夫が昨日の夕方受けたというPCR検査は、夜の12時までにスマホに連絡が来なければ陰性ということで、とりあえず事なきを得た。
こんなことでピンピンしている人間から仕事を取り上げられて、積み上げた信用を落とされたらたまったもんじゃない。
検査料は撮影所持ちだけど当然安くない金額なので、受けたのは役者とレギュラーのスタッフに限られたそうである。
そう、PCR検査ってタダじゃないんだよね。この利権ってどこでどうなっているのやらである。
ところで夫婦といえ当然コロナの認識は違って、一言でいうと夫は私ほどギャースカは言ってなくて、もの静かに世間に従って合わせている。
コロナも最初の頃は人並み程度には警戒をもっていた。
が、彼らしく、私の言うことも面白がって聞くという感じである。
新婚時代、私が買ってきた風鈴を夫は喜ばなかった。
音に敏感な彼は、カチカチと秒針の鳴る時計や、冷蔵庫のモーター音や、(夫のいうところの)安い電化製品は「再生に余計な音が鳴る」といって嫌った。
ネジ撒きのボンボン時計がある家で育った私と暮らして、その結果「繊細さが退化した」とも言っているけど。
が、今でも私が夜中に暑いなあと扇風機をつけると
「こいつ、また扇風機のスイッチをカチッと入れやがった…」と必ず目を覚ますという。
ブオーーン!!
「まさかの『強』か?!いやさすがに一個弱めた。まあこの音ならいいか。冷蔵庫よりは不快感はない……」
私が、コロナ禍でマスクしろとか自粛しろって言われるのは、アナタでいう枕元に毎晩「カチカチいう時計を置いて眠れ」っていうものなんだよね。
そんなことずっとされたら発狂するでしょ?
私はここ数ヵ月、発狂しそうな中で生きている。
電車の中で皆がマスクしている中、私だけマスクしなくても、私はそんなことは気にならない。むしろ心に羽が生えたような気分になる。
気になるのは体裁じゃなくて「この混み具合で黙っていれば他人に影響するかしないか」という物理的な事情だけ。
そんなのは私の中では反骨心でも過激でも何でもなくて、当たり前のことでむしろやすらぎなんだよね。
と言ったら、夫は笑って頷いた。
感覚の矛先は違うけど、感覚は解ってくれるので助かる人である。