<5/21付け産経ニュースより>
西芳照さん(52) サッカー日本代表専属シェフ 3度目のW杯「経験を出し切る」
サッカーのワールドカップ(W杯)に備え、21日から鹿児島県指宿市で始まる日本代表の強化合宿。選手の胃袋を預かるシェフは、米フロリダ州で29日(現地時間)から行う事前合宿での合流に向け準備を進めている。「今まで経験したことをすべて出し切る」。選手同様、強い決意を持って3度目のW杯に乗り込む。
福島県南相馬市(旧小高町)出身。高校卒業後、上京して始めた飲食店でのアルバイトをきっかけに料理の道へと進んだ。平成9年、同県楢葉町、広野町にまたがるスポーツ施設「Jヴィレッジ」開業に合わせて地元に戻り、2年後に総料理長に就任。16年から日本協会の要請で代表の遠征に帯同するようになった。
23年3月11日、東日本大震災が発生。福島第1原発事故の影響で東京に避難し、所属会社の他部署に移ったが、故郷への思いは募る一方だった。
そんなとき脳裏をよぎったのは「人生、いいことばかりじゃない。そういうときに人としてどうするかが大事」。岡田武史前代表監督がW杯南アフリカ大会後、選手たちに語りかけた言葉だ。
「その言葉がなかったら、のほほんと東京で過ごすところだった」。福島の復興支援のため、独立して9月にJヴィレッジの食堂を再開し、原発作業員に温かい食事を提供。11月には地元の憩いの場となるレストランも近隣に開設した。
「震災はまだ終わっていない。W杯でいい成績を残せれば日本のみなさんが元気になる。そのお役に立てたら」。特別な思いで臨むサッカー王国でのW杯。目標は「優勝して(セレモニーで)選手と一緒にピッチに立つこと」だ。(奥村信哉)