
静かに、朝日が顔を出してきた。
柏手を打ち、今日の好釣をお願いした。
「ベイトが、水深30メートルくらいの処で固まっているよ」
「上に集まっているのは、何かが居るのですかね」
脇坂さんが、大物狙いでトライしていく。
PE4号にリーダーが80ポンド、竿はシマノのインフィニティ5番、リールはオシアジガーの2000番
潮行きは0.8ノット前後と、釣りやすい流れになっている。
海底付近にもベイト柱が何本か立ち上がり、期待感が膨らんでいく。
5~6回の着底の後、一旦仕掛けを入れ直そうと回収しているときに、脇坂さんにアタリが来た。
コッンと小さい前アタリがあった。
「何か来た」
突然、竿先が海面に突っ込む勢いで曲がった。
「おおっ、何だ。こら、何のアタリ!」
海面近くのベイトが固まっている水深30メートルアタリで、強烈なアタリが来た。
もの凄い勢いで、ドラッグからラインが出ていく。
「テンションは8キロに調整してあるけど、止まらない」

このシーンを漫画に書いたら、リールから煙が出るくらいの勢いだ。
「船長、ラインが船の下に行く!」
「待ってて、船を回す!」
私としては、焦らずラインとスクリューが触れないように気をつけて体制を整える。
針掛かりした獲物は、既に200メートルくらいは走っているはずだ。
「ラインが前に出た。そのまま、追い掛けてください!」
「よっしゃ!いくど!」
獲物は可成りの重量感で、海底付近を南東方向に走っている。

「脇坂君、前に行け。ゆっくりと差を詰めていくど」
脇坂さんが、獲物を引き上げるように縦に竿を引いてラインを回収していく。

「どれくらい巻き上げられた」
「50メートルくらいは巻き上げました」
「よっしゃ!もう少しがんばれ!」
又しても、獲物が走った。
ジジジーと、ラインが出ていく。
「手元に伝わる獲物の生命感が凄い」
脇坂さんも慌てず、じっくりと対峙している。
少しずつだが、大物が上がってきている。
5メートルくらい巻き上げたら、その倍近く引き出される。
獲物の走りが止まったら、少しでもラインを回収する。
船を走らせている距離も、魚探に残る航跡はヒットポイントから可成り沖に出てきている。
ラインを回収するスピードが少し上がってきた。
「獲物が浮き始めた!」
処が、此処で又しても獲物反撃反転した様だ。
竿先が跳ねた。
「あっー、切られた…」
二人で、一瞬天を仰いだ。
80ポンドのリーダーのジグの結び目アタリがざらざらになって切られている。
時計を見ると、大体11分間くらいの格闘時間だった。