久し振りに、朝日に向かって船を走らせた。
「沖は、波が残っているかも」
そんな気持ちを持っていたが、大島の沖合に出てみると、波は無く釣り日和に感じる。
まずは、何カ所かのポイントを回ってベイト探し。
特別大きなベイトの固まりは、見つからない。
海底から、浮き上がったベイトが出てきたところで竿を出す。
当初の潮行きは、沖に払い出す下り潮だったが、ゆっくりと北に向かって流れる上り潮が入り始めた。
「良い感じに上りに変わってきたよ」
親戚の信司に、潮が変わってきたことを伝える。
「アタリが来ないですね」
こんな話をしていたとき、信司に強烈なアタリが来た。
竿が海面に突き刺さるぐらいに曲がっている。
重量感満載で、海底めがけて獲物が突っ込んでいる。
「止まらん、止まれ!」
船底にラインが入っていく。
ラインが船底に当たらないように気をつけて、体制を整える。
それでも走りを止めない獲物が、瀬の回りを走っているようだ。
急に走りが止まった。
「瀬に入ったみたいです」
万事休す、なかなか出てこないが、獲物の動きは感じている。
ラインを張っていたが、やがて瀬にアタリラインが切られた。
その重々しい走りは、呆気にとられるばかり。
そのポイントでは、それ以降アタリが出ない。
「場所を変えよう」
次のポイントにはいると、型の良いウッカリカサゴが来た。
食味の良い、アカヤガラも来た。
しかし、巧くいかない時は、こんな物かもしれない。
青物と思われる強烈なアタリが、信司と一緒に竿を出していた私にも来た。
ドラッグが鳴り、ラインがどんどん引き出される。
それでも、どうにか走りを止め「よっしゃ、今から!」と、気合いが入った時…
「バチッ!」音がしたように感じた。
ジグの結びの処が切れていた。
「14号じゃ細かったか…」
今度は、信司にアタリが来た。
これも、竿が強烈に曲がる強いアタリだ。
しかし、1~2度のやり取りの後、急に竿先から獲物の気配が消えた。
巻き上げてみると「針がない…」
スプリットリングから針が抜けた?
兎に角、針が無くなっている。
大物と思われるアタリを逃がしてばかり…。
「信司、今日は完敗やね」
「相手が強すぎましたね」
信司がジグから、鯛ラバに持ち替えていた仕掛けに、真ハタが来た。
「真ハタは良いね」
と、嬉しいのだが、逃げた獲物は大きかった。
「今日は帰ろう。又、こん次にリベンジしよう」
どこか、言葉に力が入らなかった。
帰港途中に沖からの青い潮と、潟よりの濁りの入った黄緑色の潮が、潮目になって綺麗に色分けしていた。
「この潮目はダメやろうか」
信司も私も同じ事を思っていたが、そのまま帰港した。