ウォーホール左派

今日も作詩、明日もまた、本格詩人のブログ。

立原道造詩集より

2015-09-14 10:40:18 | Weblog
はじめてのものに

ささやかな地異は そのかたみに
灰を降らした この村に ひとしきり
灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
樹木の 梢に 家々の屋根に 降りしきった

その夜 月は明るかったが私は人と
窓に凭れて語りあった(その窓からは山の姿が見えた)
部屋の隅々に 渓谷のように 光と
よくひびく笑い声が溢れていた

ーー人の心を知ることは……人の心とは……
私は その人が蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
捕えようとするのだろうか 何かいぶかしかった

以下な日にみねに灰の煙が立ち初めたか
火の山の物語と…また幾夜さかは 果して夢に
その夜習ったエリザベートの物語を織った


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