ティーショットに入ろうとする直前に自治会ゴルフの会長が近づいてきた。
「幹事、やらん?」
「えっ?!」
突然の話だった。
「幹事の○○さんが辞めるとよ」
「はぁ・・・」
オレは圏外だと思ってきた。
「ほかにやる人がおらんとよ」
「はあ・・・」
適任者はいくらでもいるハズだ。
「○○さんは?」
「体調が悪いらしい」
そうかなぁ~
「まだ65歳の若輩者ですし・・・」
「オレは65歳から引き受けた!」
なんだよ・・・
「ちょっと考えさせてください」
「頼むわ!」
ただ今からティーショットに入りまぁ~す。
直後のティーショットはナイスショットだった。
チッ、心に動揺がなかったかのようだ。
しかし、その日のスコアーはガタガタだった。
じわじわと動揺が押し寄せてきたようだ。
後日、何人かが話しかけてきた。
「幹事、すると?」
「はぁ・・・」
まだ心は決まっていなかった。
「オレんとこにも話が来た」と話しかける人もいた。
「それで?」
「孫が生まれたからな~」
孫は関係~ねえだろう・・・
現幹事も話しかけてきた。
「引き受けたと?」
「いやまだ・・・」
会長! まだ引き受けていません!
その後も抵抗する。
「○○さんは? ルールに詳しいし・・・」
「カレは別んとこのコンペに忙しいらしい」
知らないうちに大役が回ってくる話は、ワタクシの人生にはつきものだ。
現役時代に何回もあった。
別に手も上げていないのに、いつの間にか、日なたに押し出されているのだ。
ワタクシが適任者だとはみんな、思ってもいないだろう。
メンドクサイ仕事だから、回してくるだけだ。
うやむやなうちに次のラウンド日が来た。
来年度のメンバー表が配られた。
そこに、「副幹事○○」とワタクシの名前が載っていた。
一年間、幹事の見習いをしろというのだ。
おい、待てよぉ~
2年前、「オレが3年幹事をするから、その後を○○さんが継いでくれ」と酔った勢いで話しかけて来たシングル氏。
「おめでとう! いやぁ~○○さんは人格者だからな~」
コラァ~もともとオマエが悪いんだぞ!
その日のラウンドもガタガタだった。
動揺しない方がおかしい。
そして、ふつうに副幹事のとしての今年度がスタートしている。
来年度はとうとう35名を仕切る幹事だ。
立候補していないのに回り回ってくる仕事の話。
ワタクシの人生になんと多いことか!
オレが! オレが! とまわりを押しのけて名乗り出たことは一度もない。
しかし、いつの間にか、みんなの先頭に押し出されている・・・
損だなぁ・・・