<河北新報 ONLINE NEWSより>
東電、汚染水対策の切り札「凍土遮水壁」着工 福島第1
凍土遮水壁の造成に向け、凍結管を埋める穴の掘削作業が始まった=2日、福島第1原発(東京電力提供)
東京電力は2日、福島第1原発の汚染水対策として、地中を凍らせて地下水が建屋に流入するのを防ぐ凍土遮水壁の工事を開始した。来年3月までに関連設備の設置工事を終えて周囲の土の凍結に着手し、対策の「切り札」と期待する遮水壁を造る作業に入る計画だ。
凍土壁は1~4号機の周囲1.5キロの地中に1550本の管を打ち込み、冷却剤を循環させて氷の壁を造る。工事初日は1号機の北西側で、管を埋めるための掘削工事を実施した。現場は毎時250マイクロシーベルトと放射線量が高い。
この日、福島県廃炉安全監視協議会が現地を視察。県や関係自治体の職員、専門家約20人が500メートル離れた共用プール西側で行われている実証実験を見て回った。10メートル四方の小規模な凍土壁が造成され、地下水の流入が止まっているのを確認した。
東電との質疑応答で協議会のメンバーは「凍土壁の造成で地下水の流れが変わり、周囲の建物に影響が出ないか」「建屋内の汚染水が外に流れ出る可能性はないか」などと指摘した。
県原子力安全対策課の渡辺仁課長は「凍土壁の実証実験と本工事では規模が全く違う。東電は技術面に欠点がないか再度、検証するべきだ」と要請した。
凍土壁は5月下旬、原子力規制庁が配管などの埋設物がない場所に限り、着工を了承した。来年3月以降に凍土壁を造成後、2020年ごろまで冷却を続ける。
この日は地下水バイパス計画による3回目の海洋放出も行われ、協議会のメンバーは地下水の排水口や、故障が相次いでいる多核種除去設備(ALPS)も視察した。