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ドキュメンタリー映画「ダムネーション」

2015年02月20日 | 地域
2015.1.31朝日新聞 ザ・コラム欄に「ダムと過疎地 先人が教える夢と現実」上田俊英編集委員が掲載された。「ダムネーション」アメリカのドキュメンタリー映画を観てのコラムだ。それは次のような書き出しで始まる。

『「ダムネーション」という米国のドキュメンタリー映画を見た。米国でダムの「撤去」を求め、実現させてきた人びと。その姿を通して、川とはなにか、ダムと引き換えにわれわれが失ってきたものはなにかを伝える。昨年11月に東京で公開され、横浜、大阪、名古屋などを巡回している。

ダムは近代化を象徴する建築構造物だ。灌漑(かんがい)、治水、水力発電――。米国では1929年に始まる世界恐慌が建設を加速させたとされる。テネシー峡谷開発公社(TVA)が設立され、雇用創出と経済再建の旗印のもと、多くのダムがつくられた。米国のダムはいま7万5千基を超えるという。

ダムができて、川が自然の流れを失えば、川を中心とする生態系は激変する。
映画は、ダムをすべて壊せと言っているわけではない。
 「ダムにもやはり寿命はある」
 「ひとつひとつ精査すべきだ」
そして、役に立たないダムは「壊す」という選択肢があることを教える。
 「ただの水たまりだ」
ダムを前に、こんなせりふが投げかけられる。「水たまり」それは、わたしがすむ福島県で も見ることができる』。


さらに終戦直後、「日本再建」をかけた国策の舞台になった奥会津の10基のダム開発、昭和60年代に9基完成。現在巨大な水たまりと化し、かえって水害が増えたと言う地元の声を紹介している。水力発電所は無人化が進み遠隔制御されている。「ダムもまた過疎化をすすめる」、79年に只見町の議会特別委員会の報告「デメリット」を次のように紹介している。

「過疎の原因となる」
「農林水産業の振興に影響を与える」
「購買力が減少する」
「自然環境が破壊される」

政権との癒着が指摘されるマスコミの中、このコラムの健全な良識を歓迎したい。映画「ダムネーション」を知り、是非観たいものだと思っていた。2月に入って「成瀬ダムをストップをさせる会」で、上映会企画のニュースが入った。

DAMNASTIONチラシ

先日「成瀬ダムをストップをさせる会」は、上映会を成功させるために試写会を開いた。「DAMNASTION」のSTORY に次の言葉があった。

「自然の良さは人間が何もしなくてもいいこと。ただそのままにしておけばいい」。

地球の血管にも例えられる川。ダムが及ぼす影響は、私たち生き物すべてに及ぶ。ダムが撤去された時、川は解放されみずから元の姿に回復していく。本作品が映し出す川の生命力と美しさは、人間も自然の一部なのだということを改めて気づかせてくれる。そして、技術により自然を征服してきた過去と決別し、新しい未来をつくりだす希望の光を見せてくれる。製作責任者はパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード。共同プロデューサーは生態学者で水中写真家のマット・シュテッカー。

映画はダム推進派、反対派の意見を取り上げ、効率の悪くなったダムの撤去を呼びかけている。ダム開発によるアメリカ先住民の苦悩が描かれ、ダム開発で期待された効果が必ずしも達成されない現実を訴えている。

日本には2700基のダムがあると云われている。この映画を観るとダム開発、ダムの効果等に疑念が湧いてくる。ダムネーション企画プロデューサーのマット・シュティッカー氏は語る。

「米国にダムがクリーンエネルギーを供給しているとする「神話」があります。ダムからは二酸化炭素の35倍の温室効果のあるメタンガスが排出され温暖化が促進している、研究によると世界中のメタンガスの排出は世界中のダムや化石燃料が原因かもしれないません。だからダムはクリーンエネルギーを供給しているとはいえません。それにダムは川の生態系を破壊します。ダムはクリーンであるという論理は成立しません」と語る。

日本では熊本県球磨川水系の荒瀬ダムが2012年から撤去が始まっている。河川周辺の生態系の再生や魚介類の増加が報告されている。

映画「ダムネーション」は、「ダムは過去の遺物か未来への資産か」と呼びかける。各地で反響の大きい映画が、秋田県南で上映される。「成瀬ダムをストップをさせる会」では「DAMNATION」の上映会を開催する。開発の名で自然環境へ人間が手を加えることで、取り返しのつかない結果を生み出すことがある。沖縄では地域との合意なしに、国家権力で辺野古基地建設を強行している。各地にも似たような事例は多い。かつて只見町の議会特別委員会の報告、「デメリット」は充分考慮されなければならない。地域に住む者には地域環境を変える開発に重大な責任が伴うのだ。多くの人に関心を持ってもらいたい。

この映画「ダムネーション」は「建設あり」の開発に大きな警鐘をならしている。

 「ダムネーション」上映会 アメリカのドキュメンタリー映画

 期日 3月8日(日)13.00開場 13.30上映(87分)
 場所 横手市 サンサン横手 
 料金 当日券700円 高校生以下無料

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