宝塚雪組公演
Musical Fantastique
『堕天使の涙』
レビュー・アラベスク
『タランテラ!』
を 9月24日午前11時からの昼の部で見た。
貸切公演の残券を、一般売り出しで、並ぶことなく、S席7500円でGET!
この公演は現在の雪組男役TOPの
朝海ひかる と 娘役TOPの
舞風りら が同時に退団するのを控えた卒業公演でもある。
最後の舞台だと言うのに、題材は明るくない。
Musical Fantastique
『堕天使の涙』
時代は20世紀初頭、ところはパリ。
1905年ロシアの「血の日曜日事件」も伏線として会話に出てくる。
主人公堕天使ルシファーはロシア人バレエダンサーとして登場する。
『堕天使の涙』という訳だから天使・エンジェルの楽しい話ではなく、神を冒涜した罪で追放された元・天使(これを堕天使というらしい)が人間界で人間の醜さに触れるという筋書きである。
その人間の醜さとは、
エトワールへの地位をパトロンの力で買おうとして、ピアニストの恋人
ルグリ(音月 桂)を振る、バレリーナ・
イヴェット(若手生徒・大月さゆ を大抜擢・新人公演では主役リリスを演ずる予定)。
弟子
マルセル(彩那 音)に新曲を書かせ、自分の名で発表する スランプに陥った座付き作曲家・
エドモンド(壮 一帆)。
自らのバレリーナの地位を守るため、エトワールを目前にした子どもたち
ジャン・ポ-ルと
リリスを犠牲にする母親
ルブラン(五峰亜季)
これを冷ややかに見つめる
堕天使ルシファー(朝海ひかる)
という、とんでもなく
暗い話。
ジャン・ポ-ル(水 夏希)
と
リリス(舞風りら)
の創作バレエ
「光のパ・ド・ドゥ」だけが明るい話題。
しかし、これを踊るのは、病で
昇天するリリスと堕天使ルシファーである。
TOPの二人が恋人役ではなく、全く関係のない役柄なので、最後の最後にこれを持ってきてTOPのデュエットダンスを成り立たせている。
さて、あらすじと配役紹介のようになってしまったが、ダンスの名手・朝海ひかるの退団公演だけに、主役が一人ないし準TOPと数人で踊る
ダンスシーンに相当力を入れた演出 になっている。
むしろ、ダンスが中心のドラマと言える。
普通第一部はドラマ中心で、ダンスは付録みたいなものだが、これはダンスがメインだと言える。
中でも、バレエがテーマの一つであるので、朝海ひかるのバレエ的ダンスは光っている。
ゆっくりと脚を上げ、頭より上に上げてゆくという 難しい動作も難なくこなしている。
勢いをつけて反動であげるのは、バレエをやっている人なら誰でもできるが、ゆっくりと上げるのは、相当な技と筋力が要る。
細身の朝海ひかるが滑らかにこなすのは清々しい。
レビュー・アラベスク
『タランテラ!』
第二部のレビューのほうは、毒蜘蛛『タランテラ!』 がテーマであり、これも明るくはない。
こちらもダンスシーンが続き、
朝海ひかるが殆ど出ずっぱりで踊っている。
歌のほうは
美穂圭子や五峰亜季、矢代 鴻などベテラン陣に譲り、朝海ひかるはご愛嬌で歌うだけ。
そのベテラン陣の歌唱力といったらすごい。
歌に定評のある美穂圭子は、低音から高音まで滑らかにこなし、繊細な表情からどぎついジプシー調まで自由自在。いまや雪組最高の歌手であり、最上級生クラスにもなった。
専科の
矢代 鴻は低音に迫力のある越路吹雪的キャラクター。シャンソンなどを歌ったら最高。このお二人とも3・4回歌の出番があり、おいしいところを熱唱していた。
五峰亜季、愛 耀子、灯 奈美なども歌い繋いでゆき、うまいところを見せていた。
宝塚 特に雪組(
杜けあき、一路真輝、轟悠、香寿たつきなどを輩出)の歌のうまさは さすがである。
なお、この公演では、通常の流れと異なることが幾つかあった。
まず、
ロケットダンス(いわゆる脚上げのラインダンス)が無いに等しい。それらしきところはあるが、何十回も脚上げをするのが常なのに、ほんの2・3回だけ。
通常は、そのロケットを前方でやっている間に、大階段が幕の後ろで迫り出し、ロケットが引けて
幕が開くと「大階段」が見えて (初めて見る)観客を驚かせる、という演出なのだが、今回は、ロケットではない普通のダンスでストーリーが展開しているところに、観客の目に見える形で、大階段が迫り出してくる。
途中から大階段に仕込んだ電飾が徐々に光り始め、迫り出すに従って段々派手に光ってくるという演出である。
大階段を降りるのも、下級生からという約束事とは違い、準主役級から始まるという演出。下級生は横や下で踊っている。
随分、冒険をしたものだと思う。
10月30日まで兵庫県宝塚市・
宝塚大劇場で公演。
29日午後3時と30日11時にさよならショーあり。前売り完売!
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ひとつ前の宝塚レビュー
以下は、
宝塚公式ホームページより引用
[解 説]
[解 説]
20世紀初頭のパリ。デカダンスと背徳の香りに満ち、文化の爛熟期を迎えたその街は、光の都ヴィル・リュミエールと呼ばれていた。夢と欲望の交錯する街・・・。悦楽と刺激を求める人々は、東洋の妖姫マタ・ハリの官能的な舞に酔い、バレエ・リュスのニジンスキーの超人的な踊りとエキゾティシズムに熱狂していた。
そして今夜、仮装舞踏会で有名なミュザールの夜会では、呼び物のアトラクションであるダンススペクタキュラーが始まろうとしている。今回の作品のテーマは"地獄"。幕が上がると、人々の目は主役の"地獄のルシファー"を踊るダンサーの姿に釘付けになり、その悪魔的な魅力の虜になる。そのダンサーは、ロシアから来たばかりだと紹介されるが、素性には謎めいた部分が多く、彼は"自分は地獄からの旅人だ"と言って人々をからかう。そして、その場に居合わせた、いつもスキャンダラスな話題を振り撒いて世間を騒がせる新進気鋭の振付家、ジャン=ポールに、自分の館を訪ねて来るようにと言い残して去って行く。
翌日、約束通り、深い森の奥にある城館を訪ねたジャン=ポールは、その館のただならぬ雰囲気と、昨夜のダンサーの神秘的な佇まいに当惑を覚える。彼はジャン=ポールに、自分の為に"地獄の舞踏会"という作品を創ってほしいと依頼する。そして、自分は地獄から人間界に現われた堕天使ルシファーだと告げる。ジャン=ポールは、目の前に起っている出来事に半信半疑であるが、ルシファーと名乗るその男の踊る姿に次第に魅せられていく。彼の踊りを創りたいという芸術家としての野心を抑えることができないジャン=ポールは、ルシファーに誘われるままに、その仕事を引き受ける。
そして"地獄の舞踏会"のリハーサルが始まる。その作品に関わる様々な人々、踊り子、芸術家、パトロン、それぞれの人間の本能と欲望が、ルシファーの誘いによって赤裸々になっていく。他人を傷つけ、身勝手で、卑劣で、心弱い人間たち。
その人間の愚かさを冷笑し、人間を愛した神への呪いの言葉を放つルシファーであったが・・・。堕天使ルシファー、彼こそ、かつては"光の天使"と呼ばれ、天上界で最も美しく神に愛された存在だったのだ。愛が憎しみに変わった時、その思いはどこに行くのか?深い孤独をかかえ人間界を彷徨うルシファーが、最後に見つけるものは・・・。
この公演をもって朝海ひかる、舞風りらが退団する。