
中日本高速道路によると、笹子トンネルは中央道の起点・高井戸インターチェンジ(東京都杉並区)から82・7キロの地点にあり、全長4784メートルで77年12月20日開通。
崩落した天井板はプレキャストコンクリート(PC)板と呼ばれ、板1枚は幅5メートル、奥行き1・2メートル、厚さ8~9センチ、重さ約1・2~1・4トン。これを左右に1枚ずつ並べ、両端はトンネルの壁に固定し、中央部分はトンネル最上部からつり金具で固定していた。
つり金具は板の奥行きと同じ1・2メートル間隔で設けられ、金具と金具の間には隔壁がある。
隔壁は天井の上の空間を左右に分け、片方はトンネル内の車の排ガスを換気機を使って排出する排気用、もう片方は外部の新鮮な空気を取り入れる送気用として利用しており、これは「横流(おうりゅう)換気方式」と呼ばれる。
このトンネルの天井が約130メートルにわたり崩壊。つり金具部分も落ちる一方、天井板の両端はトンネルに固定されたままで、V字形になった。
施工は76年8月から77年9月に大成建設と大林組の共同企業体が行い、点検は中日本高速グループの中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京(東京都新宿区)が担当していた。
同社によると、天井の点検は技術者の目視と専用のハンマーを使った打音で行われ、水門直仁・経営企画課長は「技術者はたたいた時の反発や音で劣化の有無についてある程度目安はつく。一番信頼性が高い方法で、他のトンネルや業者でも同様だ」と説明した。
一方、近年は天井がなく、ジェットファンや車の流れでトンネルの出入り口で換気する「縦流(じゅうりゅう)換気方式」が主流とされる。横流方式には構造物が多くコストがかかる一方、縦流方式は安価なため普及したという。
中日本高速は「トンネルの更新計画はなかったが、経済性や、天井板があると圧迫感があるので縦流方式の方が好ましいと考えていた。でも工事には長期間の通行止めが必要なので、簡単ではない」と説明した。
【池田知広、神足俊輔】
◇建設30年以上、高速道36%
中日本、東日本、西日本の高速3社の管理する全国の高速道路は総延長(約8700キロ)の36%にあたる3200キロの区間が建設から30年以上たつ。利用台数は1日当たり約700万台、大型車の通行台数も約200万台に上り、老朽化や交通量の多さから橋脚の鉄筋の腐食など急速に傷みが進み、補修が追いついていない状況だ。
このため高速3社は先月、土木工学などの専門家による技術検討委員会を発足。道路の大規模な修繕など老朽化対策について検討を始めたばかり。ただし、具体的な検討は「これから入るところだった」(中日本の吉川良一保全・サービス事業本部長)という。
また、笹子トンネルは70年代、会計検査院が高速3社の前身で当時の日本道路公団に対し、強度不足を指摘していたという。吉川本部長は「指摘は承知している。土が軟弱で建設に苦労したトンネルだったが、指摘を受けて補強した。今回の原因と直接結びつくとは考えていない」と述べた。
建設省(現国土交通省)は74年、トンネルの建設や維持管理の基準として「道路トンネル技術基準」を策定。日本道路協会が93年にまとめた基準の指針「道路トンネル維持管理便覧」は、高速道トンネルの定期点検頻度を2~5年に1回程度とし、天井板については変形や破損、漏水がないか点検するなどの基準を示す。実際の点検は各社がそれぞれ策定した要領に従って実施。国交省は各社に、天井板の材質や構造について耐久性や維持管理可能な設計を求めているが、具体的な指導や監督はない。
【桐野耕一、樋岡徹也、石山絵歩】
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◇天井板が設置されているトンネル
※中日本高速道路の発表による
<東日本高速道路>
(1)圏央道 菅生トンネル(東京都)
<中日本高速道路>
(2)中央道 笹子トンネル(山梨県)
(3)中央道 恵那山トンネル(長野-岐阜県)
(4)東名高速 都夫良野トンネル(神奈川県)
(5)新東名高速 富士川トンネル(静岡県)
<西日本高速道路>
(6)第2京阪道 京田辺トンネル(京都府)
(7)第2京阪道 長尾東トンネル(大阪府)
(8)第2京阪道 長尾台トンネル(同)
(9)山陽道 志和トンネル(広島県)
(10)山陽道 安芸トンネル(同)
(11)山陽道 武田山トンネル(同)
(12)国道2号 関門トンネル(山口-福岡県)
以上、毎日新聞(2012/12/3)の引用
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